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出会い編
変わってないな
しおりを挟むそれからというもののディール殿下は事件の詳細を事細かに教えてきくださいました。
「……と言うわけで恐らくリサーシャ嬢とアメルダ嬢を攫った人物としてはラグドーナ殿が一番可能性が高いと見ている」
「そうですか。では、ラグドーナ様を問い詰めてみてはどうでしょう」
「そうだな。だが抵抗されては面倒だ。二次被害の危険も十分にある」
「そうですね…ではラグドーナ様の後をつけて様子を伺ってみますか」
「ああ。だがラグドーナ殿はどうやら既に会場を立ち去っているらしくてな…」
作戦会議をしているディールとゼンの側で、アルカティーナは自己嫌悪に陥っていた。
ラグドーナ様が犯人だったならアメルダとリサーシャの誘拐はきっとわたくしが原因です。
わたくしのせいです。
何故わたくしがラグドーナ様のお誘いを断る前の時刻に誘拐の目撃情報があるのかは謎ですが、まあ十中八九わたくしのせいでしょう。
わたくしがラグドーナ様のお誘いを断った時…つまりラグドーナ様の顔に泥を塗った時のために前もって攫っておいた…という線が濃いでしょう。
何故そこまでするのかはわかりませんが、余程わたくしと婚約したかったのか、単にわたくしが憎いのか、あるいはプライドが高すぎるのか、のどれかでしょうね。まぁわたくしと婚約したかったという可能性は低いでしょうが。
でも何にしろ、わたくしは大切なお友達をまた傷つけてしまいました。
…もっともっと、わたくしが完璧ならこんなことにはならなかったのに!
何だかゼンが完璧を求める気持ちが理解できる気がします。
…2人を取り戻しましょう。
「…嬢、…ナ嬢!」
わたくしの持つ全ての力を使って。
「…カ…ナ嬢!」
誰であろうと、わたくしの大切な人を傷つけるなら、
容赦はしません。
アルカティーナが覚悟を決めたところで、耳元で声が聞こえた。
ディールの声だ。
「アルカティーナ嬢!!」
「っ!は、はいっ!すみませんディール殿下。少しボンヤリしておりました」
「いや、こちらこそ大声を出してすまない。だが疲れが溜まっているのではないか?私達で彼女たちを捜索するからアルカティーナ嬢は休んでいても…」
「いいえ」
アルカティーナは、強い意志のこもった声で答えた。
意志の強さに、薄桃の瞳がグッと細められる。
「いいえ、ディール殿下。わたくしは、友人を連れ去られて休んでいられるほど肝が座っておりませんので。…全力で捜索に協力致します。いいえ、させて下さい」
元はと言えば自分でまいた種。
わたくしが休んでどうするのです。
すると、そんなアルカティーナを見てディールがフッと笑った。
「変わってないな」
「?……え??」
その言葉の意味がわからなくて、アルカティーナは首をキョトンと傾げた。
ディールは再び笑うと、
「いや、何でもない。では早速始めようか」
みんなに向けて、そう言ったのだった。
その笑顔は、やっぱり何だか懐かしい気がします。
何故だかその笑顔を見ると、泣きそうになりました。
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