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番外編
クリスマスSS①
しおりを挟む「♪ジングルベールジングルベールなんちゃらか~んちゃら~~」
あやふやな歌詞のクリスマスソングを歌いながら空中をパタパタ飛び回る天使ナビに、女神はイヤホンを片耳だけ外すと言った。
「ちょっとナビ、今大切な時なんだから静かにして頂戴よね!」
「大切な時って、何が?」
「今からクリスマス限定ガチャ引くのよ」
「ふ~ん。それって、大切?」
「はぁ?大切に決まってるでしょ!今年のクリスマス実装キャラは私の推しなのよ。見てこれ天使じゃない?私の推しのミュトスたん!超可愛い!天使!」
「僕も天使だよ?」
純粋無垢なナビは、首をきょとんと傾げた。
ナビに純粋な瞳と疑問を向けられた女神は、スマホを片手にあぐらをかいたままボソリと呟いた。
「これだから非オタは」
ナビが純粋無垢な性格でなければ、逆に女神が『これだからオタクは』と呟かれていたことだろう。
◇ ◆ ◇
「来い、SSR!!!星5!!!」
そんな叫び声と共に女神はスマホ画面に表示されてた『10連召喚』のボタンをタップした。
10連目。
「ちっ…星4はいらないのよ!」
20連目。
「また星5ゼロ!?何これ!」
30連目。
「星5出たと思ったらコイツ、私のミュトスたんを闇討ちしようとした馬鹿野郎じゃない!許さない!お前なんて…お前なんて、売却してやる!」
40連目。
「……え、何これ。本当にクリスマスガチャ?」
50連目。
「…………………………………………」
女神は、執念深かった。
クリスマスイベントのために貯め続けていた召喚石を全て消費した。
だが、結果は散々だった。
「ぬああああぁぁぁぁおええええ!!!!バク死したぁ!ナビいいぃぃ!うわーーーーん!」
絶叫しながら女神に抱きつかれたナビは、状況が全く把握できずにいた。
『ばくし』って、何のことだろう。
でも、女神様が悲しんでる。
ここは僕が慰めてあげなきゃだよね!
ナビは女神を励まそうと声をかけた。
「め…女神様。あのね、僕、ゲームのことはよくわかんないけど、大丈夫だよ!きっとチャンスはまだまだあるよ!これからだよ!」
「な……な、ナビちゅわぁぁぁーーーん!なんて良い子なのおおおおお!!うわーーーーん!」
どっどどどどうしよう!
泣き止んで欲しかったのに、酷くなっちゃった…。
何とかして女神様に笑顔になってほしい…!
純粋無垢なナビは、大好きな上司の優しい笑顔のために再び励ましの言葉をかけた。
「チャンスの女神には、前髪しかないんだって!だからね?泣かないで、女神様。もっと頑張ってチャンスを掴みとろうよ!ね?」
その言葉に、女神は泣き止んだ。
「そう…か。そうよね………。何を泣いていたのかしら。何も泣く必要なんて無いじゃない。諦めたらそこで試合終了よ!」
女神は涙で濡れた目元をぐいっと拭うと、ふらふらと怪しげに立ち上がった。
女神から普通じゃない雰囲気を感じ取ったナビは、不安になった。
泣き止んでは貰えたけど、何だか様子が変だなぁ。
何か変なものでも食べたのかな。
すると女神は、床に落としていたスマホを乱暴に手に取ると突然叫んだ。
「見てなさい…この私を……女神様を敵に回したことを、後悔させてあげるわ!ふはははははは!!」
女神は笑った。
これでもかというくらい、嗤った。
ナビは女神様の笑顔を見たかったはずなのに、その笑顔から目を背けた。見ていられなかったのだ。
これ、僕が思ってた笑顔じゃない。
でもま、いっか!
女神様、何だか楽しそうだしね!
「さあナビ!課金よ課金!」
「かきん?なぁに、それ」
「課金っていうのはねぇ、夢と希望に満ち溢れた素晴らしくも輝やかしいものよ!」
「へえ、そうなんだ!僕、課金っていうのやってみたい!」
「そうでしょう、そうでしょう!うふっうっふふふふふふふふふふふふふふ…………」
神の住まう世界には、女神様のストッパーはいないようです。
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