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デビュー編
お初にお目にかかります。
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いよいよ今日はデビュタントパーティーです。
ああ、もう嫌です。帰りたいです。
さっき会場入りしたばかりだというのに、もはや胃がキリキリと悲鳴をあげています。
何ですか。何故みんなしてわたくしの方を見るのですか。
「まあ、なんてお美しい!」
「ルイジェル様のお隣にいらっしゃる方って…」
「もしかして噂の歌姫様ではなくって?」
「なんて素敵な方々なのかしら…!」
何だかヒソヒソと噂話をされています。内容は小声すぎて聞こえませんが…。
やめてください!
動物園のパンダになった気分ですよ。
パンダ可愛いからいいですけど!
あ、でもわたくし的にはウォンバットの方が可愛いかと思います。
え?ウォンバットをご存じない?
それはいけません!
人生損してますよ!!
(*これはあくまでも個人の意見です。)
「ティーナ、大丈夫か?表情が固いが。」
「ありがとうございますお兄様。少し緊張しているだけなので大丈夫ですよ?」
わたくしを気遣って小声で話しかけてくれたのはルイジェルお兄様です。
今日のわたくしのエスコート役でもあります。
「そうか、ならよかった。」
安心したように笑うお兄様を見て、会場中のご令嬢が黄色い悲鳴をあげます。
さすがですお兄様!
モテモテなんですねお兄様!
あれ?でも何故にお兄様には婚約者なるものが未だいないのでしょう。
モテるのに。
あ、でもお兄様って「氷の秀才」って呼ばれてるんでしたね。
という事はもしかしなくても彼は、社交界では冷たい態度なのでしょうね。
……お兄様、そんなんで大丈夫でしょうか。
一生独り身とか無いですよね?
仮にも時期公爵ですしね。
うー、わたくしはお兄様が心配です!
「皆のもの、静粛に!」
低い威厳あるお声に顔を上げると、玉座の間と呼ばれる壇上に陛下、皇后陛下がいらっしゃいました。
そのお隣には王子殿下もいらっしゃいます。
因みに何故わたくしが王族の方々のお顔がわかるかというと、社交デビュー済みの方々のお顔とお名前は全て暗記しているからです。
大変でしたよ。本当に、大変でした。貴族って、結構人数が多いのですよ。
「これより、今年度のデビュタントパーティーを始める。皆、今日はおめでとう。新しく花開く者が今年もこうして集まってくれたことを、我は嬉しく思う。今日は思う存分、楽しんでほしい。」
陛下の挨拶に会場中が静まり返って耳を傾けています。
中には頷きながら聞いている方もおられます。
でも、わたくしはそれどころでは無いのです!
この陛下の挨拶の後には毎年恒例のある儀式が行われます。
陛下が今日デビューの者達の名前を順に読み上げ、呼ばれた者は一人ずつ、会場の前方にある玉座のまで出て行き、王族の方々に挨拶をするという儀式です。
なんとこの儀式、呼ばれる順番が階級順なのです。
だからわたくしは一番に呼ばれます。
そう、一番です。
一番目立つ、一番です。
もう帰っていいでしょうか。
目立つのは嫌いなんです!
あぁ、胃が、胃が……。
憂鬱な心中は表情には出さず、外面はあくまでも冷静に。優雅に。
でも内心は嵐が吹き荒れております。
「アルカティーナ・フォン・クレディリア嬢!」
「はい。」
はあ、嫌だ嫌だー!
行きたく無いです、帰りたいです!
玉座の間になんて近づきたく無いです!
胃がアルカティーナ史上最上級に痛み始めましたよ!
「あの方がクレディリア公爵ご自慢の…」
「なるほど、確かにお美しい。」
「あの御髪!なんて可愛らしいのかしら!!」
「まるで天使のよう!」
皆様、お願いです。
ヒソヒソこちらを見ながらお話しするのはやめてください。
内容が聞こえないぶん、怖さが倍増するんですよね。
あれこれ考えながらも、できるだけ綺麗に見えるように前へ出ます。
そしてとうとう、玉座の間へと着いてしまいました。
滑らかな足運びのカーテシーを見せつけるようにします。
そして、挨拶。
「お初にお目にかかります。クレディリア公爵が娘、アルカティーナ・フォン・クレディリアさと申します。この度は、この場をもってデビュー出来ましたことを心から嬉しく思っております。」
よし!やりました!
噛まずに言えましたよ!
さあ、あとは元の場所へ戻るだけです。
パンダはとっとと退散します。
しかし、事はそう上手くはいかない。
「うむ。時にアルカティーナ嬢。」
「…?はい。」
満足そうに大きく頷いた陛下は、なぜかわたくしに話しかけてきました。
なんですか、嫌がらせですか。
パンダには優しくしましょうって習わなかったんですか。
あ、そもそもわたくしはパンダじゃなかったですね。
内心陛下に八つ当たりしながらも、アルカティーナはゆっくりと顔を上げた。
そして、目が合う。
「……っ!」
…だから早く帰りたかったんですよ。
彼のことは、知っていましたから。
目があったのは、たった一瞬。
それでも、彼の姿はアルカティーナの目に焼き付いて離れなかった。
「白馬の王子様」に相応しい、サラサラの金髪。
濃いめのスカイブルーの瞳。
中性的な、美しい顔立ち。
この世界のマニュアル本を熟読したアルカティーナは、彼のことをよく知っている。
彼の名前は、ディール・エル・ルーデリア。
この国の第一王子にして、攻略対象。
今日、アルカティーナが最も関わりたくなかった人物の一人だ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ウォンバットってご存じですか?
私が愛してやまない動物です。
ご存じない方は是非調べて見てください!
めっさかわいいので!
