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平凡なβの俺が幼馴染のαに恋をしている話

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 家に着くと、佑都の部屋で勉強しようという話になった。
「お邪魔しまーす。……あれ? おばさんは?」
「今朝から夫婦で町内旅行だろ。樹のところも一緒に行ってんじゃん」
「あ。そっか。夕飯は適当に二人で食いに行けって言ってたっけ」
「そうそう、ラーメンにしようぜ」
「いいね」
 他愛もない会話をしながら玄関ドアを閉めたけれど、ガチャンと鍵がかかると心臓がバクバクした。

 ベータの俺とアルファの佑都じゃ何も起こり得ないけど、幼馴染になってからこれまで、こんなに完全な二人きりって初めてだ。
 さらに部屋に入って扉を閉めれば、いつもの佑都の部屋のはずなのに、密室になったような感覚に陥った。

 ドッ、ドッ、ドッ……心臓、破れそう。
 悟られるな。俺の動揺。

 それからなんとか勉強を進めるけれど、佑都がまばたきするたび揺れるまつ毛とか、かき上げた髪の爽やかな匂いとか、いちいち気になって集中できない。

「樹、上の空だな。腹でも減った?」
「ひゃっ」

 突然腹をさすられて、変な声が出てしまった。
 だって。だって俺、腹より下のところ、すっげー熱くなって、勃っている。
 ……咄嗟に足を閉じたから、気づかれていないよな?

「なんつー情けない声出すんだよ。よっぽど腹へってんのか。わかった。なんか喰いもん持ってくる」
 佑都がすっと立ち上がり、俺に背中を見せた。

 ────セーフ!
 そうだよな。幼馴染の男のベータが今、ここを勃たせてるなんて、思いもしないはずだ。

「はあああー」
 佑都の階段を下りる音が小さくなっていくのを聞きながら、気を落ち着かせるために深呼吸をする。
「……あ……これ、余計にまずいかも」

 佑都の残り香が、部屋に染みついた佑都の香りが、ハンガーにかかった制服からの香りが、俺の粘膜に充満して染み込んでいく。
「たまんない……」
 下腹部が疼いて、この香りに顔も身体もうずもれてしまいたくなる。

 オメガって「巣作り」っていうのをするらしいけど、ベータだって、いやきっと、誰だって。
 好きな人の匂いを嗅いだら、その匂いにもっとうずもれたくなるものだと思う。

 俺は無意識に立ち上がり、佑都の制服をハンガーごと取り、抱きしめてベッドに上がり込んだ。
 でもそれだけじゃ足りなくて、椅子に掛けてあったパーカーも、カバンからはみ出た洗濯に出す前のクラブジャージも引っ張って、それにくるまれる。

 ────めちゃくちゃいいにおい。しあわせ……。

 頭の芯がとろけていく。

 ────好きだ、好きだ。好きだ。佑都が大好きだ……。

「好き……ゆう、と」
 佑都の香りに包まれながら、熱く硬くなったところに手を伸ばした。その時。

 パタン。
 扉の音がして、ドアが開いた。
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