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出会い編
ゼンの太陽
しおりを挟む身分を隠して入団したこともあったか、騎士団の仲間たちとは気兼ねなく付き合えた。
でも、社交はやはりてんでだめだった。
社交の場での嘘偽りの作り笑いと作り話。
俺はそれがどうも苦手だった。
ただでさえ人間不信気味だったというのに、だ。
いや、だからこそかもしれない。
ずっとずっと部屋にこもって仕事をこなすか、騎士として働くかのどちらかで閉塞的だった俺もこれにはさすがに危機感を覚えた。
ーーもう引きこもるのはやめにしよう
そう思った矢先のことだったと思う。
アルカティーナ嬢の護衛役に任命されたのは。
本音を言えば、「ふざけるな」だった。
これから少しずつ自分なりに前へ進もうとしていたのに!
でも王命には逆らえない。
俺は内心文句をたらしながらもクレディリア邸へと赴いた。
(泊まり込みで護衛とか前代未聞だ!)
(公爵令嬢のお守りなんてごめんだ)
馬車に揺られながらそう思っていたことは今でも忘れられない。
あの時の俺は、思ってもみなかった。
その公爵令嬢ことお嬢との出会いこそが、俺の第一歩になるだなんて。
さあ、そろそろ話を戻そうか。
「ゼンのことを教えてください!!」
歪みきった俺には、お嬢は眩しすぎる。
お嬢はいわば、俺の憧れなのだ。
羨ましいほどに、真っ直ぐな生き様
妬ましいほどに、澄みきった心
その全てが、俺を照らす
太陽のように…
「ゼン!ゼーンーー??聞いてます?おーい」
「ああ、悪いな。少し考え事をしていた。聞いてるぞ、俺のことを知りたいってことだろ?」
「何だちゃんと聞いてるんじゃないですか。あまりにぼーっとしてるからシカトされてるのかと思いましたよぉ…」
俺のことを知りたいと思うのは、仕方のないことだ。
俺は未だ、素性をお嬢にはバレないようにしているのだから。
「さぁゼン!教えてください!まずは家名からです」
没落したとは言え、苗字はあるでしょう?と聞いてくるお嬢はやはり真っ直ぐな人だと思う。
「俺の苗字…?それは、秘密だ」
言うと、彼女はもとより大きい瞳を更に大きくさせた。不満そうだ。
「ええー!?な、何でですか」
「いずれ教えるから」
「本当ですか~??嘘ついたら針千本飲ませてからの一週間連続オヤツ抜きの刑ですよ!」
「…何だそりゃ」
いずれ教えるから、というのは本音だ。
教える…と言うよりかは、いずれバレるだろう、と言うのが正確なところか。
別に今バラしても構わないが…
いまはまだ、その時じゃない気がする。
「む~~…じゃあじゃあ、年齢は?」
「14。お嬢の二つ上だな」
「誕生日!」
「11月11日」
「すごいです、ポッ○ーの日!!」
「ポッ○ー??…???」
お嬢は時々よくわからないことを言ったりしたりする。
お嬢は時々凄く暗い顔をして、すぐに前を向いて笑顔を作る。
お嬢はよく、笑う。
俺はそんなお嬢が大好きだ。
いつからか、お嬢にはずっと笑っていてほしいと思うようになった。
ずっとそのままでいてほしい、とも。
ずっとずっと、真っ直ぐなままで。
そして、そんなお嬢を俺に守らせてほしい、と。
「あ、そうだゼン!」
不意に、お嬢が俺を振り返った。
腰まで波打つ金が宙に弧を描く。
「あのですね…」
何やら口ごもるお嬢。珍しいな。
「今更なんですけど、」
お嬢と仲良くなって、分かったことがある。
「わたくしの護衛役になってくれて、ありがとうございます!」
お嬢は俺の心を掴むのが上手い。
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