『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

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友人達の村で

405─ガムラ:戦闘開始

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 俺は村を襲ってる賊のアジトである洞窟から少し離れた位置に身を隠していた。

 ……まだなのか?

 もうそろそろ時間だと思うんだが、正確なところは分からない。仕掛けてもいいんだろうか?

 ……仕掛けるか。大体の時間はあってるはずだし、多少ずれていたとしてもあいつらならなんとかするだろ。

 それに……

「これ以上敵を前に、我慢なんてできねえよ」

 収納具であるポーチからナイフを二つ取り出して、投げる。

「ぐっ……」
「が……」

 それだけで見張りの奴らは呆気なく死んだ。

 なんの問題もなく倒せたことでホッと一息つくが、それは間違いだった。

「ん? なんだ今の音は?」
「さあな。おい、交代に来たぞ。なんかあったのか?」

 どうやら見張りの交代の時間だったらしく、近づいて来ていた賊が見たりの倒れた音に気がついて呼びかけるが、返事がないことで警戒し出した。

 チッ、気がつかなきゃ楽だったんだがな。

 まあいい。どうせ一人だって逃す気はねえんだ。いっちょやらせてもらうとすっか。

「おい、交代だ──なっ!」
「くそっ、敵襲だ!」

 警戒していたためか、交代にきた賊は見張りの死体を見た瞬間に声を張り上げた。

「チッ……」

 そうなると分かっていても、つい舌打ちをしちまった。
 だが援護が来るまでには時間があるはずだ。その前にこいつらを片付けちまえば、後は洞窟の外に出てきた奴を順番に倒すだけだ。

「うおらあああ!」
「なっ──」
「ぐおっ!」

 さぁて、とりあえず交代に来た二人は倒したが……

「ま、そうなるよな」

 先の声が聞こえていないことを願ったが、まあ現実はそう上手くいくわけもなく、賊の増援が洞窟の奥から姿を見せた。

「てめえが侵入者か!」
「ぶっ殺してやる!」

 洞窟の奥からやってきたのは十人ほど。二人を倒すことはできたが、こいつらをまとめてとなると……ちいっとばかし辛えもんがある。

「あ? てめえ、あの村守ってやがる番犬じゃねえか」

 俺にはどいつがどいつだかわかんねえが、賊の中の一人が俺の姿を見たことがあったようでそんな声をあげた。

「はっ、こんなとこになんの用かってのは、聞くまでもねえか?」

 賊のうちの一人がニヤニヤとむかつく笑みを浮かべながらそう言ってきた。

「これ以上村に被害が出る前に、お前らを殺しに来た」

 そして、もう二度と村には手を出させねえ。

「おーおー、ご苦労なこった」
「だがよお、村を守るってんなら、こんなところにいてもいいのか?」

 その言葉で、そう行ってきた賊以外もクソみてえな笑いを浮かべた。

「どういうことだ」

 聞いたところで素直に教えてくれるとは思っちゃいねえが、それでもなんだか無性に気になってつい口から言葉が溢れた。

「んー? なんだ、教えて欲しいのか?」
「さっさと言え!」

 余裕ぶってる賊達の態度のせいか、いやな予感がどんどん強くなっていく。

「はんっ、言うわけねえだろうが、犬っころ」

 どうする……聞き出してから倒すか? 俺の実力じゃあ、ここにいる奴らを殺さないで捕らえるなんてのは難しい。聞き出さないまま倒しちまえば、こいつらが何を企んでんのかわかんなくなっちまう。

「だがまあ、頑張ってるお前に何も教えてやれないってのは俺たちも心が痛む」

 心が痛むだと? 何バカなこと言ってやがる。んな痛む心なんてもんがあんだったら、賊なんてやっちゃいねえだろうがよ。

「だからよぉ、条件次第では教えてやってもいいぜ?」
「……その条件は?」
「簡単だ。ここにいる俺たち全員を倒してみな! それができりゃあ教えてやんよ!」

 だが気に食わねえとはいえ、それ以外に知る方法がねえってのも事実だ。
 仕方がねえ。今はこいつらの思惑に乗るとするか。どうせ最初っからやる気だったんだしよ。
 こいつらとしては俺をいたぶりたいとかそんな考えで提案したんだろうが、舐めんじゃねえ。てめえら如きが、俺を止められると思うなよ。

 そうして目の前の今まで話していた男が武器を構えて斬りかかってきた。
 それを迎撃するために剣を振ろうと構える。

「チッ、バカが。もっと上手くやれよ」

 だがその剣は振るう事なく、咄嗟に背後から投げられたナイフに気が付き躱す。

「おらああああ!」

 ナイフを躱したせいで体勢が崩れたところに前方からやって来た賊の剣が迫るが、それくらいでやられるほど甘くはねえ!

 ──キイイン!

 俺に向かって振り下ろされた剣を迎え撃ち、攻撃を弾く。

「チッ、死んどけよな」

 剣を弾かれた男に追撃を仕掛けるが、男は攻撃を防がれた瞬間に後ろに飛び退いていた。
 それでも更に追撃しようと一歩踏み出したが、周りにいた奴らの攻撃で止められてしまった。

 こいつら、個々の実力は足りねえが、連携はなかなかのもんだ。
 ……こいつは、意外とやべえかもしんねえな。

「まあそんなわけだ。おめえら! これまで俺たちの邪魔をしてくれたこのクソ犬をぶっ殺すぞ!」

 だとしても、俺は絶対に負けるわけには行かねえんだよ!




「それで、お前らは何をしようとしてんだ」

 全身に傷を負い服も体も赤く染め、今にも倒れそうなのを剣に寄りかかってなんとか倒れずにいる。
 そんな状態だが、俺は勝った。俺以外の賊達は全員傷を負って倒れている。

「ぐう……」
「答えろ!」

 ガクガクと震える足に無理やり力を入れて、俺は目の前で殺さずに倒した男を蹴り飛ばした。

「ぐっ……べ、別働隊が村に襲撃をかけてる。新しくやってきた仲間が、壁を破壊することになってて、今頃はもうぶっ壊れて──ぐあっ!」
「新しい仲間だと? ふざけんな! てめえらはなんで俺たちの村を狙う!」
「……そんなこと、聞いてる暇があんのか? 早く行かねえと、全滅だぞ。今から行ったところで、遅えがな! 今まで散々邪魔してくれたんだ。てめえが守ろうとしてたもんが壊れていくのをよぉく見とけクソったれ!」

 そう叫んだ賊の首に剣を突き立ると俺はその場に崩れ落ちた。
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