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学園編
いいえ血迷ってません!
しおりを挟む生徒会のことと、学科のこと。
考える課題は山積みだった。
そして迷いに迷った結果、アルカティーナはゼンに相談することにした。何かと言ってアルカティーナと一緒にいる時間が一番長いのは彼だ。彼なら何か的確なアドバイスをくれるのではないかと思ったのだ。
生徒会のことはまあ、言ってしまえば個人の問題であるため相談しなかったが、学科については尋ねてみた。
「学科?俺はお嬢と同じにするぞ。護衛役だからな」
当然だとばかりに返されたその言葉に、アルカティーナは本気で驚いた。
「そうだったのですか…」
「まぁ本当はそこまでする必要は無いんだけどな。変な虫でもついたら面倒だし」
「あぁ…なるほど?」
虫の意味がわからず首を傾げたアルカティーナに、ゼンは苦笑を浮かべる。
「まぁ俺には構わずお嬢は好きな学科に…」
「わかりました!!」
「…え」
「わたくし、騎士科にいたします!」
ゼンは第一騎士団所属の誇り高き騎士様です。彼が行きたいのは騎士科以外にないはず!ならばわたくし、騎士科にします!!
意気込んで決意を言葉にしたアルカティーナに、聞き耳を立てていたギャラリーは騒ついた。
「嘘だろ…!?まさかの…」
「一番ありえないと思ってたのにー!」
「あ、先生。私騎士科に変更します」
「俺も!」
「僕も!」
学園設立以来、騎士科が人気ナンバーワンの学科になった初めての瞬間であった。
しかし、ゼンはこのアルカティーナの決意表明に焦りを露わにした。自分の失言のせいでアルカティーナに不本意なことを口走らせてしまったと本気で焦った。
「お嬢!血迷いすぎだ!」
「いいえ血迷ってません!」
「血迷ってる!俺のことを考えてくれてるのなら、頼むから自分の行きたいところに行ってくれ!」
「……むぅ。わかりました」
ぐうの音も出ない。
アルカティーナはショボくれながらも小さく頷いてみせた。ゼンはそれに安心して、アルカティーナの頭をポンポンと撫でたのだった。
「自分が何を勉強したいのか、ゆっくり考えてみたらどうだ?」
そんなことを優しい口調で言うと、彼はもう一度アルカティーナの頭を撫でた。
これは人に頼るべき案件ではないと判断し直したアルカティーナは、1人でゆっくり考えることにした。
「でも…行きたいところって言われましても」
無いものはどうしようもない。
アルカティーナは、考えた。
自分の行きたい学科はどこか。
前世では、こんな選択を強いられたことはなかった。気がつけば母親の選んだエリート校に進学していて、母親の選んだ大学の医学部に合格していて。選択の余地など与えられていなかったし、なかった。
そういう意味では、前の方が楽な人生だったのかもしれない。
ゼンに言われた言葉を、アルカティーナは繰り返し繰り返し思いだす。
『自分が何を勉強したいのか、ゆっくり考えてみたらどうだ?』
何を勉強したいのか。
そんなこと、考えたこともなかった。
引かれたレールの上を、脇目も振らず走っていただけの前世とは、わけが違う。
「学びたいこと…学びたいこと……」
ベッドに身を投げ出し、ブツブツと呟きながら考えに考えた結果。
アルカティーナの頭に、ポツンと一つだけ浮かび上がったものがあった。
「……決めた」
短く呟くと、身を起こして勉強机へと向かった。そしてその上に置きっぱなしになっていた進路調査用紙の空欄をサラサラと埋めると、満足そうに笑みを浮かべてもう一度ベッドに飛び込んだ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回、ティーナの選んだ学科とその理由が判明します。そして選ばれた学科の生徒達は祝杯をあげます。(嘘です)
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