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幼少期編
私を信じて?
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それは、遥か昔のお話。
伝説上にも残っていないような、秘密の話。
「聖女さま」と呼ばれる人がいたそうだ。
彼女は自然のあらゆる力を操り、時に暴れさせ、時におさめることができたと言う。
人は、その力を「聖なる力」と称した。
「聖女さま」はとても心の美しい、優しい人だった。
人々は皆、「聖女さま」を愛した。
「聖女さま」もまた、人々を愛した。
しかし、とうとう「聖女さま」にも別れの時がやってきた。
彼女は自分の命がもう長くないと悟った時に、ある決断をした。
「聖なる力」を誰か信頼できる人に託そう。
しかし、「聖女さま」が愛した人々は、醜い生き物だった。
「聖なる力」を手に入れるために、人々は媚を売った。
人間に、この力は託せない。
そう確信した「聖女さま」はその力で、新たな存在を創造した。
それが、「聖霊」。
自分の「聖なる力」を、光・闇・火・水・土・木・風の7つの属性に分割し、各属性につき100の聖霊を創って、個々にその力を平等に分散させて、託した。
しかし、話はそれでは終わらなかった。
「聖女さま」にはもう一つ、力があった。
それが、月属性の力。
一言に「月」といって仕舞えば、たいした力ではないように聞こえるが、それは大きな間違いだ。
月属性の「月」は、勿論あの、衛星の月の事も指している。
しかし、「月」には別の意味があった。
それは、宇宙。
巡り行く星々全て。
つまり、月属性の「月」とは、「宇宙」のことを指すのだ。
「宇宙」は広い。
そして月属性の力は、引力・重力・隕石・惑星・衛星・大気まで操ることができる力だった。
その力は、他のどの属性とも比較できないほどに強大で、圧倒的で、恐ろしい力だった。
他属性と同じように、100の聖霊を創造し、力を託すという事も考えた。
しかし、それではあまりにも他属性よりも一個体あたりの力が大きくなりすぎる。
では、聖霊の数を増やすか?
そう考えたが…「聖女さま」にはもう、そんな時間は残されていなかった。
もう、いつこの世を去るかわからない。
そこで、「聖女さま」は妥協することにした。
たくさんの聖霊を創造する時間はない。
でも、たった一人の聖霊を創るのなら、十分間に合う。
「月属性」の聖霊は、1人だけにしよう。
そうして、「聖女さま」はこの世を去った。
701の、聖霊を残して。
「月属性」の力は全て、「聖女さま」が最後に創った1人に託された。
よって、その力は強大。
聖霊の小さな体では、その強大な力を蓄えることができなかったために、その1人はサイズが一際大きくなった。
性格も、他属性よりはしっかりさんに。
さて、残された701の聖霊たちは当然、「聖女さま」を母親のように思っていた。
だから「聖女さま」がなくなった後も、彼女に対する愛は途切れなかった。
ただ、聖霊は「聖女さま」のことを曖昧にしか覚えていなかった。
姿や声は、思い出せない。
でも、美しかった心。
純粋な心。
優しい心。
それだけは、覚えていた。
だから、聖霊は「聖女さま」のように心の美しい女性を探しては、加護を与えるようになった。
母親に向けたのと同じ愛情を、聖女候補に与えた。
ただ、聖霊は「聖女候補」の中から「聖女」を選ぶ「選抜」という儀式をあまりしなかった。
なぜなら、「この人なら絶対に安心して『聖なる力』を託せる!」という人がいなかったから。
だからこそ、「聖女候補」はいても、「聖女」はもう歴代何年もいない。存在しない。
「聖女さま」のような女性は、もうどこにもいなかった。
さて。
強大な力を一身に受け持つ月の聖霊は、数多いる聖霊の中でもトップの存在、「えらいひと」になった。
聖霊たちは皆、月の聖霊を敬った。
「ぎんぱつー!」
「きれーい。」
「すごいつよいんでしょー?」
「かっこいいねー!」
強いからこそ、月の聖霊は他の属性の聖霊よりも、人見知りにならざるを得なかった。
その力を、利用されてはいけないから。
だから月の聖霊は、誕生したから人間の前に姿を現したことはなかった。
そうして彼女は、伝説上の聖霊となった。
書物にも一切載ることなく。
誰にも知られることなく。
何十億もの時をすごした。
何十億もの時をこえ、ようやく見つけた。
「この子だ!」
あの子の歌声が聞こえてきた時、そう思った。
だから彼女は、何十億年かぶりに現れた。
「よろしくね、ティーナ!」
◇ ◆ ◇
「と、言うことなの!わかってくれた?」
にっこり可愛い笑顔で月の聖霊さんが尋ねてきます。
「はい、大方。でも、わたくしはそんなに綺麗な人間では…。わたくしも、人間です。悪いことくらい考えます。」
わたくしは、ひどい人間だ。
自分が新たな道を歩むために、前世の思い出を捨てた。
嘘をついたまま死んだ。
裏切ったまま、死んだ。
「私はね、ティーナならって思ったの!だからね、ティーナも自分を信じてよ。それが無理ならね?私を信じて?ティーナは、綺麗な人間だよ!」
「……!!」
自分を信じてよ、無理なら私を信じて?、か。
自分が綺麗な人間だとは、思わない。
でも、本心からそう言ってくれる存在がいるということだけで、アルカティーナは幸せだと。
