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学園編
『覚えるべきではない異世界語 〜変態編〜』
しおりを挟む「ねぇ、最近ルデア様が私に『私がロリコンではないと言ったら信じてくれるかい?』って聞いてきたんだけど、二人とも何か言った?別に二人を疑ってるわけじゃないけどねっ」
ガチャッ!
カフェテリアでの優雅なひと時。
コーヒー派か紅茶派かと問われれば断然紅茶派のアルカティーナが選んだのはダージリン。その香り高い紅茶は、口に運ばれることはなく、テーブルクロスに僅かではあるが染みを作った。
「ちょ、ティーナったら大丈夫?」
「どうしたの、ぼーっとして」
慌てて傾いたティーカップを元に戻すと、二人とも心配そうにこちらを見つめてくる。
「すみません、大丈夫です。それよりもそのスクレリズ先生の件、わたくしのせいかもしれません」
それは先日の話。
わたくしは例のあだ名を先生に言ってしまったのです。先生に元気を出してもらいたくて、つい。
「え!?ティーナなの?リサーシャじゃなくて?99.9999%リサーシャだと思ってたわ!あ、別に疑ってた訳じゃないけど!!」
アメルダの言葉にリサーシャはショックを受けたようだ。「私ってそんなにトラブルメーカーポジションなの!?」とアメルダを揺さぶり始めた。
「先日、先生があだ名は良いものだと仰っていたので、先生にもあだ名があるのだということを伝えたくて言ってしまったんです。一部の生徒から『変態ロリコン教師』と呼ばれている、と」
その瞬間、アメルダをガクガク揺さぶっていたリサーシャが物凄い勢いでこちらを振り返った。アメルダの肩を掴んだまま、目を見開いた状態でこちらを見つめてくる。
……凄く怖いのですが、その表情。
「え?マジで?」
「はいマジです」
「本人に『変態ロリコン教師』って言ったの?」
「はい」
「一部の生徒からそう呼ばれてるって?」
「はい」
「それ、一部じゃなくて私だけだけどね」
「まぁ、正確にはそうですね」
リサーシャは項垂れ、「そっかぁ、そうなんだ」とぶつぶつ呟いてから顔を上げた。
その表情は暗いかと思いきや、清々しいほどに明るかった。
「あははははははははははははははは!!!ざまぁ!ざまぁ見ろ!可愛いアメルダを取るから痛い目見るのよバーカ!ふはははは!」
そして遂には高笑いを始めたリサーシャ。
こうして見ると、流石は『悪役令嬢』というか何というか………。
同じ『悪役令嬢』としては少し複雑な気分ですね。
でも、『変態ロリコン教師』と言われたのってそんなに『痛い目』見てますかね?
確かに『変態』は良くないと思いますけど。
まぁリサーシャが嬉しそうなので良しとしましょう。
アルカティーナは気を取り直し、リサーシャに掴まれたままのアメルダに向き合った。
「すみませんアメルダ、わたくしのせいでスクレリズ先生が困っていらしたのでしょう?」
アメルダはぶんぶんと首が千切れんばかりに首を振った。
「違うの!違うのよ!私が言いたかったのはそういうことじゃなくてね?先生、『ロリコン』っていう単語がわからなくてずっと色んな書物を読んで調べていたらしいの。それでね、最近ようやく見つけたんですって」
「見つけたの!?うわぁ、本当にザマァ見ろ!思いきり傷つけばいいわ!」
心底可笑しそうに笑い転げるリサーシャはしかし、ふと思った。
『ロリコン』はこの世界からすると異世界の言葉だ。それが、どうしてこの世界の書物に載っているのか。
嫌な予感がして、リサーシャは同士アルカティーナにヘルプの視線を送ったが、相手はアルカティーナと言う名の天然である。
彼女はリサーシャのヘルプに気がつくことは一切なく、呑気にテーブルクロスの染み抜きをカフェテリアの店長に申し出ていた。
因みにその店長はアルカティーナを見るなり床にひれ伏し、「いえ、そんな雑用を貴方様に押し付けるなど………末代までの恥です!」とアルカティーナの申し出を断っていたが。
「それでね、リサーシャ。私、貴方に聞きたいことがあるんだけど」
言いつつ、リサーシャが取り出したのは一冊の本。その表紙には『覚えるべきではない異世界語 ~変態編~』とあった。
リサーシャは息を飲む。
「中身は見てないけど、ルデア様が言ってたの。『ロリコン』って言う言葉はこの本に載っていたって」
「そう…なんだ。へーぇ…」
声が震えて止まらない。
体が震えて止まらない。
リサーシャはもう一度ヘルプを出したが、アルカティーナは気がつかない。
「ねぇリサーシャ。どうしてリサーシャが、ルデア様でも知らなかったような単語を知ってるの?それも異世界語なんて」
もうダメだ。誤魔化しきれない!
転生者であると言うことは、アメルダには隠し通そうと思っていた。
けれどもう、ダメだ。
覚悟を決めかけたその時。
リサーシャの頭に名案が浮かび上がった。
この場を上手く誤魔化す、名案が。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回。
リサーシャ、暴走します。
いつものことだけどね。
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