131 / 165
学園編
ロゼリーナの暴露
しおりを挟む「……ふぇ?」
目の前の美少女が間抜けな声を出したことで、ロゼリーナの口元は笑みを浮かべた。
この子はきっと、正直なのだろう。
『どうしようバレちゃった、どうやってごまかそう!』と顔に書いてある。わかりやすくて結構、結構!
「隠さなくても大丈夫ですよ。私も転生者ですから」
取り敢えずまずは警戒を解かねば。
ふわりと花がほころぶように笑って見せると、アルカティーナは諦めたように眉を下げて微笑んだ。
「……わかりました。では正直にお話ししましょう。わたくしも、転生者です。でもどうして分かったのですか?」
ロゼリーナは思う。
直感だが、彼女は『聖霊のアネクドート』を知らずに転生したのだろうと。
あまりにもゲームでの『アルカティーナ』とは行動や発言などが違い過ぎるのだ。
「手っ取り早く言うと、ここは乙女ゲームの世界なんですね。それなのに貴方はゲームとは全然違うんです。表情とか、態度とか、他にも色々」
「あ~そういえば、そうでしたね。ゲームでは聖女候補ですらなかったんでしたっけ」
アルカティーナの言葉に、ロゼリーナは『ん?』と首を傾げる。
「あれ?ゲームのこと知ってたんですか?」
「知らなかったんですけど、親切な人が教えてくれたんです。貴方は悪役ですよ~って」
ロゼリーナは思わずぽかんと口を開けた。
「ええ……、アルカティーナ様って、度胸ありますね。普通、悪役だと分かっていたら派手な行動はしないでしょうに」
「?はい、ですから派手な行動は一切してませんよ??」
「は?」
「へ?」
互いに首を傾げ合うロゼリーナとアルカティーナ。両者とも、本心から相手が何を言っているのか飲み込めないでいた。
先に呪縛から解き放たれたのは、ロゼリーナだった。
「いやいやいやいや!聖女候補って時点で派手なんですけど!?」
一方のアルカティーナは、雷で撃たれたかのような鋭いショックを受けたらしく、悲痛な声を上げた。
「そんなっ…!わたくしはただ、聖霊さんとお友達になりたかっただけなんですよ!」
「お、お友達!?まさかアルカティーナ様って天然入ってます?入ってますよね!?大体!学校であれだけ目立っているのに、派手じゃないなんてよく言えましたね!」
「てっ天然?違いますっ!それにわたくし、目立ってなんかいませんよ!いつも普通に過ごしてますし!」
混乱のあまり瞳をぐるくるさせて叫ぶロゼリーナと、それに張り合うように言い返す膨れっ面のアルカティーナ。
正直、アルカティーナと言えばゲームでの印象が強すぎて、いまいちピンとこなかった。
だが、ゲームでは『勘違い系ヒロイン(仮)。下手を打てばヤンデレ化』な悪役だった彼女が、現実ではこんな腑抜けた少女に変わっているなんて誰が想像できるだろう。
ギャップが激しすぎて、本当に頭が追いつかない。
「むむむむ……。あ、でも。わたくしにそれを確認したと言うことは、何か目的があるんじゃないですか?」
「………それは、まぁそうなんですけど」
なんなの、この子。
腑抜けてる癖に以外に鋭い?
ロゼリーナは警戒しつつも、自分の『目的』をアルカティーナに告げた。
「私は前世で、このゲームのファンだったんです。ヒーロー達がもうカッコよくて、大好きだったんです。中でも飛び抜けて好きだったキャラがいたんですけど……」
「そうなんですね!それで、その『キャラ』は誰だったんです?ディール殿下ですか?ステファラルド様ですか?それとも……」
恋バナが好きなのだろうか。
アルカティーナが嬉々として尋ねてくる。
でもロゼリーナとしては、これはそんなに嬉しい話ではなかったりする。
何故ならそう、ロゼリーナはその『推しキャラ』の顔どころか名前すら思い出せないのだから。ゲームの世界に転生したはいいが、一番の推しを認識すら出来ないなんて、本当に辛すぎる。
「いえ、違います。私の推しキャラはディール殿下たちのようなメインヒーローではなくて、所謂『隠しキャラ』だったんです」
正直の述べると、アルカティーナは瞬きを繰り返し始めた。
「隠し……キャラ、ですか」
「はい、そうなんです。でも、何故か名前も顔も何もかも思い出せなくて…!でも、私はヒロインだから、出来るなら彼を見つけ出して、攻略したいんです!」
「そうなんですか。でも、攻略とは言っても、そんなに簡単に堕とせるものなんですか?手順とか色々…………」
心配そうに顔を歪めるアルカティーナに、ロゼリーナは自信満々の笑みを返す。
「そりゃあ、手順もいるでしょう。でも、私思うんです!私に墜とせない男はいないって!!だって私は…………」
『だって私はヒロインだから!』
そう言ったら、それはラノベとかでよく出てくる『勘違いヒロイン』だ。
最終的には『ザマァ』されるのがオチの。
でも、私は違う。
置かれた状況は同じでも、私は『勘違いヒロイン』にはならない。
それに、私には『ヒロイン』であるということ以上に自信のあるものがある。
それは……………………………
「だって私は、超絶美少女だから!!」
顔だ。
アルカティーナがポッカーーーンとしているような気がしないでもないけど、この際それはどうでもいい。
そんなことより、私って可愛いでしょ?
ふふふ、知ってるわ。
いかにも『ヒロイン』な容姿よね。
私は思うの。
私って、きっと世界一かわいいわ!!
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
どうも水瀬です。
てな訳で、ヒロイン様の『爆弾』がついに明らかになりましたね。
そうです。
彼女は『ナルシスト』です。
しかも、かなりの。
痛いですねぇ、辛いですねぇ。
ぷぷぷ………………………。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】ドアマットに気付かない系夫の謝罪は死んだ妻には届かない
堀 和三盆
恋愛
一年にわたる長期出張から戻ると、愛する妻のシェルタが帰らぬ人になっていた。流行病に罹ったらしく、感染を避けるためにと火葬をされて骨になった妻は墓の下。
信じられなかった。
母を責め使用人を責めて暴れ回って、僕は自らの身に降りかかった突然の不幸を嘆いた。まだ、結婚して3年もたっていないというのに……。
そんな中。僕は遺品の整理中に隠すようにして仕舞われていた妻の日記帳を見つけてしまう。愛する妻が最後に何を考えていたのかを知る手段になるかもしれない。そんな軽い気持ちで日記を開いて戦慄した。
日記には妻がこの家に嫁いでから病に倒れるまでの――母や使用人からの壮絶な嫌がらせの数々が綴られていたのだ。
悪役令嬢の慟哭
浜柔
ファンタジー
前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。
だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。
※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。
※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。
「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。
「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない
陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」
デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。
そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。
いつの間にかパトロンが大量発生していた。
ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?
断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます
山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。
でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。
それを証明すれば断罪回避できるはず。
幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。
チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。
処刑5秒前だから、今すぐに!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる