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Ⅱ.入学編

48.信じられない現実

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 転生者、転生者……。
 つまり、目の前の彼女は本物のヒロインではない…?

 只今、教室内の時間はピタリと止まっている。
 お互いを信じられないような目で見つめたまま、一体どれくらい経ったのか。

「姉様!! ここにいるんですか!?」
「っ!」

 纏まらない思考をなんとか落ち着かせようとしていたら、どうやらタイムオーバーになってしまったようで。
 焦った様子のザックが私とミシェルのいる教室に入ってきてしまいガバッと抱き締められた。

「姉様…お願いだから僕から逃げないでください…」
「ザック…別に逃げたわけじゃ…」

 何故か半泣きモードのザックの背中をトントン叩きあやす。
 小さい頃からたまーにこの状態になるのよねぇ。こうやって大人しく抱かれてたら落ち着くのだけど。昔はこの状態になったザックを私が抱き締める立場だったのに、いつの間にか逆転していた。
 捨て犬のようなオーラを出すザックを見てしまうと拒めなくなってしまうのは優しい姉のさがかしら。

「姉様それで…この女子生徒と何が…? もしかして姉様に酷いこと──」
「えっ!? いや別に何も!? ただ私がミシェルさんと話してみたかっただけよ」

 び、びっくりした。
 正気に戻ったと思ったらいきなりミシェルに向かって威嚇するんだもの。
 本当なんでヒロインにこんな態度を取るかわからない。
 ──いや、でもよく考えたら、この世界に転生者が2人も潜り込んでしまったのだ。ルリアーノの性格もゲームとはだいぶ違うし、登場キャラにその影響が出てしまっても何ら不思議ではない。

「…………」

 チラリ、未だ呆然と立ち尽くすミシェルを見やる。
 どことなく焦点があっていない彼女の顔は、段々と血の気が引いていっているような。
 ……どっちにしろ、この状態じゃ話し合うのは無理ね。

「ザック、もう親睦会は終わったの?」
「はい!」
「そういえばアゼン様は──」
「殿下なら先程先生に捕まって後片付けの指揮をやらされていました。姉様を見つけ次第帰っていいと言われたので僕達は帰りましょう」
「それなら手伝っ──」
「帰りましょう、ね?」

 うーん……これは大人しく帰った方が良さそうね。

 ザックに手を引かれながらもう一度ミシェルを見るも、やはりこちらと視線が交わることはない。

「そんな…ルリアーノも…どうして…私はどうすれば…」

 ぶつぶつと絶望的な表情で何かを呟くヒロインに後ろ髪を引かれながら、私は学園を後にした。
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