聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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学園編

ロゼリーナの暴露

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 「……ふぇ?」

 目の前の美少女が間抜けな声を出したことで、ロゼリーナの口元は笑みを浮かべた。
この子はきっと、正直なのだろう。
『どうしようバレちゃった、どうやってごまかそう!』と顔に書いてある。わかりやすくて結構、結構!

 「隠さなくても大丈夫ですよ。私も転生者ですから」

 取り敢えずまずは警戒を解かねば。
 ふわりと花がほころぶように笑って見せると、アルカティーナは諦めたように眉を下げて微笑んだ。

 「……わかりました。では正直にお話ししましょう。わたくしも、転生者です。でもどうして分かったのですか?」

 ロゼリーナは思う。
直感だが、彼女は『聖霊のアネクドート』を知らずに転生したのだろうと。
あまりにもゲームでの『アルカティーナ』とは行動や発言などが違い過ぎるのだ。

 「手っ取り早く言うと、ここは乙女ゲームの世界なんですね。それなのに貴方はゲームとは全然違うんです。表情とか、態度とか、他にも色々」

 「あ~そういえば、そうでしたね。ゲームでは聖女候補ですらなかったんでしたっけ」

 アルカティーナの言葉に、ロゼリーナは『ん?』と首を傾げる。

 「あれ?ゲームのこと知ってたんですか?」

 「知らなかったんですけど、親切な人が教えてくれたんです。貴方は悪役ですよ~って」

 ロゼリーナは思わずぽかんと口を開けた。

 「ええ……、アルカティーナ様って、度胸ありますね。普通、悪役だと分かっていたら派手な行動はしないでしょうに」

  「?はい、ですから派手な行動は一切してませんよ??」

 「は?」

 「へ?」

 互いに首を傾げ合うロゼリーナとアルカティーナ。両者とも、本心から相手が何を言っているのか飲み込めないでいた。
 先に呪縛から解き放たれたのは、ロゼリーナだった。

 「いやいやいやいや!聖女候補って時点で派手なんですけど!?」

 一方のアルカティーナは、雷で撃たれたかのような鋭いショックを受けたらしく、悲痛な声を上げた。

 「そんなっ…!わたくしはただ、聖霊さんとお友達になりたかっただけなんですよ!」

 「お、お友達!?まさかアルカティーナ様って天然入ってます?入ってますよね!?大体!学校であれだけ目立っているのに、派手じゃないなんてよく言えましたね!」 

 「てっ天然?違いますっ!それにわたくし、目立ってなんかいませんよ!いつも普通に過ごしてますし!」

 混乱のあまり瞳をぐるくるさせて叫ぶロゼリーナと、それに張り合うように言い返す膨れっ面のアルカティーナ。

 正直、アルカティーナと言えばゲームでの印象が強すぎて、いまいちピンとこなかった。
だが、ゲームでは『勘違い系ヒロイン(仮)。下手を打てばヤンデレ化』な悪役だった彼女が、現実ではこんな腑抜けた少女に変わっているなんて誰が想像できるだろう。
ギャップが激しすぎて、本当に頭が追いつかない。

  「むむむむ……。あ、でも。わたくしにそれを確認したと言うことは、何か目的があるんじゃないですか?」

  「………それは、まぁそうなんですけど」

 なんなの、この子。
腑抜けてる癖に以外に鋭い?

 ロゼリーナは警戒しつつも、自分の『目的』をアルカティーナに告げた。

 「私は前世で、このゲームのファンだったんです。ヒーロー達がもうカッコよくて、大好きだったんです。中でも飛び抜けて好きだったキャラがいたんですけど……」

 「そうなんですね!それで、その『キャラ』は誰だったんです?ディール殿下ですか?ステファラルド様ですか?それとも……」

 恋バナが好きなのだろうか。
アルカティーナが嬉々として尋ねてくる。
でもロゼリーナとしては、これはそんなに嬉しい話ではなかったりする。
何故ならそう、ロゼリーナはその『推しキャラ』の顔どころか名前すら思い出せないのだから。ゲームの世界に転生したはいいが、一番の推しを認識すら出来ないなんて、本当に辛すぎる。

 「いえ、違います。私の推しキャラはディール殿下たちのようなメインヒーローではなくて、所謂『隠しキャラ』だったんです」

 正直の述べると、アルカティーナは瞬きを繰り返し始めた。

 「隠し……キャラ、ですか」

 「はい、そうなんです。でも、何故か名前も顔も何もかも思い出せなくて…!でも、私はヒロインだから、出来るなら彼を見つけ出して、攻略したいんです!」

 「そうなんですか。でも、攻略とは言っても、そんなに簡単に堕とせるものなんですか?手順とか色々…………」

 心配そうに顔を歪めるアルカティーナに、ロゼリーナは自信満々の笑みを返す。

 「そりゃあ、手順もいるでしょう。でも、私思うんです!私に墜とせない男はいないって!!だって私は…………」

 
 『だって私はヒロインだから!』

 そう言ったら、それはラノベとかでよく出てくる『勘違いヒロイン』だ。
最終的には『ザマァ』されるのがオチの。

 でも、私は違う。
置かれた状況は同じでも、私は『勘違いヒロイン』にはならない。
それに、私には『ヒロイン』であるということ以上に自信のあるものがある。

  それは……………………………


 「だって私は、超絶美少女だから!!」


  顔だ。


 アルカティーナがポッカーーーンとしているような気がしないでもないけど、この際それはどうでもいい。

 そんなことより、私って可愛いでしょ?
ふふふ、知ってるわ。
いかにも『ヒロイン』な容姿よね。
私は思うの。
私って、きっと世界一かわいいわ!!

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 どうも水瀬です。
てな訳で、ヒロイン様の『爆弾』がついに明らかになりましたね。
そうです。
彼女は『ナルシスト』です。
しかも、かなりの。
痛いですねぇ、辛いですねぇ。
ぷぷぷ………………………。

 
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