(これはあくまでも個人の意見です!)
ああ、もう嫌です。帰りたいです。
さっき会場入りしたばかりだというのに、もはや胃がキリキリと悲鳴をあげています。
何ですか。何故みんなしてわたくしの方を見るのですか。
「まあ、なんてお美しい!」
「ルイジェル様のお隣にいらっしゃる方って…」
「もしかして噂の歌姫様ではなくって?」
「なんて素敵な方々なのかしら…!」
何だかヒソヒソと噂話をされています。内容は小声すぎて聞こえませんが…。
やめてください!
動物園のパンダになった気分ですよ。
パンダ可愛いからいいですけど!
あ、でもわたくし的にはウォンバットの方が可愛いかと思います。
え?ウォンバットをご存じない?
それはいけません!
人生損してますよ!!
(*これはあくまでも個人の意見です。)
「ティーナ、大丈夫か?表情が固いが。」
「ありがとうございますお兄様。少し緊張しているだけなので大丈夫ですよ?」
わたくしを気遣って小声で話しかけてくれたのはルイジェルお兄様です。
今日のわたくしのエスコート役でもあります。
「そうか、ならよかった。」
安心したように笑うお兄様を見て、会場中のご令嬢が黄色い悲鳴をあげます。
さすがですお兄様!
モテモテなんですねお兄様!
あれ?でも何故にお兄様には婚約者なるものが未だいないのでしょう。
モテるのに。
あ、でもお兄様って「氷の秀才」って呼ばれてるんでしたね。
という事はもしかしなくても彼は、社交界では冷たい態度なのでしょうね。
……お兄様、そんなんで大丈夫でしょうか。
一生独り身とか無いですよね?
仮にも時期公爵ですしね。
うー、わたくしはお兄様が心配です!
「皆のもの、静粛に!」
低い威厳あるお声に顔を上げると、玉座の間と呼ばれる壇上に陛下、皇后陛下がいらっしゃいました。
そのお隣には王子殿下もいらっしゃいます。
因みに何故わたくしが王族の方々のお顔がわかるかというと、社交デビュー済みの方々のお顔とお名前は全て暗記しているからです。
大変でしたよ。本当に、大変でした。貴族って、結構人数が多いのですよ。
「これより、今年度のデビュタントパーティーを始める。皆、今日はおめでとう。新しく花開く者が今年もこうして集まってくれたことを、我は嬉しく思う。今日は思う存分、楽しんでほしい。」
陛下の挨拶に会場中が静まり返って耳を傾けています。
中には頷きながら聞いている方もおられます。
でも、わたくしはそれどころでは無いのです!
この陛下の挨拶の後には毎年恒例のある儀式が行われます。
陛下が今日デビューの者達の名前を順に読み上げ、呼ばれた者は一人ずつ、会場の前方にある玉座のまで出て行き、王族の方々に挨拶をするという儀式です。
なんとこの儀式、呼ばれる順番が階級順なのです。
だからわたくしは一番に呼ばれます。
そう、一番です。
一番目立つ、一番です。
もう帰っていいでしょうか。
目立つのは嫌いなんです!
あぁ、胃が、胃が……。
憂鬱な心中は表情には出さず、外面はあくまでも冷静に。優雅に。
でも内心は嵐が吹き荒れております。
「アルカティーナ・フォン・クレディリア嬢!」
「はい。」
はあ、嫌だ嫌だー!
行きたく無いです、帰りたいです!
玉座の間になんて近づきたく無いです!
胃がアルカティーナ史上最上級に痛み始めましたよ!
「あの方がクレディリア公爵ご自慢の…」
「なるほど、確かにお美しい。」
「あの御髪!なんて可愛らしいのかしら!!」
「まるで天使のよう!」
皆様、お願いです。
ヒソヒソこちらを見ながらお話しするのはやめてください。
内容が聞こえないぶん、怖さが倍増するんですよね。
あれこれ考えながらも、できるだけ綺麗に見えるように前へ出ます。
そしてとうとう、玉座の間へと着いてしまいました。
滑らかな足運びのカーテシーを見せつけるようにします。
そして、挨拶。
「お初にお目にかかります。クレディリア公爵が娘、アルカティーナ・フォン・クレディリアさと申します。この度は、この場をもってデビュー出来ましたことを心から嬉しく思っております。」
よし!やりました!
噛まずに言えましたよ!
さあ、あとは元の場所へ戻るだけです。
パンダはとっとと退散します。
しかし、事はそう上手くはいかない。
「うむ。時にアルカティーナ嬢。」
「…?はい。」
満足そうに大きく頷いた陛下は、なぜかわたくしに話しかけてきました。
なんですか、嫌がらせですか。
パンダには優しくしましょうって習わなかったんですか。
あ、そもそもわたくしはパンダじゃなかったですね。
内心陛下に八つ当たりしながらも、アルカティーナはゆっくりと顔を上げた。
そして、目が合う。
「……っ!」
…だから早く帰りたかったんですよ。
彼のことは、知っていましたから。
目があったのは、たった一瞬。
それでも、彼の姿はアルカティーナの目に焼き付いて離れなかった。
「白馬の王子様」に相応しい、サラサラの金髪。
濃いめのスカイブルーの瞳。
中性的な、美しい顔立ち。
この世界のマニュアル本を熟読したアルカティーナは、彼のことをよく知っている。
彼の名前は、ディール・エル・ルーデリア。
この国の第一王子にして、攻略対象。
今日、アルカティーナが最も関わりたくなかった人物の一人だ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
ウォンバットってご存じですか?
私が愛してやまない動物です。
ご存じない方は是非調べて見てください!
めっさかわいいので!
(これはあくまでも個人の意見です!)
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