王道って何ですか?

みるくコーヒー

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第2章

前世の記憶 ②

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「なぁ、天野。」

いつにも増して、坂上が真面目な顔をしている。
これは明日、雨でも降るんじゃないか?

「何よ、坂上。今日はイラッとすること言わないのね。」

現在、下校途中。
なんの因果か私と坂上は同じ委員会になってしまい、それが終わって帰り道が途中まで一緒なので2人で下校・・・という感じだ。

「うん、真剣に、聞いて欲しいんだけど。」

ジッと坂上が私を見る。
ホント、こいつって黙ってればカッコいいのにな。

まぁ、私としては話していてくれたほうが一緒にいやすいんだけど。

「あのさ、えっと・・・。」

坂上が立ち止まって下をむく。
何だよ、気持ち悪いな。

「早く言って下さーい。」

私は、なんだかめんどくさくなって歩き出そうとする。

「ちょ、待てって。」
「えー、嫌でーす。早く帰りたいしー。」

いつもどおり、私は彼に冗談を言う。
そうすると、彼はいつも冗談を返してくれるのだ。

・・・あれ?冗談が帰ってこないぞ?

しかし今更止まれない、と私はスタスタと歩いていく。

「だ、から、ちょっと待てって!」

坂上が私の腕をぐいっとひく。

「うおぉ!」

私は、体勢を崩して転びそうになるが頑張ってふんばる。
そしてクイッと振り向いて坂上を見る。

「もぉ、何!?言いたいことあるならさっさと言うべきだと思うよ!!!」

私はむぷっと頬をふくらませる。
もうちょっとで転ぶところだったんだからね!

「あぁ、もう!ホント、お前、むかつくなぁ!!!」

はい?
私の頭がぴきっと音をならす。

お前はわざわざ、それが言いたかったのか。

坂上が、何を思ったのかフッと下を向く。

「何で気づかねぇんだよ、ホント・・・俺は、俺は!」

坂上は、決意を決めたようにバッと顔を上げ私を見る。

「俺は、お前が、好きだ。」

一瞬、何を言っているのかわからなくて思考が停止する。
しかし、その後に一つ一つ単語が私の頭に入ってくる。

す、好きって言われ、た?

その言葉を認識して、顔が赤くなっていくのがわかった。

「な、なな、何言ってるの?
 まさか、冗談でしょ?」

私は、坂上の顔を直視することが出来ず顔をそらした。

「冗談じゃない、本気。」

チラッと顔を見ると、本当に真剣な顔をしていた。

ほ、本気だ。

「な、何で私、なの?」
「話やすいし明るいし、お前といると、楽しいから。」

えぇ、そんなはっきりと言わなくても。
何となく、とかなら笑い飛ばせたのに、飛ばせたのに!!!

「んで、お前が、良いんなら・・・付き合って欲しいなぁ・・・って。」

つつつつつつ、付き合う?
ツキアウって何?

付き合うってあれですか、いちゃいちゃするやつですか?

「・・・ダメ?」
「ダメっていうか、なんて言うか、急すぎて・・・。」

勿論、坂上と一緒にいるっていうのが嫌いなわけじゃない。むしろ楽しいと感じている。
いや、しかし!
そんな、いちゃいちゃなんて出来ないし、イケメンだし。

私みたいな平凡が恐れ多いというか、なんというか。

「俺のこと、嫌いなの?」
「嫌いなんかじゃない!全然嫌いじゃない!」

ってこれじゃあ、好きって言ってるみたいじゃんっ!!!
うぁああああああああ、もう、ホントに、もう・・・。

坂上ってば、なんてことしてくれたんだ、この野郎!!!

「じゃあ、好き?」
「そ、それは・・・。」

好きっていわれたら好きだけど、でも、あの・・・。

むぎゅっ。

何か温かいモノが私の体を包んでいる。
え?何?なんなの?

こ、れは・・・これは、どういう、ことですか。

「ずっと好きだったんだ。
 一年の時から、ずっと・・・全然気づいてもらえなくって。」

温かいものが坂上だと気づいたのは坂上が話し始めてからだった。
上から言葉が降ってきて「あぁ、私抱きしめられてるんだ」なんて冷静に考えていた。

「勇気出して言っても、お前は俺のこと何とも思ってないみたいだし。
 はは、馬鹿だよな、俺。早まるんじゃなかった。」

坂上は私から離れて、とても悲しそうな顔をする。

「ごめん、困るよな?急に言われたって。すぐには忘れらんねぇかもしんねぇけど・・・いつか忘れるから。
 だから、気まずくなるのはやめてくれよな。」

悲しい顔を浮かべながら笑うその表情に、私は何だか嫌になって言ってしまったのだ。

「つ、付き合うっ!!!」
「え、まじ?」

咄嗟の私の言葉に、坂上は目を見開いて問いかけてきた。

それに私は、コクコクと勢いよく頷く。
そうすると坂上はよっしゃとガッツポーズをした。

アホか、私は。
なんてことを言ってしまったんだ。

嘘です、なんて・・・言えない。

「じゃあ、これからお前のこと凛蝶って呼ぶから。」
「え、ええっ!?」

そんな、急に名前呼びにされても!?

「よし、凛蝶、帰るか。」
「あ、う、うん。」

坂上は私の手を取りぎゅっと握る。

待て待て待て、静まれ私の心臓よ。
坂上に手を握られたくらいなんだと言うんだ、こんなのどうってことないぞ。

どうってことないぞ。

どうってこと・・・なくないよ!!!

「さ、坂上、まだ、手を繋ぐのは、早いと思うんですが。」
「は?何言ってんの?そんなもん早いも何もねぇだろ。」

坂上はニコッと変な笑みを浮かべる。
なんだか背筋が凍る?というか、そんな感じがした。

坂上のその笑顔、とてつもなく嫌いだ!


ここで付き合わなければ私達はなんということもなく、高校生活に終わりを遂げていただろう。

本当の幸せなんてものもわからなかっただろう。

私はすぐに坂上のことが好きになる。
そして、本当に両思いになるのだ。

しかし、これが私にとって最悪なシナリオへの第一歩であったなんて、誰が予想していただろうか。



きっと誰も、予想することなど不可能なのだ。
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