聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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出会い編

何気に失礼!

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 母屋へ向かう道中、アルカティーナ一行は意外にも賑やかだった。
ゼンは久しぶりに仲間に会って会話が弾んでいたし、アルカティーナとてゼンに混ざって会話に参加していた。

 「いやいやいや、それにしてもさっすが聖女候補様です!」

 「自分あんなの初めて見ましたよ!」

 「本当にすごかった!あんなこともできるんだなぁ」

 「よかったなーゼン。こんな方の護衛できて」

 「…まぁな」

 「なんだよ~素っ気ないなぁ!お前もうちょっと愛想よくしろよー。ねぇ?アルカティーナ様もそう思いません?」

 「え?はい。いいえ…ええと、はい」

 「「「「いや、どっちだよ」」」」

 騎士様からの鋭いツッコミをいただきました、アルカティーナでございます。
 ただいま何故か話題が急転し、わたくしは褒め称えられております。
何故??
いえ、本当のことを言うと何故なのかはわかっています。
わたくしが『ドレスで母屋まで歩くのはしんどいですよね』という怠惰っぷりを披露した挙句、風の精霊さんの力を借りて、騎士様方もろとも母屋近くの路地裏まで瞬間移動なるものをしたからですよね。
 聖女候補というものは便利なもので、聖霊さんの力を借りる…というか代用することができます。
わたくしはそれを行使したわけです。
不純な動機でごめんなさい。
そして騎士様方。わたくしを褒め称えるのはやめてください!
大体なんでそんなオーバーリアクションが返ってくるのですか!?やめて!何故天に祈りを捧げるのですか!!あと、わたくしにお供え物をしないでください!死んでませんから!生きてますから!!

 心の中で悲鳴を上げていると、横からぼそりと呟き声が聞こえてきました。

 「…お嬢って、本当に聖女候補だったんだなぁ」

 「あの、それどういう意味ですか」

 ここにはもう親しい人しかいないから、と丁寧口調をやめてしまったゼンにわたくしは溜息をつきます。

 「だってお嬢が聖女候補って言われてもイマイチぴんと来ないんだよな」

 「何気に失礼!」

 「いや、だってお嬢が聖霊と一緒にいるところなんて見たことないし。仕方ないだろ」

 言われてみれば、とアルカティーナはここ数ヶ月のことを振り返る。

 ゼンが来てからというものの、聖霊さんを呼び出すどころか聖歌を歌ってすらいません。
何故って、忙しくなったからです。
一年後にリリアム学園への入学を控えているためか、お母様のレッスンは厳しくなりましたし、課題も倍以上に増えました。
デビューしたことによって前まではなかったお茶会や夜会へのお誘いもあります。
本当に前とは比べようもないほど忙しくなったのです。

 「と言う訳で、聖霊さんと戯れる機会がなかったのですよ」

 「超大規模ドミノを作る暇はあるのになぁー」

 「む!あれも勉学の一貫なのですよ」

 「何の」

 「精神統一」

 「あぁ、なるほどな?」

 ゼンは妙に納得のいった表情になった。
それもそのはずだろう。
アルカティーナの作るドミノは、もはや芸術品と言っても過言ではないほどに複雑で大規模なものだ。
それをひとつひとつ倒さないように並べて立てていく作業は、並大抵の集中力で出来るものではない。
 しかしアルカティーナはなんて事無いとばかりにそれを作り上げてしまうのだ。
そして、少しくらい完成の余韻に浸ればいいものをすぐさまそれをドミノ倒しにしてしまう。
それも、『とうっ!』という謎の掛け声とともに。
 本人曰くドミノがパタパタと倒れていくのを見るのが類を見ないほど楽しいのだとか。
我が主人ながら変人だ、とゼンは思う。

 「そんな話をしていたら急にドミノを倒したくなってきました…!最近してなかった反動かもしれません」

 「いや、つい一昨日作ってたよな」

 アルカティーナはしばらくの沈黙の後…

 「あぁ、本当にドミノが恋しくなってきました!」

またドミノに想いを寄せ始めた。ゼンのツッコミはなかったことにしたいらしい。

 「あ、無視?おーい、お嬢ー?」

 声をかけるゼンのことは目にも入らないと言った様子で、アルカティーナは『とうっ!』の時の構えである人差し指で空中をつんつんとつつき始めた。

 「パタパタしたいです。今すぐドミノ倒したいです」

 いつから自分はこんなにドミノ好きになっていたのでしょうか。

アルカティーナは自分で自分を不思議に思う。

 ゼンが「はいはい、帰ったらな」と頭を撫でてきましたが、何だか子供扱いされてません?
 わたくし、もう12なんですけど…。
あと、前世を含めたら31なんですけど。
おばさんなんですけど…(泣)!

 まぁ、そんなことを言えるはずもなく。
わたくし達はそれからも無駄口を叩きながら真っ直ぐ母屋へと向かって行きました。

 そして、そうこうしている間に目的地に到着してしまいました。


 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

ちょっと更新おくれましたーー!
ごめんなさい。ちょっと忙しかったんです。
あ、何処かの誰かさんみたいに巨大ドミノ作って遊んでた訳では無いですよ!

ちなみに次回予告をしてみると、次回はアルカティーナとゼンの見せ場?です。

 ではでは。
 
 
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