聖なる歌姫は嘘がつけない。

水瀬 こゆき

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学園編

今更な話なのになぁ?

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 「…と、いう夢を見たんだがどうしてくれるんだ」

 「えぇっ!?わたくしのせいですかそれ」

 「当たり前だろ」

 難癖を付けられ朝っぱらから不満そうにプクと頬を膨らませるアルカティーナ。ゼンはその頬を指でつついてしぼませるという遊びを繰り返していた。ストレス発散である。 

 「大体な、お嬢とユグドーラ様が昨日あのロボットについて数時間も語り合うなんていう奇行をしなければあんな夢は…」

 「奇行!?今奇行と言いましたか!?ゼンにだけは言われなくないですっ!」

 「それを言うならリサーシャだろ」

 「あ、ホントだ間違えました」

 何気に失礼なアルカティーナ。

 「あの…なぜわたくしの頬っぺたを突くのですか?折角膨らませてるのにまた膨らませなきゃいけないじゃないですか。しんどいんですよ?」

 「お嬢には膨らませるのをやめるという発想はないのか?…これは一種のストレス発散みたいなやつだよ」

 「成る程。ではわたくしも!」

 話題がそれ、少し機嫌を良くしたアルカティーナは仕返しとばかりにキラキラと目を輝かせて、ゼンの脇腹を突く。
これもまたストレス発散である。

 「えいっ!」

 「…おっ…と、甘いなお嬢」

 「むむむむ……これならどーだ!とうっ」

 「ぅ、わっ…危なかった…が、隙あり!」

 「ぴゃー!」

 朝っぱらから何をしたいのかツンツンツンツン突っつき合う彼女達ははたから見ればただの変な人達である。その変な人達の様子を実は少し前からコソコソと見つめていたアメルダは、そろそろ声をかけないと廊下のど真ん中で押し相撲でも始めそうな雰囲気のアルカティーナ達に近付いていった。

 「ごっごごごきげんよう!ふん、私から朝の挨拶をして貰えるなんて光栄ねっ!?…ふぅ、ティーナもゼンも一体何してるの?」

 「「ストレス発散(です)!!!」」

 「………あら、そう」

 アメルダは、それならせめて教室でやれよ、と言う言葉をギリギリのところで飲み込んだ。彼女には、それ以上に聞きたいことがあったからである。

 「それはそうとティーナ。ディール殿下から貰った話、どうするつもりなの?」

 「……ぅっ」

 途端、アルカティーナは息を詰まらせ気まずそうに目を逸らした。


 ーー数日前。

 ディールはアルカティーナを探して、数学研究室に辿り着いた。そしてその結果、知りたくもなかったチルキデンの性癖(誤解)を知ることとなってしまい、結局当初の目的であったアルカティーナへの『話』はなし崩しになった………かのように思えたのだが。実はその裏で、ディールはきちんとアルカティーナに予定通り『話』を通していたのだ。
それはまぁ一向に構わないのだが、アルカティーナにとってはその内容が問題だった。

 
 生徒会に入らないか。


 ディールに告げられたその一言に、事実アルカティーナはかなり心が揺さぶられていた。
何しろ、生徒会はゲームのストーリーにおいても重要な役回りになってくる。誘ってくれたからには是非入りたいのだが、『ゲーム』ではアルカティーナというキャラクターは生徒会ではなかった。その変化が原因で、ストーリーにどう支障が出るかと考えるとアルカティーナの心境は複雑になっていた。

 「入りたいのは山々なんですが…色々思うところがありまして。考え中です」

 重要な部分を濁して告げると、アメルダとゼンは揃って目を瞬かせた。

 「…お嬢はバッサリ断ると思ってた」

 「うん…私も」

 顔を見合わせてそう話した2人に、アルカティーナは心外だと苦笑した。

 「だって、聞いた話では生徒会の勧誘って結構人を選んでからするんですよね?たしか各学年に2人いるとかいないとか。ですから、そんな名誉な勧誘は是非受けたいなと」

 「あ、そうなんだ。てっきりティーナは『目立つの嫌です!』とか言うと思ってた」

 「今更な話なのになぁ?」

 「え、ちょっと!!今更ってどういうことですか!?」

 自分の知名度や人気具合に全く気がついていないアルカティーナ。良くも悪くも彼女はそういった人の目に無頓着なのかもしれない!
何しろ、総勢数百人にも及ぶ自分のファンクラブの存在にも気が付いていないのだから。

 「あー…まぁそれは気にするな」

 どういうことかと詰め寄ってくるアルカティーナを何とか誤魔化しながら、ゼンは改めて彼女の有能さに感心していた。
アルカティーナも言った通り、生徒会に勧誘されるということはつまり、その人物がかなりの才能を秘めているということである。
それはとても名誉なことであり、生徒会と言うだけで注目と憧れの的なのである。
 アルカティーナの優秀さは嫌という程見てきた。入学試験は首席でクリア。その後の試験も全てトップ通過。人望もあり、歩けば自然と道が開ける。そしてその輝かしい笑顔には誰もが魅了され、目が離せなくなる。
 
 「むむむむむむ………………」

 上手く躱されたのが不満だったのかまたもや頬を膨らませるアルカティーナ。
それをまたまた萎ませながら、ゼンはのんびりと思考にふけっていた。



 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 と言うことで。
次回からは生徒会をどうするかと言う話ですね、はい。そんでもって予告です。
もう少しでこの『学園編』も終わりにして『乙女ゲーム編』に突入させようと思ってます。つまりアルカティーナ達が中等部に入学するわけですね。
…そう言えば、ずっとやりたいと思ってたチルキデンを使ったネタをまだ入れてないな。
いつ入れようか。
ふむ…ま、所詮チルりんだしいつでもいいか。
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