28 / 165
幼少期編
へ、へんたいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
しおりを挟む
クレディリア邸の中でも図書館は、アルカティーナ達が暮らしている本邸からは少し離れた別邸にある。
その別邸まで歩いている間に聞いたのだが、どうやらお母様はここ数年図書館を訪れていないのだそうです。だから、何故お父様があそこまで渋ったのかが理解できない、と。
それにしてもあの捨て台詞は少々やり過ぎた気がします…。ごめんなさいお父様!大人気なかったですね、三歳ですけど。
「はい、着いたわよティーナ。図書館へようこそ!」
そう言われて前を見ると重厚そうな木彫の大扉がドンと佇んでいた。それを押すと、そこにはたかが一貴族が有しているのはおかしい程の大量の書物が、本棚という本棚にずらりと並んでいた。しかもまた、その本棚の量も半端ではない。図書館の中央には大きな螺旋階段があり、そこから二階の蔵書ブースにも上がることができるそうだ。
「それで、ティーナは何のご本が読みたいのかしら?絵本?紙芝居?それとも…」
「いえ、お母様。そうではないのです。わたくし、聖霊さんについて知りたいなぁって思って、それで…」
まさか三歳の娘が絵本ではなく大人向けの本を要請してくるとは思ってもいなかったマーガレットは瞠目した。前々からそうかもしれないとは思っていたけれど、アルカティーナは天才なのかもしれない。
今マーガレットがアルカティーナにしているマナーや礼儀作法のレッスンは、到底三歳の子供がこなせるような内容ではないし、勉強を教えるにしても異常に飲み込みが早いのだ。
そう考えるとアルカティーナはとても異端だ。聖霊に関して知りたい、なんて。そもそもマーガレットは算数や国語といった勉強は教えているが、聖霊に関しては一切アルカティーナに教えたことはない。ひょっとすると聖霊という単語をアルカティーナの前で使ったことがないかもしれない。それなのに何故知っているのか。…不思議な子ね、ティーナは。
「…そう、聖霊の本ね?わかったわ、着いてらっしゃい?」
「はい、お母様!」
お母様は螺旋階段の方へと歩いていった。図書館の中は他に誰もいないからか、やけに静かでカツカツという足音が二人分響いた。
「…あら?」
「どうかしたのですかお母様?」
急に立ち止まったマーガレットに疑問を抱いたアルカティーナはコトリと首を傾げた。
「いえ…何だか、本の配置が以前と変わっているようなのよ。聖霊の本は二階にあるはずなのだけど…このぶんだと違うところに移っているかもしれないわ。」
困ったように言いつつ、マーガレットは螺旋階段を上に上がった。それに続き、アルカティーナも階段を上がると階段から一番近い本棚に駆け寄り、どんな本があるのか見た。異世界の書物がどんなものなのか、興味があったから。
しかし、そこに並んでいた書物の背表紙を見て、アルカティーナは文字通り固まった。
『妹☆萌え特集!!』『可愛い妹の作り方とは』
『君の妹はどのタイプ⁉︎妹を手懐ける方法とは』
『真夏のキケンな恋のアバンチュール ~お兄ちゃんと一緒♡~ 』
「へ、へんたいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アルカティーナは思わず叫びましたとさ。
だれですか!こんな本を取り寄せたのは!!!
結論から言うと、二階ブースには碌な本がなかった。
あの後お母様と、別の本棚ものぞいて見たが…『ドキドキ☆一つ屋根の下でのアバンチュール』『アバンチュールには妹を添えて…』『妹よ、あぁ妹や、かわうぃいね!』といったアブナイ本が並んでいたり、また別の本棚に行くと……『キノコの美味しい調理法』『キノコってこんなの!!キノコの事なら何でもお任せ!』『毒キノコから作る薬品』『季節のキノコ総まとめ!』『これで君もキノコ博士だ!』『猿でもわかる!キノコの特徴』…と、何の呪いだと思うほどに、やたらキノコの専門書がズラリと並んでいた。
何でしょうか。アバンチュールとキノコが頭の中でグルグル回っているのですが。
あぁ、と言うかお父様、ごめんなさい。お父様の忠告をちゃんと聞いていればよかったです……。
後悔しました!本当に後悔しました!!
知らなくていい闇を見てしまった気がします…。
どうやらこの事はお母様も知らなかったらしく、「この図書館、どうなっているの…⁉︎」と嘆いていらっしゃいます。
結局わたくしは、「これ以上ここにいたら私の可愛いティーナが腐るわ!穢れるわ!」との事でお母様に無理矢理、図書館から帰らされました。
聖霊さんについて知りたかったのに…。
しょんぼり肩を落としているとお母様に励まされました。明日からお母様が聖霊さんについてのお勉強を教えてくれる事になりました!嬉しいです!
