『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

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王国との戦争

269:国宝と神獣の血

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「それで、どこに出せばいい?」
「はい? ああ、薬ですか。そうですね、こちらにきてください」

 どちらかといえば薬よりも魔術具の方が防衛のために重要なんじゃないかと思うが、まあどっちでも変わらないか。

 チオーナは周りにいた人たちに少し言うと屋敷の中に入っていき、最初にあった時のように部屋の隅にある一画に向かった。

 俺もその後を追うが、最初と違って部屋の中には最低限の者しかいないように感じる。

「こちらにお願いします」

 そう言われた俺はチオーナに示された机の上に薬と魔術具を取り出していく。

「……へ?」

 だが、収納から机の上に取り出していくと、その途中でチオーナから普段の彼女であれば聴くことができないであろう間の抜けた声が聞こえた。

 まず取り出したのは、街で適当に買い漁っていた回復薬の詰められた箱。それを三つほど。一箱に三十個入りが3箱だから、計九十本の回復薬だ。

 この程度では全員分には届かないだろうが、それでも全部渡すわけにはいかない。これから国境に行った時に必要になるかもしれないんだし。

 この時点では彼女の反応も普通だった。予想していたよりも多かったのか少し驚いてはいたものの、笑顔で頷くように首を縦に振っていた。

 異常があったのはこの後だ。

 薬を出し終わった後は防衛に使えそうな魔術具を取り出して行ったのだが、その数十を超えたあたりで先程の声がきこえ、が二十を超えたあたりでチオーナから制止の声がかかった。

「ちょ、ちょっと待ってください!」
「どうした?」

 収納から魔術具を取り出す手を止めてチオーナを見ると、彼女は困惑した表情をしていた。

 それから視線を俺の顔とテーブルの上とを行き来させてから、恐る恐るという感じで口を開いた。

「……今貴方が取り出した魔術具はどれもが一級品。私の勘違いでなければ、その中のいくつかは国宝と呼んでも良いほどの力を感じるものがあるように思うのですが?」

 それは当然だ。だって俺がここに出した魔術具って実際に国宝って呼ばれてるものだし。いや、今は国宝と呼ばれていたもの、か?

 まあ有り体に言ってしまえば、王国から逃げる時に城からパクってきたものだ。いろんなところで活躍してくれて本当に助かってるよ。流石国宝。

「……これほどの魔術具を、全て私達に渡して良いのですか?」
「ああ。一応イリンの部屋には他に色々仕掛けてあるけど、この場所……この館だけは絶対に守ってもらわないとだからな」

 どれだけすごい道具であったとしても、使わなければ意味がない。
 そして、使ったとしても効果がなければ意味がない。

 これらの道具を一番有効的に使えるのは今だと思ったから使うだけだ。

「これらを使ってこの地を守ったとしても、最後に貴方に返すとは限りませんよ? そのまま我がものとするかもしれません」
「いや、俺に不満がある奴はどうだかわからないけど、チオーナ。少なくともあんたはそんな事をしないよ」

 俺の用意した道具だとわかると、チオーナの言った通り盗むかもしれないし壊すかもしれない。もしかしたらそれらを使って俺を襲うかもしれない

 でも……

「それに、もしそうだったとしてもそれでこの場所が守られるんだったら、この程度、なくなっても構わない」

 どうせ脱走時についでに回収したものだ。回収時にいろいろ苦労はしたが、どうしても必要ってわけじゃない。自分で使う奴は確保してあるし、今出した奴は……言ってしまえばいらないものだ。

 まあそれでも使い道はあるんだけど、使わなくても如何にでもなる。

「これらで貴方のことを襲う者がいた場合はどうされるんですか?」
「その場合は……まあ、そいつをボコして魔術具を回収。それで終わりだな」

 どれだけすごい道具も、俺に効かない。不意打ちされれば効果はあるけど、それは俺が気をつけていればいいだけだ。

 後はイリンへの攻撃が心配だが、そちらは平気だろう。その対策のためにこうしてチオーナに頼んでいるわけだし。

「……わかりました。ではありがたく使わせていただきます」
「ああ。それで道具の説明だが──」

 渡した道具の一通りの使い方を書いた紙を見せながら軽く説明していくが、これにはチオーナだけではなく護衛たちも真剣に聞いている。まあ自分たちが使うことになるのかもしれない道具だしな。

「──こんなところだ。一応後で実践前に一度は使って確認しておいてくれ」
「ええ。分かっています。これだけ助けていただいたのですもの。こちらは任せてくださって構いません」
「それじゃあ……」
「お待ちを。これだけ助けていただいて何も返さないというのも不義理でしょう。少し待っていてください」

チオーナはそう言って奥の部屋に入っていくと、しばらくのちに一つの瓶を持って戻ってきた。

「こちらをどうぞ」
「これは?」
「神獣様の血です。国王からの手紙にはもう一つ用件が書かれていたはずです」

 確かに。できる事ならば、と書いてあったし、勇者の件を優先してほしいとも書いてあったけど、それとは別にもう一つ書かれていることがあった。

 それは、娘の毒を解除するために神獣の血を送って欲しいと言うものだった。
 なんでこんな時にとも思ったけど、無意味な事はしないはずだからそれなりの理由があるんだろう。

 けど神獣であるスーラは現在寝てしまっている。あと二日は起きないから回収は無理だと思ってたんだが……

「いいのか?」
「はい。これの使用権限は神獣様より私に一任されていますから」
「ならありがたくもらうけど……どうするか……」

 送れって言われても俺自身が戻るわけにはいかないし、この里の奴らには頼めない。
 さてどうしようかと悩んでいると、チオーナが提案を口にした。

「ここまで伝令に来た方にお渡しすればよろしいのではありませんか? 昨日はここに泊まって今日戻るようですし」
「ああ、そうか。そうだな、ならそうしておくのがいいか」
「ではこちらから渡しておきましょう。貴方は急ぎたいでしょうから」

 チオーナは少しばかり沈んだ声でそう言った。

 本当なら戦争なんて参加して欲しくないのだろう。そもそも、戦争自体怒って欲しくはないんだと思うが、怒ってしまったものは仕方がない。

 それに俺は、行かないでいる事はできそうもない。

「ん、じゃあ──後は頼んだ」

 少し慌ただしくなったが行こう。イリンが起きる前に終わらせないと。

 まあ、そうは言ってもイリンが目覚めるまでしばらく時間があるみたいだから、そっちはそれほど心配する必要か。

 目が覚めるのが長引いてるってことだから、それがいいことなのか悪いことなのかはわからないけど。

 そうして俺は国境へ向かうためにチオーナの屋敷を出て歩き出した。
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