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出会い編
こちらこそ、ごめんなさいね?
しおりを挟む「アルカティーナ様。ここから先は何があるかわかりませんので、私たちの後ろを付いてきてください。ゼン、頼んだぞ」
「はい、わかりました」
「了解」
着いてしまいました、敵の本陣に。
よし、此処からは大人しくしておきましょう。
お力になれそうな時は頑張りますが、そうで無い時は邪魔しないように後ろに下がってましょう。
でも、こんな真正面から乗り込んで大丈夫なんですかね…。
わたくしはてっきり建物の裏とかから侵入するんだと思ってましたよ。
わたくし達が扉を開けようとしたその時。
案の定というか何というか、門番らしき人に止められました。
「曲者!誰の許可を得てここに立ち入ろうとしているのだ!!」
ジョソーさんのお仲間さんでしょうか。格好がまるっきり同じで、黒尽くめです。
皆さん忍者を目指したいお年頃なんですか?
ぎっくり腰には気をつけて下さいね。
あと手裏剣は棒手裏剣と車剣のどちらですか?
是非ともわたくしに教えてください。
呑気にそんなことを考えていると、周囲から次々と剣を抜く音が聞こえてきました。
見ると、門番の男性はジョソーさん同様短剣を構えています。
それに対して騎士様達は剣を。
あらあら物騒ですね。
…何故かゼンだけ抜刀していないのですが何か理由でもあるのでしょうか。
チラリと周囲を見渡すとキャア!とか細い悲鳴まで聞こえてきました。
こちらは剣を向け合うわたくし達を見た住民の方のものでした。まあ当然ですよね。
日頃平和な街でこんな光景を見てしまったら。
と、そこでアルカティーナは事態の深刻さに気がつく。
城での騒動ではゼン対ジョソーさんの1対1だから良かったものの、今回は1人対多数(しかも第一騎士団員)。それも街のど真ん中で。
これでは目撃した住民たちに無駄な混乱を招くだけでなく、ただの暴行になってしまうかもしれません。
このままではまずい。
なんとか脱却する方法を考えなくては!
考えろ、考えろ。
考えるのですアルカティーナ!
元々切れる頭をさらにフル回転させたアルカティーナの脳内には一瞬のうちに様々な考えが浮かび上がった。
そしてほんの数秒後にはある方法を導き出していた。
ラグドーナの最大の弱点はアルカティーナ。
だったらそれを使って釣ればいい。
「曲者とは随分ですね。…ですが、わたくし達からしてみれば貴方の方がよほど曲者ですよ?」
言いつつ、一歩、また一歩と前へ歩み出る。
まずは相手を油断させるところからスタート。
そしてアルカティーナの思惑通り、門番の男は狼狽していた。
まさか騎士達の後ろから可憐な少女が現れるとは夢にも思わなかったのだ。
そして、男の狼狽の理由はそれだけには止まらなかった。
「なっ……!あ、貴方は…!!」
世間で「絶世の美少女」と名高いアルカティーナ・フォン・クレディリアーーーもといラグドーナの未来の婚約者(自称)の特徴と、目の前の少女の特徴がピタリと一致していたのだ。
未来の婚約者となれば傷つける訳にはいかない。
男は大人しく剣を下へと降ろした。
そして、それを見届けてからアルカティーナは男に見事なカーテシーを披露した。
その際、背後にいる従者に意味深に目配せをするのも忘れずに。
「わたくし、アルカティーナ・フォン・クレディリアと申しますわ。急ぎラグドーナ様にお伝えください。『貴方との縁談を受理致します』と」
男は大きく目を見開くと、慌てて深々と頭を下げた。
「!!は、はい!わかりました。直ぐに伝えて参ります!大変失礼致しました!!ごめんなさい!」
そうして彼はアルカティーナ達に背を向けて駆け出す。
アルカティーナの紡いだ、小さな一言にすらも気がつかないまま…。
「こちらこそ、ごめんなさいね?」
そしてアルカティーナは間髪入れずに従者の名を鋭く呼ぶ。
「ゼン」
同時に、アルカティーナの横をゼンが走り去る。
去り際に一言「了解」と残して。
それからはあっという間だった。
「!?…っっ!ぅ、」
すぐさま門番に追いついたゼンが、男を剣でなぎ倒したのだ。
もちろん剣は抜刀していないままだったので致命傷はひとつもないが、頭に強い打撃を受けたために男は意識を失いその場に崩れ落ちた。
足元の男を上手く避けながらゼンは門の方を振り返る。
「これで良いのか、お嬢?」
それに答える少女の笑顔は満足げ。
「はい勿論!さっすがゼンです!」
たった一度の目配せで互いの心を読み取ることが出来るほどに、2人の絆は深まっていた。
数ヶ月間ほぼ四六時中共に時間を過ごしてきた最強コンビのなせる技は常人に見抜けるものではなかったらしい。
こうして、アルカティーナ一行は母屋へと侵入したのである。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
またまた次回予告なるものをば……!
次回、アルカティーナちゃんの見せ場再び!
というかしばらくティーナのターンです。多分。
てか。書いてから思いましたが、これちゃんと見せ場になってます?なってない気が……うん、考えない考えない!はい考えないぃぃ!
そしてジョソーさん呼びが定着しつつある主人公。
ヤメタゲテ……!
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