『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

文字の大きさ
216 / 499
王国との戦争

268:防衛準備の手伝い

しおりを挟む
「神子様! 国王より文が届きました!」

 俺が戦争参加について話した翌日。
 イリンの部屋でこの場所を離れるための準備をしていた俺の耳に、部屋の外からそんな声が届いた。

 この状況でグラティースから手紙か……考えられるものとしては、ここの状況確認と、無事なら協力要請か?

 後は里じゃなくて俺に対しての協力要請? あいつは俺が勇者だってことを知ってるし。

 ちょっと行ってみるか。何かしらの情報はもらえるだろう。

「チオーナ」
「ああ、アンドーさん。どうぞ」

 手紙を読んでいたチオーナのそばに行くと護衛が動き、それによって俺の存在に気がついたチオーナは顔を上げて俺の事を見て、その手に持っていた手紙を俺に向けて差し出してきた。

「いいのか? 俺が見ても」
「ええ。貴方も手紙を見にきたのでしょう? それにこれは貴方宛でもありますから」
「なら……」

 手紙を受け取って確認すると、そこに書かれていた内容は予想した通り、現状のこの国の報告とこの場所の状況確認。それから、俺に戦争に参加して欲しいというものだった。

 元々国境の敵は潰しに行くつもりだったから問題ないのだが、それは神獣が起きてもう一度イリンの状況を確認してからにするつもりだった。

 だが、手紙にはこの手紙を読んだ後にでも行って欲しいと書かれている。

「……どうされますか?」

 何故それほど急ぐのか。

 どうやら国境に援軍を派遣しはしたが、王国側に『強力な敵』が三名ほど存在しているらしく、苦戦しているようだ。

 そして、その三名の相手をしてほしいとのこと。

 黒髪黒目の強力な敵。

 俺の中にはそれに思い至る人物がいる。それも丁度三人。

 その強力な敵というのはまず間違いなく『勇者』だろう。

 俺もなるはずだった存在であり、俺が見捨てた子達の今。

「行くよ」

 あの時は助けられなかった。城に置いて行くしかなかった。

 だって俺は弱かったから。仕方なかったんだ。
 能力も完全に使いこなせているとは言い切れず、自信も覚悟もないから失敗を恐れて一人で逃げる道を選んだ。

 ……けど、その時のことは今でも俺の心の中で棘になって残っている。

 イリンのことが終わったら折を見て会いに行こうとは思っていた。そして彼らが望むのなら脱走の手助けをしようとも。

 けど、丁度いい。

 イリンの治癒も先延ばしになってしまったことだし、起きるまでまだ時間がある。

 だから、この機会に俺の中でになってるものをまとめて解決してしまおう。



 グラティースからの手紙を読んですぐに出発の準備を再開した俺は、イリンの寝ている部屋をいくつもの魔術具でガチガチに固めた。もはやあそこは要塞と言っても過言ではない。

 あれだけやれば大抵のことはどうにかなるだろう。

「チオーナ。ちょっといいか?」

 そして準備を終えると、部屋を出てチオーナを探したのだが、幸いなことに屋敷を出てすぐに見つかった。どうやら防衛の準備の指揮をしているようだ。

「はい? どうされましたか?」

 チオーナに話しかけると、邪魔をするなと言わんばかりに周囲の奴らが睨んできたが、そんなことは気にしない。そっちも大変なんだろうけど、こっちだって重要な話があるんだ。

「これから出かけるにあたって、渡しておきたいものがあってな」
「渡しておきたいもの、ですか……」
「ああ。イリンのことを見ててもらうのに何にもしないってわけにはいかないだろ? だからいくつか魔術具や回復薬を渡しておこうと思ってな」

 俺の言葉にパチパチと目を瞬かせた後、チオーナはいつものように人のいい笑顔を浮かべて笑った。

「そうでしたか。それは助かります。こちらでも回復薬はいくつかストックがありますが、それでも本当に少ししかありませんから。戦いが起こるというのなら十分だとは言い切れませんので、あればあるだけありがたいです」
「……自分で言っておいて何だが、回復薬なんてなくても問題ないんじゃないのか? 怪我なんてすぐに治るだろ」

 コーキスみたいな回復能力持ちなら回復薬なんていらないだろうし、あと数日もすれば神獣が起きる。
 そうなったら神獣に回復して貰えばいいし、回復薬程度、なくても問題ないと思ってた。
 だが、チオーナの言葉のニュアンスはなんとなくだけど、心底喜んでいるように感じる。

「この里の者は全員が神獣様のお力である回復能力を持っていますが、その力には偏りがあります。腕が取れてもすぐに治る者もいれば、ちょっとした怪我を治すのが精一杯の者もいます。まあその者はその分他の能力に長けているのですが、治癒の力は弱いので回復薬は必要なのです」

 そういえばコーキスの知り合いに姿を隠したり毒を作ったりする奴がいたな。それらの能力を全部持ってる、なんてことは流石にないか。

 もし全部できたとしたら、姿を消せて、自由に毒を作れて、首を貫かれても死なない。そんなヤバいやつが出来上がる。

 そんな集団が全力で暗殺とかやったらどうしようもないし、まあそうじゃなくてよかったか。

「そうだったのか……。まあ、そういう事なら魔術具は最後に回収させてもらうけど、薬は好きに使ってくれて構わない」

 今更だけど、部位の欠損がすぐに治るのは異世界であっても異常だ。

 ならここの奴ら──コーキスみたいに重症であってもすぐに治る奴ってどうなってんだろうな? 首を貫かれても心臓を貫かれても生きていて、手足がなくなっても再生する。明かに異常だ。

 ……今度スーラに会った時に聞いてみるか。
しおりを挟む
感想 317

あなたにおすすめの小説

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!

石のやっさん
ファンタジー
皆さまの応援のお陰でなんと【書籍化】しました。 応援本当に有難うございました。 イラストはサクミチ様で、アイシャにアリス他美少女キャラクターが絵になりましたのでそれを見るだけでも面白いかも知れません。 書籍化に伴い、旧タイトル「パーティーを追放された挙句、幼馴染も全部取られたけど「ざまぁ」なんてしない!だって俺の方が幸せ確定だからな!」 から新タイトル「勇者に全部取られたけど幸せ確定の俺は「ざまぁ」なんてしない!」にタイトルが変更になりました。 書籍化に伴いまして設定や内容が一部変わっています。 WEB版と異なった世界が楽しめるかも知れません。 この作品を愛して下さった方、長きにわたり、私を応援をし続けて下さった方...本当に感謝です。 本当にありがとうございました。 【以下あらすじ】 パーティーでお荷物扱いされていた魔法戦士のケインは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことを悟った彼は、一人さった... ここから、彼は何をするのか? 何もしないで普通に生活するだけだ「ざまぁ」なんて必要ない、ただ生活するだけで幸せなんだ...俺にとって勇者パーティーも幼馴染も離れるだけで幸せになれるんだから... 第13回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作品。 何と!『現在3巻まで書籍化されています』 そして書籍も堂々完結...ケインとは何者か此処で正体が解ります。 応援、本当にありがとうございました!

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。