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治癒の神獣
237:勲章の意味
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周囲のざわつきに、やっぱり面倒な事になるのか? と、半ば予想通りの結果に内心でため息を吐く。
だが予想通りとはいえ、俺は何故こんな反応をされるのかわからない。何か知らないかとイリンの事を見たのだが、イリンも何も分からないようで戸惑っている。
「おめでとうございます」
そんな中一番最初に声をかけてきたのは、シアリスだった。
「おめでとうって、コレ何か知ってるのか?」
コレというのは今の会場の状態だ。周りが騒ぎ出したことの理由をシアリスは何か知っているのではないだろうか。
「……ああ。アンドーさんはソレの意味をご存知ないのですね」
シアリスは少しだけ訝しげにした後、納得したように肯いた。
「この勲章の意味?」
「はい。ソレの由来は置いておくとして、意味は『王が後ろ盾になる』ということです」
後ろ盾、ねぇ……実質的には今までも似たような状態だったと思うんだけど、それを分かりやすく知らしめることが出来るってことか?
「どのような状況であってもその勲章を渡された者は、ソレを渡した王が絶対に味方をし、罪を犯したとしてもその者はこの国では罪に問えなくなる。と、そういうものです」
「……は?」
今、シアリスはなんて言った? 王が絶対に味方をするだと? しかも罪を犯しても罪に問えない? あり得ないだろそれは……
「以前その勲章が渡されたのは今から……大体百年前の王の時だったはずです。ソレは絶対に裏切らない。という王からの信頼の証です。もちろんそれに見合うだけの武勇も必要ですが、たとえ世界最強の力を持っていたとしても武勇だけでその勲章を渡されることはありません」
信頼の証? 確かに裏切るつもりはないが、それはあくまでも『今は』だ。今後はどうなるか分からない。
そもそも仲間ってわけじゃないんだから裏切るもなにもないが、俺があいつの絶対の味方というわけではないのは確かだ。
だというのにそんな者に渡す? 何を考えてるんだあいつは……
「それでは、これより迎春の宴、及び戦士達の慰労会を始めます。本日は存分に楽しんでください」
何故こんなものを渡したのか。そんな意志を込めてグラティースに視線を向けたのだが、あいつは俺の相手をすることなく、未だにざわついている客達を気にすることもなく式を進めていった。
「……なんだってこんなものを……」
「いいじゃない。もらえる物はもらっときなさいよ。便利そうだし」
ケイノアはそう言ったが、流石にそうはいかない。
「こんなものをもらったら、嫌でも面倒事が集まるに決まってる。そうしたら今まで通りにってわけにはいかない。かと言って捨てるわけにもいかない……」
「そう? ……ふーん。あんたならそんなこと気にしないで、面倒ごとなんて適当に流すと思ったんだけど」
……確かに。言われてみれば、以前の俺だったら周りとの柵とか気にしなかっただろうな。気にしないで、嫌気がしたらイリンと一緒にこの街を出ていっただろう
でも今はしっかりと受け止めて周りとの関係を気にしている。
だが、その理由は自分でも分かってるつもりだ。
イリンの件が解決が見えたからってのもあるだろうが、俺は意外と『この場所』が気に入ってるんだろうな。
だからこそ、無意識の内に今の生活を守ろうとした……んだと思う。
……ふう。それにしても、随分と腰の低い挨拶だったな。王なんだから、もっと威厳を持って偉っそうに宣言すればいいのに。
……いや、この国の状況的にそれは出来ないのか?
もしどこかの種族を優遇したりすれば、それを良しと思わない種族が騒ぐだろう。そうなれば、この国は元々いろんな種族が適当に集まっただけなんだから、当然割れる。
グラティース。あいつが偉ぶれば、それだけであいつの種族は増長し他の種族は反感を持つ、ということだってあり得る。
それを防ぐためにあいつはあんな態度を取ってるんだろうな。本人も以前に自分は調整役だ、なんて言ってたし。
まあ何にしても、大変なんだなあいつ。だからといってこの国に所属して手伝う気は無いけど。
精々が、俺の暇な時に手の届く範囲で何かが起こったら対処してやるくらいだ。それくらいなら、まあ、やってやらなくもない。
「で、これからどうするんだ?」
表彰っていう俺が参加した目的は終わったけど、後はどうすればいいんだ?
「そうねぇ、適当にご飯食べてればいいんじゃないの?」
それはお前の希望なんじゃないのか?