そう、思えた。
伝説上にも残っていないような、秘密の話。
「聖女さま」と呼ばれる人がいたそうだ。
彼女は自然のあらゆる力を操り、時に暴れさせ、時におさめることができたと言う。
人は、その力を「聖なる力」と称した。
「聖女さま」はとても心の美しい、優しい人だった。
人々は皆、「聖女さま」を愛した。
「聖女さま」もまた、人々を愛した。
しかし、とうとう「聖女さま」にも別れの時がやってきた。
彼女は自分の命がもう長くないと悟った時に、ある決断をした。
「聖なる力」を誰か信頼できる人に託そう。
しかし、「聖女さま」が愛した人々は、醜い生き物だった。
「聖なる力」を手に入れるために、人々は媚を売った。
人間に、この力は託せない。
そう確信した「聖女さま」はその力で、新たな存在を創造した。
それが、「聖霊」。
自分の「聖なる力」を、光・闇・火・水・土・木・風の7つの属性に分割し、各属性につき100の聖霊を創って、個々にその力を平等に分散させて、託した。
しかし、話はそれでは終わらなかった。
「聖女さま」にはもう一つ、力があった。
それが、月属性の力。
一言に「月」といって仕舞えば、たいした力ではないように聞こえるが、それは大きな間違いだ。
月属性の「月」は、勿論あの、衛星の月の事も指している。
しかし、「月」には別の意味があった。
それは、宇宙。
巡り行く星々全て。
つまり、月属性の「月」とは、「宇宙」のことを指すのだ。
「宇宙」は広い。
そして月属性の力は、引力・重力・隕石・惑星・衛星・大気まで操ることができる力だった。
その力は、他のどの属性とも比較できないほどに強大で、圧倒的で、恐ろしい力だった。
他属性と同じように、100の聖霊を創造し、力を託すという事も考えた。
しかし、それではあまりにも他属性よりも一個体あたりの力が大きくなりすぎる。
では、聖霊の数を増やすか?
そう考えたが…「聖女さま」にはもう、そんな時間は残されていなかった。
もう、いつこの世を去るかわからない。
そこで、「聖女さま」は妥協することにした。
たくさんの聖霊を創造する時間はない。
でも、たった一人の聖霊を創るのなら、十分間に合う。
「月属性」の聖霊は、1人だけにしよう。
そうして、「聖女さま」はこの世を去った。
701の、聖霊を残して。
「月属性」の力は全て、「聖女さま」が最後に創った1人に託された。
よって、その力は強大。
聖霊の小さな体では、その強大な力を蓄えることができなかったために、その1人はサイズが一際大きくなった。
性格も、他属性よりはしっかりさんに。
さて、残された701の聖霊たちは当然、「聖女さま」を母親のように思っていた。
だから「聖女さま」がなくなった後も、彼女に対する愛は途切れなかった。
ただ、聖霊は「聖女さま」のことを曖昧にしか覚えていなかった。
姿や声は、思い出せない。
でも、美しかった心。
純粋な心。
優しい心。
それだけは、覚えていた。
だから、聖霊は「聖女さま」のように心の美しい女性を探しては、加護を与えるようになった。
母親に向けたのと同じ愛情を、聖女候補に与えた。
ただ、聖霊は「聖女候補」の中から「聖女」を選ぶ「選抜」という儀式をあまりしなかった。
なぜなら、「この人なら絶対に安心して『聖なる力』を託せる!」という人がいなかったから。
だからこそ、「聖女候補」はいても、「聖女」はもう歴代何年もいない。存在しない。
「聖女さま」のような女性は、もうどこにもいなかった。
さて。
強大な力を一身に受け持つ月の聖霊は、数多いる聖霊の中でもトップの存在、「えらいひと」になった。
聖霊たちは皆、月の聖霊を敬った。
「ぎんぱつー!」
「きれーい。」
「すごいつよいんでしょー?」
「かっこいいねー!」
強いからこそ、月の聖霊は他の属性の聖霊よりも、人見知りにならざるを得なかった。
その力を、利用されてはいけないから。
だから月の聖霊は、誕生したから人間の前に姿を現したことはなかった。
そうして彼女は、伝説上の聖霊となった。
書物にも一切載ることなく。
誰にも知られることなく。
何十億もの時をすごした。
何十億もの時をこえ、ようやく見つけた。
「この子だ!」
あの子の歌声が聞こえてきた時、そう思った。
だから彼女は、何十億年かぶりに現れた。
「よろしくね、ティーナ!」
◇ ◆ ◇
「と、言うことなの!わかってくれた?」
にっこり可愛い笑顔で月の聖霊さんが尋ねてきます。
「はい、大方。でも、わたくしはそんなに綺麗な人間では…。わたくしも、人間です。悪いことくらい考えます。」
わたくしは、ひどい人間だ。
自分が新たな道を歩むために、前世の思い出を捨てた。
嘘をついたまま死んだ。
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「私はね、ティーナならって思ったの!だからね、ティーナも自分を信じてよ。それが無理ならね?私を信じて?ティーナは、綺麗な人間だよ!」
「……!!」
自分を信じてよ、無理なら私を信じて?、か。
自分が綺麗な人間だとは、思わない。
でも、本心からそう言ってくれる存在がいるということだけで、アルカティーナは幸せだと。
そう、思えた。
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