聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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幼少期編

僕の家宝にするんだ!!!!

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 ルーデリア王国を古くから支えてきた、クレディリア公爵家。多くいる臣下の中でも特に秀でており、今では貴族社会でもトップを飾るほどである。そんな公爵家の中でもやはり一番敬われるのはクレディリア公爵。現公爵であるマリオス・フォン・クレディリアは宰相を務めており、その功績は数え切れない。威厳ある彼の名は他国にまで及ぶほどだとか。

 さて、そんな彼は今仕事をほっぽり出して喚いている。
 「図書館はダメ!まだ早いよ!絶対、ダメだよ!!」
 「何故ですかお父様。わたくしはもう三歳ですよ?読み書きだって、ある程度はできるんですよ?」
 反論するとお父様は何やら小さな声でブツブツと呟き始めた。
 「いや…僕が言ってるのは、そういう早いじゃなくて……目に毒というか、年齢制限というか…」
声が小さすぎて聞こえませんでしたが、どうやらお父様は何としてでもわたくしを図書館に行かせたくないらしく、その後は色んな手を使って気をそらしてきた。
 「ほらティーナ!そんな事よりお父様とお茶しよう?ね?いつでも邸内にある図書館よりお父様とのティータイムの方がレアだよ!ね?ね??」
 とか、
 「お父様はティーナが図書館に行くと発作を起こすっていう病気にかかっているんだ!」
 とか、
 「よーし、ティーナ!お絵描きをしよう!お題は、そうだね…お父様の似顔絵、にしよう!僕の家宝にするんだ!!!!あ、紙はこの紙使っていいからね!」
 …などという破茶滅茶な事を言ってきました。
それからお父様?この紙、『㊙︎最重要国家機密』って書いてあるんですけど……?わたくしのような小娘に一度でも渡していいものじゃないと思うんですが?
ま、いっか。
でも、図書館の件についてはどうしても引けません!でもきっとこのままじゃ、入館許可は貰えないでしょう。…うーん、如何しましょうか?あ、そうだ!
 「お父様!わたくし、図書館の入館許可をいただけないなら、お父様のこと嫌いになっちゃいますよ!!」
それは、何となーく言ってみたというだけの言葉。
まさか大人にこんな見え透いた手は通用しないだろうと、半ば冗談のつもりで言ったのだが…。

 威厳ある大宰相は、娘のこの一言に顔色を変えた。

 「えっ……き、嫌いに?ティーナ、お父様のこと嫌いになるのかい?」

 漫画ならガーーーンという効果音が聞こえてきそうな、そんな表情でした。わたくしとて、まさかここまで効果が出るとは思っていませんでしたから、少々焦りました。ですが、裏を返せばこれは入館許可をもぎ取るチャンス!ワクワク♪と期待していたら、執務室の扉がバーーーーン!と開きました。
何事!?って、何だお母様ですか。ビックリした…。
入ってきたお母様はいきなりお父様をジロリと睨む。
 「ちょっとマリオス?さっきから何なのかしら?いい大人がみっともない!入館許可くらいあげなさいな。」
 お、おおおおお母様!!!ありがとうございます!わたくしの味方になってくださるのですね!
 「ええー、いや、うん、だよねぇ。僕もあげたいんだよ?でもほら、あそこは……ちょっとアレなんだよ。」
 相変わらずお父様はモゴモゴと言いにくそうに何か仰っています。
「アレって何よ、アレって。もう!埒があかないわ!図書館如きでゴタゴタと!!ティーナついてらっしゃい。お母様の権限で入館許可してあげるわ!」
 お母様は痺れを切らしたようにそう言ってくれました。やったぁ!やりましたよー!
 「ありがとうございますお母様!」
 「ちょっ!待って待って二人ともー!絶対ダメだってば!絶対後悔するよ!?」
 お母様と二人で執務室を後にしようとするとお父様がまた引き止めてきました。いい加減諦めてください!わたくしは図書館に行くのです!!
 「お父様なんて、大っ嫌いです!!!」
アルカティーナは嫌がらせのつもりでそう叫ぶと、マーガレットと共に図書館へと向かっていった。後に残されたのは、抜け殻のようなマリオスのみであった。

 しかし、アルカティーナはマリオスが抜け殻と化していることを知る由もなく機嫌よく図書館へと向かった。

あの時お父様の忠告を聞いておけばよかった、などと後悔するとは思いもしなかった。
 
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