図書館から出たお母様は、真っ直ぐにお父様の執務室へとUターンしました。知らない内に図書館がヤバイ方向へと発展していた事について問いただすみたいです。
何となく気になったアルカティーナは、マーガレットの後を追いかけて執務室へと歩いていった。
その別邸まで歩いている間に聞いたのだが、どうやらお母様はここ数年図書館を訪れていないのだそうです。だから、何故お父様があそこまで渋ったのかが理解できない、と。
それにしてもあの捨て台詞は少々やり過ぎた気がします…。ごめんなさいお父様!大人気なかったですね、三歳ですけど。
「はい、着いたわよティーナ。図書館へようこそ!」
そう言われて前を見ると重厚そうな木彫の大扉がドンと佇んでいた。それを押すと、そこにはたかが一貴族が有しているのはおかしい程の大量の書物が、本棚という本棚にずらりと並んでいた。しかもまた、その本棚の量も半端ではない。図書館の中央には大きな螺旋階段があり、そこから二階の蔵書ブースにも上がることができるそうだ。
「それで、ティーナは何のご本が読みたいのかしら?絵本?紙芝居?それとも…」
「いえ、お母様。そうではないのです。わたくし、聖霊さんについて知りたいなぁって思って、それで…」
まさか三歳の娘が絵本ではなく大人向けの本を要請してくるとは思ってもいなかったマーガレットは瞠目した。前々からそうかもしれないとは思っていたけれど、アルカティーナは天才なのかもしれない。
今マーガレットがアルカティーナにしているマナーや礼儀作法のレッスンは、到底三歳の子供がこなせるような内容ではないし、勉強を教えるにしても異常に飲み込みが早いのだ。
そう考えるとアルカティーナはとても異端だ。聖霊に関して知りたい、なんて。そもそもマーガレットは算数や国語といった勉強は教えているが、聖霊に関しては一切アルカティーナに教えたことはない。ひょっとすると聖霊という単語をアルカティーナの前で使ったことがないかもしれない。それなのに何故知っているのか。…不思議な子ね、ティーナは。
「…そう、聖霊の本ね?わかったわ、着いてらっしゃい?」
「はい、お母様!」
お母様は螺旋階段の方へと歩いていった。図書館の中は他に誰もいないからか、やけに静かでカツカツという足音が二人分響いた。
「…あら?」
「どうかしたのですかお母様?」
急に立ち止まったマーガレットに疑問を抱いたアルカティーナはコトリと首を傾げた。
「いえ…何だか、本の配置が以前と変わっているようなのよ。聖霊の本は二階にあるはずなのだけど…このぶんだと違うところに移っているかもしれないわ。」
困ったように言いつつ、マーガレットは螺旋階段を上に上がった。それに続き、アルカティーナも階段を上がると階段から一番近い本棚に駆け寄り、どんな本があるのか見た。異世界の書物がどんなものなのか、興味があったから。
しかし、そこに並んでいた書物の背表紙を見て、アルカティーナは文字通り固まった。
『妹☆萌え特集!!』『可愛い妹の作り方とは』
『君の妹はどのタイプ⁉︎妹を手懐ける方法とは』
『真夏のキケンな恋のアバンチュール ~お兄ちゃんと一緒♡~ 』
「へ、へんたいだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
アルカティーナは思わず叫びましたとさ。
だれですか!こんな本を取り寄せたのは!!!
結論から言うと、二階ブースには碌な本がなかった。
あの後お母様と、別の本棚ものぞいて見たが…『ドキドキ☆一つ屋根の下でのアバンチュール』『アバンチュールには妹を添えて…』『妹よ、あぁ妹や、かわうぃいね!』といったアブナイ本が並んでいたり、また別の本棚に行くと……『キノコの美味しい調理法』『キノコってこんなの!!キノコの事なら何でもお任せ!』『毒キノコから作る薬品』『季節のキノコ総まとめ!』『これで君もキノコ博士だ!』『猿でもわかる!キノコの特徴』…と、何の呪いだと思うほどに、やたらキノコの専門書がズラリと並んでいた。
何でしょうか。アバンチュールとキノコが頭の中でグルグル回っているのですが。
あぁ、と言うかお父様、ごめんなさい。お父様の忠告をちゃんと聞いていればよかったです……。
後悔しました!本当に後悔しました!!
知らなくていい闇を見てしまった気がします…。
どうやらこの事はお母様も知らなかったらしく、「この図書館、どうなっているの…⁉︎」と嘆いていらっしゃいます。
結局わたくしは、「これ以上ここにいたら私の可愛いティーナが腐るわ!穢れるわ!」との事でお母様に無理矢理、図書館から帰らされました。
聖霊さんについて知りたかったのに…。
しょんぼり肩を落としているとお母様に励まされました。明日からお母様が聖霊さんについてのお勉強を教えてくれる事になりました!嬉しいです!
図書館から出たお母様は、真っ直ぐにお父様の執務室へとUターンしました。知らない内に図書館がヤバイ方向へと発展していた事について問いただすみたいです。
何となく気になったアルカティーナは、マーガレットの後を追いかけて執務室へと歩いていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる