聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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学園編

ロゼリーナの心境変化

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 ロゼリーナ・アゼルは驚愕していた。口をポカンと開けたまま、しばらく動くことができなかった。
彼女の視線の先にあるのは掲示板。
クラス分け試験の結果を貼り出した、掲示板である。

 ーーAクラス?この私が、Aクラスですって!?

 
 おかしい。
何かの間違いだと思いたいけれど、結果は結果だ。
でも、わからない。どうしてヒロインたる私がAクラスになっているの?

 ゲームでは、ロゼリーナはSクラスの生徒として入学していたはず。それがどうだろう。
ゲーム補正もかかることなく、ロゼリーナは無様にもAクラスになってしまった。

悔しい。
前世の記憶だってあるし、そうでなくても勉強には自信があったのに…。それなのにAクラスだなんて!

 悔しがっているロゼリーナの耳に、同じく結果を見にやってきた新入生達の会話が飛び込んできた。

 「やっぱり首席はアルカティーナ様かぁ~~」

 「勉強もできるなんて流石だわ!!」

 …アルカティーナ・フォン・クレディリア。
その単語に、ロゼリーナは思わず眉を顰めた。
彼女も多分転生者だろうし、出来ることなら手を組みたい。それに、皆んなからここまで慕われているのだから、まあいい人なんだろう。
でも……やっぱり悔しい。
勉強には自信があったのに。
…というか、Sクラスのレベルが高すぎるのではないかと思えてきた。
私の点数は400点中365点で、9割超えの点数だ。
それでAクラスって、どうよ?
まあ、Aクラスでは私がトップなんだけどね。

 でも、そのすぐ後にロゼリーナはさらに眉を顰めることとなった。
ロゼリーナが、掲示板の一番上…一位のアルカティーナの表示から下へと視線を移していた時のことだ。

 「リサーシャ・キリリア…んーどっかで聞いたことある名前ね。リサーシャ…リサ…リサーシャあ!?」

 危ない危ない、思わず叫んでしまった。
周りから物凄い視線を感じたから、なんとか笑顔で誤魔化しておく。だが、内心ではそれどころではなかった。

 ーーリサーシャ・キリリアが、どうしてSクラスになってるのよ…!?

 リサーシャは、悪役と呼ばれるポジションにいるキャラクターだった。3人いる悪役の中で順位をつけるとしたら、彼女はNo.3ーー1番下だ。
そもそも、彼女は悪役というよりもヒロインの仲間であるという印象の方が強い。
まず、リサーシャというキャラは設定だった。所謂、ホモップルとかカップリングが大好きなキャラである。そんな彼女は、学園の美男子から好意を寄せられるヒロインが許せなかったらしく、嫌がらせ…というよりも邪魔をしてくる。
だが、彼女は物分かりのいい性格で、ヒロインと和解してからは乙女ゲームによく出てくる、サポートキャラというポジションにジョブチェンジする。
だから、悪役というより仲間だと認識されていた。
そもそも、邪魔をしてくる理由が実にしょうもないので、ファンの間では最早『公式も認めるネタキャラ』とまで言われていた。
 初めて敵意を向けられた時の、『私はあなたといちゃつくイケメンを見たいんじゃない!イケメンがイケメンとキャッキャウフフするところを見たいのよっ!』というセリフは今でも忘れられない。

そんなネタキャラが、ゲームではSクラスだったか?
答えは否。
詳しくは覚えていないけれど、少なくともSクラスではなかった。たしかAかBだったはず。
それがどうしてSクラス、しかも5位なんていう上位にいるの??
あ、わかった。彼女もさては転生者ね?
なら話は早い。
相手の方も、自分の立ち位置は分かっているはず。
だったら、ゲーム序盤から早速サポートキャラに転じてもらうことができるかもしれない。
あとはアルカティーナがどうでるかだ。
そして、もう一人の悪役ーーユーリア・ルゼスタ。
彼女もアルカティーナとまではならずとも、結構鬱陶しい悪役だったから、用心しておかないと。


 ◇ ◆ ◇


 一週間後。
私はこの世界の『ゲーム補正』の存在を思い知ることになった。

 「何これ……」

 後ろから聞こえてきた小さな小さな声に、反射的に顔を上げると…。

 「う…わ……」

 風に吹かれながら、ひらひらと舞うピンクの花びら。

ーー綺麗。

 この光景には見覚えがある。
ゲームのオープニングで流れるムービーとそっくりだから、きっとそのシーンだと思う。
こんなところまで再現してくるなんて流石ゲーム。
というか、これは多分ゲーム補正ってやつね。
この花びら、明らかに風で飛んできましたって感じじゃないもの。

ーーそれにしても綺麗だわ。

 ぼんやりしていると、急に視界が真っ黒に染まった。
いや、違う。真っ黒な花びらが、ひらひらと目の前を通り過ぎたのだ。キャラによって、舞う花びらの色が異なっていたから、これは私ではない別のキャラの花びらということになる。
黒は確か…アルカティーナ!!

 バッと後ろを振り返ると、美少女とその後ろに控える美青年が立っていた。
この世界に来て初めて目にしたアルカティーナの姿は、ゲームよりも遥かに可愛かった。
キラキラの陽に照らされて輝く金髪は毛先がクルクルとカールしていて、同色の長い睫毛に縁取られた瞳は桜で染め抜いたみたいな綺麗なピンク。ほっぺたは何もしていなくても桃色に染まっていて、全体的に小柄で可愛らしい美少女だ。

 ーーうわ、生アルカティーナやば…。

 思わずゴクリと喉がなったのは仕方ないと思う。
見ると、周りの人たちも皆んな彼女をチラチラ見てるし、私だけじゃない。皆んなそうなのだ。

 ぼやっとしていると、目の前を金色のふわふわが通り過ぎていった。
靡く髪の毛から物凄くいい香りがした。
何あれ。ちょーかわいい。

 そして、それに続くようにして通り過ぎたのは、アルカティーナとは正反対の色を持つ青年。
艶めく闇色の髪に、海のような穏やかな青の瞳。
細身でありながら洗練された体躯。

 ドクリ、と音がした。

 目の前を通り過ぎてゆく彼から、目が離せない。
通り過ぎた後も、ロゼリーナは暫く立ちすくんでいた。
彼の後ろ姿を、ただただ見つめて。

 心臓が、煩い。
何これ、何これ、何なの…?

 この気持ちは…この、温かい気持ちは…

 一体、何??




 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ヒロイン様がAクラスになったのは、本来ならBクラスだったはずのリサーシャがSクラスになったからです。こんなところでもリサーシャは邪魔をしてくるんですねぇ。あはは。流石変態(←あまり関係ない)

 さて、皆様お忘れでしょうか。
この小説のジャンルは『恋愛』です。
 『ファンタジー』ではないのです。
信じられない方は見てみてくださいw

 
 
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