上 下
67 / 165
出会い編

ゼンのことを教えてください!!

しおりを挟む
 ある初夏の朝。
ゼンがまだ庭で日課の素振りをしている時間帯。
一人の侍女がアルカティーナの部屋を訪れていた。

 「朝早くにすみませんお嬢さま。あの、ゼン様…いえ、ゼン殿のお誕生日をご存知ではありませんか?せっかくお嬢さまの護衛役になってくれたのですから、お祝いくらいしないとという話になりまして。」

 「わあ!それは素敵ですね!やりましょう、お祝いパーティー!あ、ゼンの誕生日ですか?…あれ?そう言えば知らないです」

そう言ったと同時に、アルカティーナは少し驚いた。
 ゼンと知り合ってから早くも数ヶ月が経っている。
数ヶ月も経っているのに、アルカティーナはゼンのことを全然知らないことにふと気がついたのだ。 
 



 思えば、彼は少々謎が多いです。

まず、彼の苗字をわたくしは知りません。
いくら没落した貴族令息とはいえ苗字を名乗り続けることは当たり前にできることです。
 それに、彼は『常に完璧であること』を目指していました。
わたくしと初対面の時に本人がそう言っていたので間違いはないはず。
ただの名もなき元貴族が『常に完璧であること』を目指すって、普通に考えておかしいと思いませんか?
わたくしが『常に完璧なんてあり得ない』と言ってからはマシにはなりましたが、未だに彼は何事も完璧にこなそうとしています。
それ自体はいいことだと思うのですが…少々度がすぎる所があるのです。
 何か事情があるのでしょうか??

あと、何より引っかかっていることは。
ゼンとの初対面の直前にわたくし宛に届いた陛下直々のお手紙の『頼りにしているぞ』という一文。
これは届いた時期を考慮すると、恐らくはゼンのことを任せた、という意を伝えたかったのではないかと思うのです。
それをわざわざ護衛対象のわたくしに伝えるということは……


 ゼンは、何かとんでもないものを抱えているかもしれません。

 
 ゼンは、自分のことを話しません。
話そうとしませんし、はぐらかされることも多いです。

 ゼンはあまりにも美形様なので「攻略対象」か?と思った時期もあったのですが…彼の名前はマニュアル本には載っていませんでした。


 わたくしの知っている限りでは、何でも上手くこなして。
器用で、でもちょっと不器用で。
眩しいほどの美形で。
頼り甲斐があって。

 
 わたくしは、彼のことが好きです。
お友達ですもの、当然です。
でもお友達って、もっとお互いのことを知っているものじゃないですか。
なのにわたくしは
どうしてこんなにも無知なのでしょう。




 知りたい

 ゼンを知りたい




 そう思ったアルカティーナの行動は、早かった。


 「知らないなら聞けばいいですよね!」

 
 「お嬢、何言ってるんだ?廊下まで聞こえてきたぞ」

 
 何とタイミングよくゼンが帰ってきたのだ。
これをこれ以上ないチャンスだと汲み取ったアルカティーナは、ほとんど勢い任せに聞いた。

 「ゼン!ゼンのことを教えてください!」



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 余談なのですが、水瀬は小説のキャラを作る時に決まってそのキャラのイメージ図を描きます。(メインキャラだけですが)

 なのでゼンのイメージ図も描いたんです。
私は最初、彼を短髪キャラにしていました。
何故なら私は短髪が好きだから!
あ、長髪も愛してますよ?
さて今ゼンは長髪キャラとして登場しております。
私は短髪にするつもりだったのに。

何故って?

ゼンのイメージ図を見た我が友が

 「えー、長髪がいいーー。」

と言ってきたからです。
ワガママを言うでない、友よ!!
皆さんは、長髪お好きですか?
私は好きです。

 以上、水瀬の余談でした。


お読みいただきありがとうございます!!
 
しおりを挟む

処理中です...