そう思ってシアリスの方を向いたのだが、彼女からも同じように返ってきた。
「そうですね。それなりに身分があれば挨拶回りなどがありますが、アンドーさんの場合はお好きにされて構わないと思います」
お好きにって言われても、俺は貴族じゃないし冒険者としてもまともに活動したことが無いから、特にこれといった知り合いがいるわけでもない。正直言ってやることが無い。
「とりあえずお食事をしてはいかがです? その間に何か思い浮かぶかもしれませんし」
……そうだな、そうするか。
「そうよね。早くご飯を食べにいかないと……」
「お姉様? その前にまずは挨拶回りがあります。お食事はその後ですよ」
「ええ~。目の前にあんなに料理があるのに~……」
「ダメですよ。お父様とお母様からも言われているのですから」
「うぅ……もうシアリスだけでいいんじゃないかしら?」
「……ここにくる前の発言はどこにいったのですか……ほら、行きましょう」
シアリスがケイノアを伴ってこの場から去ろうとしていたが、最後に何かを思い出したように俺の方に顔を向けてきた。
「ああ、アンドーさん。余計な忠告かもしれませんが、気をつけてください。あの勲章をもらった以上は取り入ろうとする者が出てくるでしょうから」
「いや、ありがとう。精々気をつけるよ」
俺の言葉を聞いたシアリスは、今度こそ不満顔のケイノアを連れて去っていった。
どうしよう。パーティーだし踊りとかしたほうがいいんだろうけど、俺、王国にいた時に覚えさせられたダンス一曲分しか知らないぞ……
「ご主人様、何か取って参りましょうか?」
「ん? そうだなぁ……」
「ではいって参ります!」
俺としては今の、そうだなぁというのは、どうしようかと迷ってた言葉なんだが、イリンは肯定として受け取ったようで料理を取りに行ってしまった。
スッと歩いて行ってしまったその後ろ姿を、俺は自然と目で追ってしまっていた。
「よお。久しぶりだな」
ボケッとイリンの後ろ姿を目で追っていた俺だが、そんな俺に声をかけてきた奴がいた。
「うん? ……ああ、あんた確かアンデット退治の時の……」
「おう。スキットだ。久しぶりだな」
話しかけてきたのは、ケイノアたちを助けに行った時に知り合った冒険者の男だった。
だが予想通りとはいえ、俺は何故こんな反応をされるのかわからない。何か知らないかとイリンの事を見たのだが、イリンも何も分からないようで戸惑っている。
「おめでとうございます」
そんな中一番最初に声をかけてきたのは、シアリスだった。
「おめでとうって、コレ何か知ってるのか?」
コレというのは今の会場の状態だ。周りが騒ぎ出したことの理由をシアリスは何か知っているのではないだろうか。
「……ああ。アンドーさんはソレの意味をご存知ないのですね」
シアリスは少しだけ訝しげにした後、納得したように肯いた。
「この勲章の意味?」
「はい。ソレの由来は置いておくとして、意味は『王が後ろ盾になる』ということです」
後ろ盾、ねぇ……実質的には今までも似たような状態だったと思うんだけど、それを分かりやすく知らしめることが出来るってことか?
「どのような状況であってもその勲章を渡された者は、ソレを渡した王が絶対に味方をし、罪を犯したとしてもその者はこの国では罪に問えなくなる。と、そういうものです」
「……は?」
今、シアリスはなんて言った? 王が絶対に味方をするだと? しかも罪を犯しても罪に問えない? あり得ないだろそれは……
「以前その勲章が渡されたのは今から……大体百年前の王の時だったはずです。ソレは絶対に裏切らない。という王からの信頼の証です。もちろんそれに見合うだけの武勇も必要ですが、たとえ世界最強の力を持っていたとしても武勇だけでその勲章を渡されることはありません」
信頼の証? 確かに裏切るつもりはないが、それはあくまでも『今は』だ。今後はどうなるか分からない。
そもそも仲間ってわけじゃないんだから裏切るもなにもないが、俺があいつの絶対の味方というわけではないのは確かだ。
だというのにそんな者に渡す? 何を考えてるんだあいつは……
「それでは、これより迎春の宴、及び戦士達の慰労会を始めます。本日は存分に楽しんでください」
何故こんなものを渡したのか。そんな意志を込めてグラティースに視線を向けたのだが、あいつは俺の相手をすることなく、未だにざわついている客達を気にすることもなく式を進めていった。
「……なんだってこんなものを……」
「いいじゃない。もらえる物はもらっときなさいよ。便利そうだし」
ケイノアはそう言ったが、流石にそうはいかない。
「こんなものをもらったら、嫌でも面倒事が集まるに決まってる。そうしたら今まで通りにってわけにはいかない。かと言って捨てるわけにもいかない……」
「そう? ……ふーん。あんたならそんなこと気にしないで、面倒ごとなんて適当に流すと思ったんだけど」
……確かに。言われてみれば、以前の俺だったら周りとの柵とか気にしなかっただろうな。気にしないで、嫌気がしたらイリンと一緒にこの街を出ていっただろう
でも今はしっかりと受け止めて周りとの関係を気にしている。
だが、その理由は自分でも分かってるつもりだ。
イリンの件が解決が見えたからってのもあるだろうが、俺は意外と『この場所』が気に入ってるんだろうな。
だからこそ、無意識の内に今の生活を守ろうとした……んだと思う。
……ふう。それにしても、随分と腰の低い挨拶だったな。王なんだから、もっと威厳を持って偉っそうに宣言すればいいのに。
……いや、この国の状況的にそれは出来ないのか?
