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Ⅱ.入学編

60.脅威再び

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 結論から言うと、ミシェルへの説得は失敗した。
 私は必死にダリル王子を落とした場合のメリットを言いまくったのだが、ミシェルは全く聞く耳を持たなかった。
 終いには、「そこまで言うならあんたが付き合えば?」と最もすぎることを言われて撃沈。

 あれ以上食い下がればミシェルが爆発しそうだったので一旦引くことにしたのだ。
 大した魔力はないはずなのに只ならぬオーラを纏っていた。あと一歩撤退が遅かったら爆発していたかもしれない。危ないところだった。

 さて…これで諦める私ではない。
 ミシェルへの説得は失敗したが、私には頼みの綱があったのだ。

「おお、アルランデくん。どうしたんだい?」
「先生、お話があります」

 私は教師のもとにやってきた。ミシェル本人がダメでも外堀から埋めていけばいいと判断しての行動だ。

 すると次に教師の口から出たのは思ってもいないことだった。

「ダリル殿下から話は聞いたよ。生徒会に入ってくれるんだってね」
「えっ」

 ダリル王子、思った以上に抜け目がなかった。もしもの時は勧誘など聞かなかったことにするつもりだったのに、まさかこうも行動が早いとは。
 ミシェルの前に私の方が外堀を埋められるとは…策士策に溺れる、か。
 これでミシェルの加入否応に関わらず私の生徒会入りはほぼ確定してしまった。

 ともすれば…ミシェルを巻き込まないわけにはいくまい!

「君ほど優秀な生徒が入ってくれれば学園は必ずやより良いものとなるだろう」
「先生、その話についてですが、ミシェルさんも是非とも生徒会に加入すべきだと思いますわ」
「ほう…クラークくんか。確かに社交的な彼女ならば生徒達を一つに纏めるのに一役買ってくれるかもしれない」
「ええ! だから先生からも是非彼女を推薦してください」

 ふっふっふ。決まった。
 これでミシェルも道連れだ。思ったよりミシェルの評判は良いみたいだし、先生からの推薦があれば反対されることはないだろう。
 ──たとえ本人の意思がなくても。

 と、やっていることは悪徳商法と何ら変わりないのだけど、勝利を確信した私が気に留めることはなかった。
 ──そんな私に、天誅が下る。

「だが、生徒会を任せるにはクラークくんは成績がなあ……」
「えっ?」
「生徒会の仕事は膨大だし、そのせいで成績が落ちてしまったら本末転倒だ。──むしろ、彼女よりアゼン殿下の方が適任だろう」
「!?」

 な、何故そうなる!?
 油断していた私は教師の言葉に動揺しまくった。まさかミシェルが成績なんて理由で却下されるとは思わなかったし、代わりにアゼン様の名が浮上するなんて完全に読み違いだ。

 これはなんとしても軌道修正を試みなければ──そう思いすぐさま行動に移そうとした私だったが、不運は続くらしい。

 今一番この場にいて欲しくなかった人物が姿を見せたのである。

「僕の名前が聞こえましたが、何の話ですか?」

 穏やかなアゼン様の声に絶望する。
 先程頑張って隠した事実が暴露されそうになっているのだから当然だろう。

 私は教師に向かって『お願いだから何も言わないで』と懇願することしかできなかった──。
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