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学園編
何にせよ貴族科はないかなぁ〜
しおりを挟むアルカティーナが生徒会に入るか否かで悩んでいたのと同時期に、初等部2年の生徒達は担任から進路調査用紙なるものを配布されたことでにぎわっていた。
「あのっ……!アルカティーナは、どっどどどどの学科になさるのですか!?」
恐らく、物凄く勇気を振り絞って尋ねてくれたのだろう。自分に声をかけるのになぜそんなにも勇気が必要なのか、アルカティーナには分からなかったが、クラスメイトであるその女生徒の真っ赤な顔をみれば、その必死さはひしひしと伝わってきた。
「ええと…?それはもしや中等部の?」
「は、はいぃっ!そうです!!」
決まっていたら教えてくれとばかりにガクガク頷く同級生に苦笑しつつアルカティーナは思い出した。
ーーそうでした。わたくしが今考えないといけないのは生徒会だけではないのでした…!
エスカレーター式であるリリアム学園において何故進路調査用紙が必要なのかというのは、中等部から新たに加わるクラス分け制度がかかわっている。
初等部でのクラス分けは単純に成績順でS・A・B・C…と振り分けられていた。
しかし、中等部からは少し違う。
専攻する科目によって学科が分かれ、その学科ごとでひとクラスに振り分けられる。
学科は全部で4つ。
一番メジャーなのは『貴族科』だ。
専攻科目は礼儀作法やマナーが主で、その名の通り貴族令息や貴族令嬢の殆どがここに入る。
次に『騎士科』。
これまたその名の通り、騎士を志す者もしくは騎士がここに入る。専攻科目は剣術や体術といった体育科目である。
そして『特進科』。
ここには、初等部でSクラスだった生徒…つまり勉学に秀でた者が多く入る。専攻科目は数学や理科といった主要科目だ。
最後に、『研究科』。
ここは最も人数の少ない学科で、しかも変人の巣窟という二つ名までついた学科だ。
上記3学科では学ぶことのできない特殊な科目を専攻したいという変わり者のためにつくられた学科であり、専攻科目は経済学、倫理学、とバラバラらしい。
中等部からはいよいよ、本格的に乙女ゲームが指導する。その鍵となるのがこのクラス分けである。ヒロインがどの学科に進むかによって入るルートが変わってくるのだ。
ゲーム通りだと…アルカティーナは確か『貴族科』に進んでいたはず。だが、アルカティーナは『貴族科』に進む気は毛頭なかった。少しでも原作と違う動きをして、バッドエンドを回避したいからである。
「…そうですね~。実を言うとまだ考え中なのですが……」
「そ、そそそうなんですね!でも先輩方はどうにか自分の学科をアルカティーナ様に選んでもらおうと必死みたいですよ?」
その言葉にアルカティーナはピシリと凍りついたように固まった。
「…えーと、ホントですか??」
「えっ?気がついていなかったんですか?最近は休み時間になると毎度のように、態とらしく学科名入りの札をつけた先輩方がクラスの前をふらついてるじゃないですか」
「……何かの儀式だと思ってました」
確かに言われてみれば、思い当たる節はある。廊下を歩けば「そこのお嬢さん…!貴方にはやはり貴族の鏡として貴族科に入っていただきたい!」とか「やはりSクラスの誇り高いリーダーとして特進科に…!」とか「わかってます。貴方がうちに入るわけないって。でも…!血迷ったら騎士科へ是非!!」とか「是非うちに!そうすれば私たちは変人というレッテルを貼られずすみます!!」とか、まぁ何だか最近騒がしいなぁと思ってはいた。そういう事だったのか…!!
それにしても、あれがアルカティーナの勧誘だったという線は疑わしい。アルカティーナは、きっと本当はわたくし以外に本命の生徒がいらっしゃったのでしょうね、と勝手に曲がった方向に理解した。
ーー…それにしても、生徒会といい進路といい…どうしましょうか…。
だが、乙女ゲームでのアルカティーナが貴族科出会った以上、アルカティーナには譲れないものがあった。
「でも、何にせよ貴族科はないかなぁ~と思ってます」
へらっと笑いながらそう言うと。
「よしっ!貴族科は脈なしだー!!」
「ちくしょーーー!何でだー!」
「ふははは!ほざいてろ!」
「これで実質ライバルは研究科のみ!騎士科はあり得ないだろうからな!」
「ぐぬぬぬ………!」
廊下から、雄叫びのようなものが聞こえてきた。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
次回、アルカティーナ進路確定。
ティーナはどこへ行くと思いますか?
予想してみてくださいw
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