聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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出会い編

ゼンの見解

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 停電なおりましたぁぁっっ
お待たせしましたごめんなさい!
そしてありがとうございます。
昨日は北海道の地震もあり、最近の災害の多さに改めて驚いております。
北海道の皆様、早々の復興をお祈り申し上げます…

 では本編です(o^^o)
今回はゼン視点

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 
 「ゼンのことを教えてください!!」


 無邪気に輝くその瞳に、俺は何度目を細めただろう。

 お嬢は可憐な見た目に反して結構行動的で、それと同時に自我の強い一面がある。
 お嬢がこうだと言ったらこうだし、ああだと思ったらああで、それを曲げることは滅多とない。
良くも悪くも、真っ直ぐな性格だ。


 真っ直ぐで明るくて笑顔の似合う彼女は

 
 歪んだ俺には眩しすぎる。


 いつだったか名前で呼んでほしいと言われたことがある。
でも、俺にはそんな資格はない。
名前を呼び合えるのは、同じ舞台に立つ人同士のみだ。
俺はお嬢のような煌びやかな舞台には立っていない。
見た目だけが良い、おんぼろな舞台が我ながらお似合いだ。
 それに、今の俺はただの従者に過ぎない。
お嬢の護衛役である限り、俺が本来どんな身分かなんて関係ない。
ただの従者だ。

だからこそ

彼女が俺を「ゼン」と呼ぶたびに



自分の無力さを突きつけられる



 はっきり言うと、俺の血筋はとても価値あるものだ。
女性からすれば「優良物件」と言ったところだろう。
これは断言できる。

 でも、それは俺の血であって俺個人ではない。


◇ ◆ ◇


 『用があるのはお前じゃない。お前の兄貴さ』

 『何だよ、ーーーーー様。あんた自分に価値があるとでも思ってんのか?』

 『ハッハッハッ!笑えるなそりゃ!お前の兄貴には十分に価値がある。だからこそ、俺たちゃこうしてお前の兄貴を攫ったのさ』

 『でもお前は違う。状況が状況だったからついでに攫ってはみたがお前には特に価値はないだろう?』

 『そうそう、お前はってとこだ』

 『まだ納得できねぇのか?なら言ってやるよ』

 『お前の兄貴は文武両道・眉目秀麗…言いだしゃきりがないくらい、だ』

 『でも、お前には何がある?何か一つでも誇れるものがあるか?』

 『何か一つでも兄貴に勝るものはあるか?』

 『その身分の高さ以外に、』

 『兄貴に立ち向かえる何かがお前にはあるか?』



 『ないだろ?』




 年の離れた兄はとても優秀な人で、まさに長男らしくて両親からの期待を一身に受け、そして器の大きな人間に育った。

 俺は、空っぽだったんだな。

 だったら、あの兄の隣に立てるくらいになったら。

 もうオマケなんて言われることは無くなるだろうか。

 強くなろう。

 そう決意してから、何年が経っただろう。
恐らく10年弱と言ったところか。
あれから俺は、強くなった。
社交デビューして、騎士にもなって、勉強も何もかもをほぼ完璧に習得した。

兄のように強く
兄のように凛々しく
兄のようにうつくしく
兄のように完璧に
完璧に完璧に完璧に完璧に完璧に完璧に完璧に完璧に

 それだけを考えながら、俺は強くなった。
でも、俺は空っぽのままだ。
真っ白な、何もない。
人をかたどっただけのただの殻。

苦手なものは無くなった。

そう、思っていた。

でも俺は、知らない間に人間を怖いと思うようになっていた。

 何故なら人は、自分を兄と比べるから。
比較して、弱点を見つけては笑って。
嘲笑って。
その癖本人の前では何も言わない。

はじめて怖いと思ったのは、いつだったか。

 人を見ると。自分が「オマケ」扱いされるかもしれないと考えるようにもなった。

 勿論表向きにはそんな表情は出さなかった。
でも、流石に家族にはわかったらしい。
どんどんと自分を追い詰め、塞ぎ込む俺を気遣ってか、社交の場に出なくても良いと言われた。
 言われてからは、一度も社交の場に顔を出さなかった。

 このままではだめだ。
何が完璧に、だ。
程遠いじゃないか。

 そう思った矢先のことだった。

 「お前を、アルカティーナ嬢の護衛役に任命する」

 これが、俺の転機になった。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ゼン視点、次回に続きます
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