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やり過ぎの自覚を持って下さい
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「ほらほらもっと根性みせんかァ!ファイトォォォ!!」
「うるせぇぇぇ!!!俺!もう!ムリ!」
「ワハハ、そんだけ叫べるんやったら元気やん。ってあーあ、無理して酸素使うからぁ」
「……は、ふ、も、もうむり、しぬ」
暑苦しいトレーナーを添えて、ヨメルタは体力強化訓練の真っ最中であった。が、容赦ないランニング二十周にもはや虫の息。べちょっと崩れ落ちるように這いつくばって、必死に荒い呼吸を落ち着かせていた。完全に思いっきり叫んだことがトドメである。
ゲラコは仕方ないなぁという顔でヨメルタに近づくと、屈んで目線を合わせた。そして自身の口の横に手を添えながら。
「やーいお前の体ひょろひょろもやしぃ~、男やのにそぉんなざこでええんかなぁ?ほらほら気張りや、このざーこ、ざこもやし♡」
「……んの、クソアマッ……!」
「あれ、ヨメちゃん喜んでへんの?おっかしいなぁ、とりあえずざこって貶しとけば喜ぶんとちゃうかったか……?」
「どんな変態だよ」
んー?と記憶を遡っている様子のゲラコをよそに、よいしょと座り直すヨメルタ。このタイミングで休憩する気満々である。結局のところ十周くらいしか走れていないので、どうせ後で走らされることは目に見えているのだ。
「あ!せやったせやった、アレはちっちゃい女の子がやらんと意味無いんやったな。いやぁ、うちも大分記憶遠なってきてて怖いわぁ。やっぱ細かいことすっと出てこんもんやね」
「何でそんなヤバい概念があるんだ……というか、ゲラコ今何歳だよ。記憶云々の発言がやたら今は亡き俺のおばあちゃんにそっくりなんだが」
「そやなぁ……うち、何歳に見える?」
おっとこれは不味い。ヨメルタの顔がピシリと固まった。うっかり忘れていたが、女性の年齢とは得てして地雷である。正直に答えても、お世辞で答えても、行き着く先は理不尽な反応が待っているものだ。
「ええよ、正直に言うて。ゲラコちゃんそう簡単に怒らへんから」
「……に」
「に?」
「……二十代、後半かと」
「ふーん、なるほど。せやなぁ、うちは美人な姉ちゃんやもんなぁ。正直者は好きやで」
ゲラコはうんうん頷きながら立ち上がる。ヨメルタがほっと一息吐いた時──カッとゲラコの猫目が見開かれた。
「ってんなわけあるかいっ!そこは思うとる年齢のマイナス五歳やろうがッ!ちゅうわけで五十点不合格、ランニング五周追加ァ!」
「ああもう別に何歳でもいいだろめちゃくちゃ美人なんだからよぉ!!!」
「え」「……え?」
固まったゲラコを見てヨメルタは瞳を瞬かせた。いやいや、え、じゃないが。自分で言ってたのに何驚いてるんだこの人。
「そ、そお?なんや若い子にそんなん言われたら照れるなぁ。サービスで追加は三周だけにしとくわな、今回だけやで」
そっぽを向いて、髪をくるくると指に巻き付けながら「ほに、まだ終わってへんやろ。はよ立ちぃ」と言うゲラコ。それをぽけーっとした顔で眺めながら立ち上がったヨメルタは、ぼそりと一言。
「い、意外と可愛げあるんだな」
「意外は余計や一言多いねん!オラとっとと走ってこんかァッ!!!」
思いっきり背中を叩かれて「あイッタァ!」と悲鳴を上げたヨメルタは、痛みを堪えながら渋々走り出した。
あーくそ、やっぱ可愛くねぇ!!!
ゲラコ教官のブートキャンプで鍛えられること早十日。毎日ランニングや筋トレなど、やることはシンプルでも内容が中々にハードだった。腕立て伏せの際に背の上へ座られた時は大分イラッときたものである。とはいえすぐにぺしゃっと潰れたのは最初だけで、次から多少持つようになったのは驚きであった。
そもそもあまり連日やり過ぎない方がいいんじゃ、と思ったヨメルタだが、ゲラコは「大丈夫やって、うちに任せとき!」の一点張りで。どうやら用意される謎の食事が鍵のようで、毎回裂け目に手を突っ込んでは、
「うーん、これはATK増加、こっちはDEF、まぁ両方上がるのでええか。LUKとINTは自前で頑張ってもらうとして、MP用にデザートでも」
などと呪文のような言葉を言っていた。雰囲気から自分の体に影響を及ぼすものであることを察して、ヨメルタは食事を見る度に複雑な顔をしていた。一体何が……入っているというんだ……
一度聞いてみたところ、ドラゴンの尻尾と言われたのでもうそれ以上は聞かなかった。商人としては失格だが、聞かない方が幸せになれる気がしたのだ。まぁ要は現実逃避である。
そして今日。貴重な安らぎの時間である朝食タイムだというのに、眉間にしわを寄せたヨメルタの姿があった。
「二日目から変だなとは思っていたんだ……なんか筋肉痛の時間がやたら短いし、寝るだけで一日の疲れがスッキリとれるし、動けるようになるのが早くて不自然過ぎたし」
ヨメルタはちら、とゲラコを見た。当の本人はこちらの困惑を物ともせず、優雅にコーヒーをすすっている。もはや腹も立たなくなったその憎たらしい顔を変えるべく、自身の体に指を指した。
「どう考えてもおかしいんだよ俺の体。途中までは俺も頑張ったしな、とか思ってたし疲れてたから深く考えてなかったが……が!流石に普通こんな早く筋肉つかないだろ!」
