聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

文字の大きさ
113 / 165
学園編

試験を始めてください!

しおりを挟む


 アルカティーナが案内された座席に座ると、近くの席の新入生達がやたらざわつき始めた。

 「きゃー!ラッキー」

 「こんな近くで見るの初めてかも」

 「麗しい……」
 
 ゼンの席は、学園側も配慮してくれたのか隣だったので、ざわつきの原因はやはりゼンの容姿に違いないとアルカティーナはまたもや盛大な勘違いをする。
だが、そんなざわついた周囲よりもっとアルカティーナの気を引く者が現れた。

 ヒロインである。

 肩下で切り揃えられたブロンドヘアーを揺らしながら、ヒロインーーロゼリーナ・アゼル伯爵令嬢は講堂へと入ってきた。
途端に新たな騒めきが起こる。

 「あの方、見たことがあるわ。確か彼女も聖女候補よ」

 「アルカティーナ様と同じか…」

 後ろの席から聞こえてきた『聖女候補』という単語にアルカティーナはピクリと反応した。見ると、ヒロインはとても可愛らしい少女だった。大きな瞳は黄緑色で、ブロンドヘアーもサラサラで、一言で言えば庇護欲を駆り立てるような容姿だ。
流石はヒロイン様ですねとばかりにアルカティーナは薄っすら微笑んだ。いつもとは異なるその笑顔に、ゼンは不安げに眉をひそめる。

 「お嬢様、どうかなさいましたか?」

 アルカティーナはふるふるとゆっくり首を振って答えた。

 「いえ。大丈夫、何でもありません」


 ◇ ◆ ◇


 入学式も無事終わり、アルカティーナ達は教師の引率のもと、試験会場となる教室へと向かっていた。
ぞろぞろと列をなして歩く中で、アルカティーナはこっそりとため息をついた。そのため息には勿論、理由がある。

 入学式とは言っても、今日行われるのは正式なものではない。ただ学園長が新入生達に精進するようにとの言葉と祝福の言葉を告げる場であった。だから、よくある定番の『新入生代表の挨拶』だとか『在校生代表の挨拶』だとかをするのは後日となるのだが…。

 さて。ここで一つ問題があった。
アルカティーナは出来ることなら『新入生代表』にはなりなくないのだ。出来るだけ目立ちたくないし、生徒達に反感を持たれるきっかけとなる機会をできるだけ減らしたい。

『新入生代表』には入学式の後にとり行われるクラス分け試験の結果でトップにだった生徒が自動的に選ばれる。
つまり、アルカティーナの今の目的は一つ。

試験で一位にならないこと、である。
何を馬鹿なことを言っているのかと言われそうだが、アルカティーナは必死だった。
 自意識過剰かも知れないが、前世からずっと勉強だけは出来た。
だから、アルカティーナの上を行く人物が新入生の中にいるのか、いないのかだけが問題なわけで。

 「………はぁ」

 再び、ため息をつく。
手を抜いて首席を逃れればいいだけの話なのだが、そんなことをするわけにはいかない。
腐ってもアルカティーナは公爵令嬢なのだ。
公爵家に恥じない結果を出す必要もある。手を抜くことは許されない。

 ……希望は、ゼンくらいですかねぇ。

 ゼンは完璧主義者だし、何でもそつなくこなしてしまうし、一番期待出来そうなのは、やはりゼンだ。
悩んでいる間に、アルカティーナ達は教室に到着した。教室ひとつでも、やはりゲームの世界は流石というか何というか…ひとことで言うと、超ゴージャスな教室だった。

 教室に着いてもまだ不安は残る。残るどころか、どんどん増しているような気もする。

 「それではみなさん、準備はよろしいですか?では、試験を始めてください!」

 教壇の上で、試験監督の教師がそう言い放つと同時に、配られたテスト用紙を表にかえしてザッと問題をみる。

 …………いけますね。

 科目は、英数国理社の5科目。
流石にわたくしが満点を取れるとは思いませんし。

 でも、このくらいの難易度なら満点も一人くらい出るでしょうし、わたくしの心配も杞憂に終わりそうですね。

 アルカティーナは安心したようにほっと息を吐くと、問題に取り掛かった。


 
 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 アルカティーナの心の中のセリフで、最後にこんなのが出てきましたよね。

『 …………いけますね。』

 人はこれを、フラグと呼ぶのです。
さて、嫌な予感しかしません!笑!

 
しおりを挟む
感想 124

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

【完結】前提が間違っています

蛇姫
恋愛
【転生悪役令嬢】は乙女ゲームをしたことがなかった 【転生ヒロイン】は乙女ゲームと同じ世界だと思っていた 【転生辺境伯爵令嬢】は乙女ゲームを熟知していた 彼女たちそれぞれの視点で紡ぐ物語 ※不定期更新です。長編になりそうな予感しかしないので念の為に変更いたしました。【完結】と明記されない限り気が付けば増えています。尚、話の内容が気に入らないと何度でも書き直す悪癖がございます。 ご注意ください 読んでくださって誠に有難うございます。

悪役令嬢だとわかったので身を引こうとしたところ、何故か溺愛されました。

香取鞠里
恋愛
公爵令嬢のマリエッタは、皇太子妃候補として育てられてきた。 皇太子殿下との仲はまずまずだったが、ある日、伝説の女神として現れたサクラに皇太子妃の座を奪われてしまう。 さらには、サクラの陰謀により、マリエッタは反逆罪により国外追放されて、のたれ死んでしまう。 しかし、死んだと思っていたのに、気づけばサクラが現れる二年前の16歳のある日の朝に戻っていた。 それは避けなければと別の行き方を探るが、なぜか殿下に一度目の人生の時以上に溺愛されてしまい……!?

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

ヒロインだと言われましたが、人違いです!

みおな
恋愛
 目が覚めたら、そこは乙女ゲームの世界でした。  って、ベタすぎなので勘弁してください。  しかも悪役令嬢にざまあされる運命のヒロインとかって、冗談じゃありません。  私はヒロインでも悪役令嬢でもありません。ですから、関わらないで下さい。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

悪役令嬢の心変わり

ナナスケ
恋愛
不慮の事故によって20代で命を落としてしまった雨月 夕は乙女ゲーム[聖女の涙]の悪役令嬢に転生してしまっていた。 7歳の誕生日10日前に前世の記憶を取り戻した夕は悪役令嬢、ダリア・クロウリーとして最悪の結末 処刑エンドを回避すべく手始めに婚約者の第2王子との婚約を破棄。 そして、処刑エンドに繋がりそうなルートを回避すべく奮闘する勘違いラブロマンス! カッコイイ系主人公が男社会と自分に仇なす者たちを斬るっ!

所(世界)変われば品(常識)変わる

章槻雅希
恋愛
前世の記憶を持って転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢。王太子の婚約者であり、ヒロインが彼のルートでハッピーエンドを迎えれば身の破滅が待っている。修道院送りという名の道中での襲撃暗殺END。 それを避けるために周囲の環境を整え家族と婚約者とその家族という理解者も得ていよいよゲームスタート。 予想通り、ヒロインも転生者だった。しかもお花畑乙女ゲーム脳。でも地頭は悪くなさそう? ならば、ヒロインに現実を突きつけましょう。思い込みを矯正すれば多分有能な女官になれそうですし。 完結まで予約投稿済み。 全21話。

処理中です...