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出会い編
ド下手じゃないです!ちょっとです!!
しおりを挟むお茶会は滞りなく終わりました。
最初はドギマギしていたご令嬢も終わる頃には幾分か自然な態度を取るようになったりしていましたし、お茶会は大成功なのではないでしょうか。
それをアメルダに言ってみたところ、
「…よ、よかった!!ちょっと皆と仲良くなれたし……仲良くなんてなりたかった訳じゃないけどね!」
と、それはもう嬉しそうな笑顔で喜んでいました。
相変わらずのツンデレですね。
可愛いなぁ……。
さて、なぜわたくしがこんな回想をしているのかと言うとですね。
答えは簡単!
現実逃避さ!!
「いや~~お菓子美味しかったですね~~アルカティーナ様!私あのクッキーが美味しかったと思います!アーモンドの風味がしっかり効いてて。」
「そ、そうですね。わたくしは、抹茶のモンブランが美味しかったです。苦味と甘味がとてもいい塩梅で。」
今わたくしはクレディリア邸に帰ってきております。
愛すべき実家です。
マイホームです。
癒しの根源です。
それがどう言うことでしょう。
あら不思議!
リサーシャ嬢が隣にいるだけで愛すべきマイホームが地獄の巣窟のようですよ。
いえ、別にリサーシャ嬢が嫌いとか苦手とかそういうのではないのですよ?
ただ、彼女が転生者かもしれないと思うとですね…落ち着かないんです。
「あの、リサーシャ嬢?それで何の御用ですか?わたくしに何かお話ししたいことがあったのでは?」
いたたまれなくなったアルカティーナは早々に切り出した。
リサーシャはヘラヘラした笑顔を引っ込めると話し始める。
「……うーん。では 単刀直入に聞きます。アルカティーナ様は転生者ですか。」
「…………………。」
やっぱりそうきましたか。
というか、それを聞くということはやはりリサーシャ嬢も転生者なのですね。
ここは「そうです」と言ってスッキリしたいところですが…わたくしは知っています!
こういう時に「そうです」と言ってしまうと後にその情報を悪用されて、オレオレ詐欺とかにかかってしまうのです!
「オレ、オレだよオレ!ほら!前世で~友達だった!ってことで親友や、金かして!」ってね!!
と言うことでわたくしは知らぬふりを通そうと思うのですよ。
つまりは嘘をつくのです!
しかし、いよいよ嘘をつくぞ!というときになってアルカティーナは気づいてしまった。
ゼンを退室させてない!!
ゼンはアルカティーナの護衛役だ。
だから、湯浴みなどでない限り常に近くにいる。
そして今現在は、アルカティーナ達のいる部屋の隅に立っている。
つ ま り
このままだと下手を打てばゼンに前世のことがバレる!!
バレなくても転生者とかそんな事を言ったらゼンにイタイ人認定されますよ!
と言うか既にリサーシャ嬢のことを冷めた目で見ています。
…ドンマイ、リサーシャ嬢!
アルカティーナは心の中でリサーシャに手を合わせてからゼンを退室させるべく、唐突にこう叫んだ。
「あーーっ!ゼン!!今窓の外を子猫が横切りました!ナノの子供かもしれませんっ!見てきてください!!!」
猫が横切ったのは事実ですよ?
まあ、それをゼンの餌にしただけの事です。
ゼンは何故かわたくしにとてもよくしてくてます。
それでいて、とても真面目な人。
だから、きっとゼンはわたくしが説得しても退室しないでしょう。
だから、猫で釣りました。
彼は猫には目がないので。
そんな彼は、やはりと言うか何と言うか。
「何!?それはいけない。急がないと!」
見事に退室してくれました。
光のような速さで飛び出していったゼンを見てアルカティーナは呟いた。
「チョロいですねぇ。」
一方リサーシャは絶句している。
「え、と。斬新な追い出し方ですね…?」
と苦し紛れに言うのがやっとだった。
気を取り直して嘘をつくのです!
嘘はつきたくないんですけどね?
ほら、前世でやらかしちゃったので。
でも、今回は少し特別です。
「それで、転生…でしたか?わたくしは違います。」
キョトンとした表情を作って言ってやりましたよ!
我ながら素晴らしい演技力です!!
会心の演技に満足した直後。
アルカティーナは再び気がついた。
嘘つけないんでした、わたくし。
どうしましょう!やっちゃいましたよ!
ほら、リサーシャ嬢が笑い堪えてますよ!!
「やば…嘘ド下手……ぶふっ!!」
「ド下手じゃないです!ちょっとです!!」
ショックです!!
そんなに吐き出さなくても…!
「はぁ、わかりました。もう誤魔化すのはやめにします。わたくしは列記とした転生者ですよ。前世の記憶もあります。」
諦めて白状したわたくしに、リサーシャは「だと思ったんですよ。」とばかりに頷きました。
そして、こうも言いました。
「私もそうなんです。転生者で、記憶持ち。一緒ですねー!!凄く心強いですっ!あ、よかったら友達になってください。前世のこととか語らいましょ?あと私、この世界について詳しいので色々教えちゃいますよ!!」
悪戯っぽい笑み。
邪気のない笑顔。
…あぁ、もういいや。
転生者とか、乙女ゲームとか、敵とか、味方とか。
悪役令嬢とか。
もうなんだっていい。
わたくしは、わたくしがしたいことをすれば良い。
やりたいようにやれば良い。
それでこそ、わたくしでしょう??
中々返事をしないアルカティーナに、リサーシャは悲しそうに眉を下げた。
「やっぱりダメですか?お茶会の時の態度が良くなかったとか…?言い訳になりますけど、あれは演技ですよ。本心をさらけ出した方が人付き合いは楽だって教わったので。…気に障ったならごめんなさい!だから友達になってくれませんか?私まだ友達いなくて。」
「え?あれ演技だったんですか?と言うかあれ本心だったんですね!?それはそれで凄いですよ?」
リサーシャはどうやら本心から「うっへへへ、へへ…」のか言う変質者のような言葉を発していたらしい。
何とも「クセのある」人だ。
「…え?凄いですか?えへ、ありがとうございます」
「あ。褒めてないです。」
活発そうな彼女を見ていると、前世が懐かしくなってきました。
わたくしにも、こんな元気な友達が…親友がいたなぁ、と。
彼女は今、どうしているでしょうか。
……きっと、彼女は今でも元気でやっているでしょう。
だからそろそろ、わたくしも。
「良いですよ、リサーシャ嬢。わたくしとお友達になりましょう!!」
もっともっと、笑っていられる場所を増やしていきましょうか。
勿論笑うのは、お友達や家族と一緒にです。
アルカティーナは3人目のお友達をゲットした!
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