5 / 165
番外編
クリスマスSS①
しおりを挟む「♪ジングルベールジングルベールなんちゃらか~んちゃら~~」
あやふやな歌詞のクリスマスソングを歌いながら空中をパタパタ飛び回る天使ナビに、女神はイヤホンを片耳だけ外すと言った。
「ちょっとナビ、今大切な時なんだから静かにして頂戴よね!」
「大切な時って、何が?」
「今からクリスマス限定ガチャ引くのよ」
「ふ~ん。それって、大切?」
「はぁ?大切に決まってるでしょ!今年のクリスマス実装キャラは私の推しなのよ。見てこれ天使じゃない?私の推しのミュトスたん!超可愛い!天使!」
「僕も天使だよ?」
純粋無垢なナビは、首をきょとんと傾げた。
ナビに純粋な瞳と疑問を向けられた女神は、スマホを片手にあぐらをかいたままボソリと呟いた。
「これだから非オタは」
ナビが純粋無垢な性格でなければ、逆に女神が『これだからオタクは』と呟かれていたことだろう。
◇ ◆ ◇
「来い、SSR!!!星5!!!」
そんな叫び声と共に女神はスマホ画面に表示されてた『10連召喚』のボタンをタップした。
10連目。
「ちっ…星4はいらないのよ!」
20連目。
「また星5ゼロ!?何これ!」
30連目。
「星5出たと思ったらコイツ、私のミュトスたんを闇討ちしようとした馬鹿野郎じゃない!許さない!お前なんて…お前なんて、売却してやる!」
40連目。
「……え、何これ。本当にクリスマスガチャ?」
50連目。
「…………………………………………」
女神は、執念深かった。
クリスマスイベントのために貯め続けていた召喚石を全て消費した。
だが、結果は散々だった。
「ぬああああぁぁぁぁおええええ!!!!バク死したぁ!ナビいいぃぃ!うわーーーーん!」
絶叫しながら女神に抱きつかれたナビは、状況が全く把握できずにいた。
『ばくし』って、何のことだろう。
でも、女神様が悲しんでる。
ここは僕が慰めてあげなきゃだよね!
ナビは女神を励まそうと声をかけた。
「め…女神様。あのね、僕、ゲームのことはよくわかんないけど、大丈夫だよ!きっとチャンスはまだまだあるよ!これからだよ!」
「な……な、ナビちゅわぁぁぁーーーん!なんて良い子なのおおおおお!!うわーーーーん!」
どっどどどどうしよう!
泣き止んで欲しかったのに、酷くなっちゃった…。
何とかして女神様に笑顔になってほしい…!
純粋無垢なナビは、大好きな上司の優しい笑顔のために再び励ましの言葉をかけた。
「チャンスの女神には、前髪しかないんだって!だからね?泣かないで、女神様。もっと頑張ってチャンスを掴みとろうよ!ね?」
その言葉に、女神は泣き止んだ。
「そう…か。そうよね………。何を泣いていたのかしら。何も泣く必要なんて無いじゃない。諦めたらそこで試合終了よ!」
女神は涙で濡れた目元をぐいっと拭うと、ふらふらと怪しげに立ち上がった。
女神から普通じゃない雰囲気を感じ取ったナビは、不安になった。
泣き止んでは貰えたけど、何だか様子が変だなぁ。
何か変なものでも食べたのかな。
すると女神は、床に落としていたスマホを乱暴に手に取ると突然叫んだ。
「見てなさい…この私を……女神様を敵に回したことを、後悔させてあげるわ!ふはははははは!!」
女神は笑った。
これでもかというくらい、嗤った。
ナビは女神様の笑顔を見たかったはずなのに、その笑顔から目を背けた。見ていられなかったのだ。
これ、僕が思ってた笑顔じゃない。
でもま、いっか!
女神様、何だか楽しそうだしね!
「さあナビ!課金よ課金!」
「かきん?なぁに、それ」
「課金っていうのはねぇ、夢と希望に満ち溢れた素晴らしくも輝やかしいものよ!」
「へえ、そうなんだ!僕、課金っていうのやってみたい!」
「そうでしょう、そうでしょう!うふっうっふふふふふふふふふふふふふふ…………」
神の住まう世界には、女神様のストッパーはいないようです。
0
あなたにおすすめの小説
『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
【完結】前提が間違っています
蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった
【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた
【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた
彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語
※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。
ご注意ください
読んでくださって誠に有難うございます。
悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。
香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。
皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。
さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。
しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。
それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?
愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました
由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。
尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。
けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。
そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。
再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。
一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。
“尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。
静かに離婚しただけなのに、
なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。
ヒロインだと言われましたが、人違いです!
みおな
恋愛
目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。
って、ベタすぎなので勘弁してください。
しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。
私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢の心変わり
ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。
7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。
そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス!
カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!
所(世界)変われば品(常識)変わる
章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。
それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。
予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう?
ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。
完結まで予約投稿済み。
全21話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる