聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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出会い編

あなた、何者ですか

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 賑やかなパーティー会場。
思い思いに着飾った華やかな貴族たち。
紅葉の鮮やかな赤を闇に浮き彫りにするランタンの灯り。
どこか幻想的にも見えるその場所には似つかわしくない、大層現実的な音がゼンの元では鳴り響いていた。

 「へぇ、アンタなかなかやるなァ」

 鋭く、そして激しく刃と刃がぶつかり合う金属音の中、男は言った。
 しかしゼンは怒気すら含んだ声色でそれに返した。

 「だまれ」

 ゼンは、自分の振るう剣に自信と矜持があった。
だからこそ、腹が立った。
こんなよく知りもしない若い男に、知ったような口をきかれたくなかったのだ。

 その怒りを、ゼンは剣に込めた。
一気に男に詰め寄ると、腕を下から思い切り蹴り上げる。
急な事に動揺した男は何とか短剣を落とす事は阻止したものの、それを再び構え直す事は出来なかった。
 そんな猶予は与えないとばかりに、ゼンが男の首元スレスレに剣を突きつけたからだ。

 「な、…っ」

 「詰めが甘いんだよ。第一お前、接近戦が苦手だろ?なら短剣なんて持つな」

 見事に自分の苦手分野を言い当てられた男は少し驚いた様子を見せてから、大人しく武器を遠くへ放って両手を挙げた。

 「はーあ、お見通しってか。こりゃ参った参った。……降参だ」

 「そうか。…そう言えば、さっきの言葉。そっくりそのまま返すぞ」

 「さっきの言葉?」

 「『アンタなかなかやるなァ』ってやつだよ。お前、かなりいい腕をしてるぞ。第二騎士団くらいなら余裕で入れるんじゃないか?」

 確かに接近戦は不得手な様だったが、それでも動きは並みの騎士よりは断然早く、キレがあった。
 それに短剣の扱いや足の運び方が非常に読みにくく、手間取った部分もある。
 彼の腕は確かだろう。
 すると、男は苦笑を浮かべた。

 「うっわー!入団しときゃよかった…てか、アンタ何者な訳?主人が言ってたけど、アンタだけは身の上のことをいくら調べても何一つ分からなかったらしいぜ?」

 バカだなぁ、俺のことを調べたのか。何もわかるはずなんてないのに。
 まぁ、教えてやる義理はないが。

 「俺はただのアルカティーナお嬢様の従者だ。それより、お前の主人って誰のことだ?そいつがお前に俺たちを襲うよう指示した奴なのか」

 そう言えば、お嬢の姿が見えない。
一瞬、目の前の男の仲間にしてやられたかとも思ったが、他に人の気配はなかったからその線は薄い。
恐らく助けでも呼びに行ったのだろう。

 「そうだぜ?主人のことは…仕えてる以上、これは言わないほうがいいんだろうが、オレは正直アンタが怖いんだよなァ。って事で、特別に教えてやるよ。主人の名前は……」

 「ゼンっ!あぁ、良かったです。無事で…」
 
 ある意味ナイスタイミングで、後ろから声がかかった。
男に剣を向けたまま、頭だけ振り向くとそこには肩で息をするお嬢の姿があった。
やはり、助けでも呼びに行っていたのか。

 「お嬢こそ、ケガは?」

 「わたくしは全くの無傷です。それより、今さっき近くで見張り番をされていた騎士の方に助けを求めてきました。すぐに応援を送ってくださるとのことです。あと、陛下にもこの旨をお伝えするよう頼んだので、暫くは大丈夫かと思われます」

 アルカティーナは、息を整えながらもゼンにそう伝えた。
 本当はゼンのことが気にかかって、この場を離れたくなかったのですが…助けはあった方が良いと思い直したのです。
 するとゼンはふっと笑いました。

 「流石はお嬢。仕事が早いな」

 「そんな事ないですって。それより…………」

 ゼンに返した苦笑を一瞬にして消したアルカティーナは、黒尽くめの男に目線を移した。
その目線は、驚く程に冷たいものだ。

 「あなた、何者ですか」

 世間で天使だとか歌姫だとか謳われている、かの有名なアルカティーナの、怒りや悲しみや憐れみなどの様々な感情をのせた冷たい目線に男は息を詰まらせた。
その横には、先ほど刃を交えたゼン。
 世を騒がす公爵令嬢と、強すぎるその従者。
 
 (こりゃ、勝てっこねぇや)

 男は諦めたように溜息をつくと、ポツリポツリと話し始めた。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 眠いです。
とっても眠いです。電車でも室内でもぼーっとしているだけで微睡み始めるくらいに眠いです。
何ででしょうねぇ。
別に昨日は何もしてないのに。
あえて言うなら、昨日は夜遅くまでスマホゲームに没頭していたくらいですよ。
いや~丁度欲しいキャラのガチャやってたもので、つい……。
反省はしていません。
ですが、本当に眠い!
もう寝よっかな……

 恒例の余談でした( ̄∀ ̄)
お読みいただきありがとうございます!

 そろそろ王子がでる…はず!
(本当は今回出る予定でした。書ききれませんでした。ごめんなさい。)
 
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