もしどこかの種族を優遇したりすれば、それを良しと思わない種族が騒ぐだろう。そうなれば、この国は元々いろんな種族が適当に集まっただけなんだから、当然割れる。
グラティース。あいつが偉ぶれば、それだけであいつの種族は増長し他の種族は反感を持つ、ということだってあり得る。
それを防ぐためにあいつはあんな態度を取ってるんだろうな。本人も以前に自分は調整役だ、なんて言ってたし。
まあ何にしても、大変なんだなあいつ。だからといってこの国に所属して手伝う気は無いけど。
精々が、俺の暇な時に手の届く範囲で何かが起こったら対処してやるくらいだ。それくらいなら、まあ、やってやらなくもない。
「で、これからどうするんだ?」
表彰っていう俺が参加した目的は終わったけど、後はどうすればいいんだ?
「そうねぇ、適当にご飯食べてればいいんじゃないの?」
それはお前の希望なんじゃないのか?
そう思ってシアリスの方を向いたのだが、彼女からも同じように返ってきた。
「そうですね。それなりに身分があれば挨拶回りなどがありますが、アンドーさんの場合はお好きにされて構わないと思います」
お好きにって言われても、俺は貴族じゃないし冒険者としてもまともに活動したことが無いから、特にこれといった知り合いがいるわけでもない。正直言ってやることが無い。
「とりあえずお食事をしてはいかがです? その間に何か思い浮かぶかもしれませんし」
……そうだな、そうするか。
「そうよね。早くご飯を食べにいかないと……」
「お姉様? その前にまずは挨拶回りがあります。お食事はその後ですよ」
「ええ~。目の前にあんなに料理があるのに~……」
「ダメですよ。お父様とお母様からも言われているのですから」
「うぅ……もうシアリスだけでいいんじゃないかしら?」
「……ここにくる前の発言はどこにいったのですか……ほら、行きましょう」
シアリスがケイノアを伴ってこの場から去ろうとしていたが、最後に何かを思い出したように俺の方に顔を向けてきた。
「ああ、アンドーさん。余計な忠告かもしれませんが、気をつけてください。あの勲章をもらった以上は取り入ろうとする者が出てくるでしょうから」
「いや、ありがとう。精々気をつけるよ」
俺の言葉を聞いたシアリスは、今度こそ不満顔のケイノアを連れて去っていった。
どうしよう。パーティーだし踊りとかしたほうがいいんだろうけど、俺、王国にいた時に覚えさせられたダンス一曲分しか知らないぞ……
「ご主人様、何か取って参りましょうか?」
「ん? そうだなぁ……」
「ではいって参ります!」
俺としては今の、そうだなぁというのは、どうしようかと迷ってた言葉なんだが、イリンは肯定として受け取ったようで料理を取りに行ってしまった。
スッと歩いて行ってしまったその後ろ姿を、俺は自然と目で追ってしまっていた。
「よお。久しぶりだな」
ボケッとイリンの後ろ姿を目で追っていた俺だが、そんな俺に声をかけてきた奴がいた。
「うん? ……ああ、あんた確かアンデット退治の時の……」
「おう。スキットだ。久しぶりだな」
話しかけてきたのは、ケイノアたちを助けに行った時に知り合った冒険者の男だった。
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へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
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