「ええやんか、細マッチョとマッチョの中間。確実に男前が上がっとるで。ひゅー、ヨメちゃんカッコええわぁ!」
「茶化すな答えろ」
普通がどれくらいか分からないため気付くのが遅れたが、今朝肌着が妙にピッチリするなと思ったらこれだ。日に日にこなせるトレーニングが増えていく時点で何故気付かなかったんだろう、と思うレベルである。明らかに成長スピードが異常だった。
「えー、まぁ教えてあげてもええけど……情報をタダでっていうのは、ちょおっと無理があるよなぁ?」
「はぁ……要求は何だ」
「ゲラコちゃんの髪の毛結んで♡」
「お前いつも魔法使って一瞬で済ませるくせに……」
三つ編み三本頼むわ、とご機嫌に手を振りながら面倒な注文をするゲラコ。文句を言ってもどうしようもないので、渡されたゴムを持って髪を手に取った。少しオレンジの混ざった綺麗な赤毛を三分割し、まずは一本三つ編みを作っていく。
「まぁ薄々分かってたかもしれんけど。種明かしするとやな、言うたら超絶ドーピングメニューやったわけよ」
「超絶どーぴ……?なんだそりゃ」
「んー、筋力増強薬とかそういうやつの料理版、みたいな?」
「にしたっておかしいだろ。多分普通は月単位でかかるはずだ」
うわ結構毛がはみ出てしまった、と思いながら次のに取りかかる。もしかしたらバレないかもしれないので平然とした態度を装って。
「あとは……こう、魔法でちょちょいのちょいって、な?」
「待て、魔法?ゲラコお前……もしかして、成長魔法か?」
「あーあーどうやろなぁ、うーんあんま詳しいことは言えんのでなぁ」
顔は見えないが、やたら棒読みなところを考慮すると……さてはこいつ、使ったな?
ヨメルタは掴んでいた髪の一房を軽く引っ張って、
「それは植物に使う魔法だよ馬鹿野郎!!人に使うのは禁止って言われてんだろうがッ!!!」
と怒りをあらわにした。成長魔法を人体に使うのは極めて調整が難しく、一歩間違えると大変なことになる。それで禁止級の魔法になっていたはずだというのに、このバカときたら……!ぐいぐい髪を引っ張りながらヨメルタは憤慨した。
「アイダダダッ!ごめ、ごめんて、でもうちなら大丈夫やから!ほんまに!ゲラコちゃん嘘つかへん」
「いや絶対嘘」
「やだ、うちの信用無さすぎ……?」
「自分の胸に手当てて考えてみろよ」
「……んふ」
「はい有罪、笑ってんじゃねぇか」
やってしまったものは仕方がないし、今のところ自分の体に不調は無いのでとりあえず無罪放免とするヨメルタ。そもそもゲラコを裁ける立場ではないため、いつも通り怒るだけ怒って終了である。
「アレが駄目なんは扱いが難しいからで、うまく使えば効率的に訓練できるええ魔法なんやけどなぁ」
ゲラコが性懲りもなく何か言っている間に、完成した三つ編みをペシッと背に叩きつける。大分ボサボサだがやり直すのも面倒なので「ほら、終わったぞ」と言って距離をとった。
振り返ったゲラコは、少し物言いたげな顔でヨメルタを見上げる。そんなに成長魔法の使用を認めさせたいのか、と思ったらどうやら違うらしい。
「でも勘違いせんといてや。あの魔法は、決してアレだけで成長するもんやないんよ。ヨメちゃんがちゃあんと努力した結果なんやで」
らしくない穏やかな声を聞いて、ヨメルタは淡い群青色の目を見開いた。ぴかぴかと虹彩の一部が緑色に輝く。
「……お前、人を真面目に褒めたりできるんだな」
「ゲラコちゃんがせぇっかく褒めたのに失礼過ぎんか???うちだって人の努力は認めるわ」
日頃の行いである。しかしそんなの知ったことではないとばかりに、ゲラコはわざとらしくムッと口をとがらせる。そしておもむろに三つ編みを手前に持ってきて、出来映えを確認した途端にプハッと吹き出した。
「ワハハ、下手くそ」
「うっせ、やったことなかったんだよ」
毛束を出してこなれ感を演出、という割には乱れすぎている三つ編みをいじりながら──ゲラコは一向に解こうとしなかった。あっさり魔法でやり直されると思っていたヨメルタは、何となくいたたまれなくなって目を逸らす。さっさと直せばいいものをと思うけれど、どこか、ほんの少しだけ嬉しかった。
「うるせぇぇぇ!!!俺!もう!ムリ!」
「ワハハ、そんだけ叫べるんやったら元気やん。ってあーあ、無理して酸素使うからぁ」
「……は、ふ、も、もうむり、しぬ」
暑苦しいトレーナーを添えて、ヨメルタは体力強化訓練の真っ最中であった。が、容赦ないランニング二十周にもはや虫の息。べちょっと崩れ落ちるように這いつくばって、必死に荒い呼吸を落ち着かせていた。完全に思いっきり叫んだことがトドメである。
ゲラコは仕方ないなぁという顔でヨメルタに近づくと、屈んで目線を合わせた。そして自身の口の横に手を添えながら。
「やーいお前の体ひょろひょろもやしぃ~、男やのにそぉんなざこでええんかなぁ?ほらほら気張りや、このざーこ、ざこもやし♡」
「……んの、クソアマッ……!」
「あれ、ヨメちゃん喜んでへんの?おっかしいなぁ、とりあえずざこって貶しとけば喜ぶんとちゃうかったか……?」
「どんな変態だよ」
んー?と記憶を遡っている様子のゲラコをよそに、よいしょと座り直すヨメルタ。このタイミングで休憩する気満々である。結局のところ十周くらいしか走れていないので、どうせ後で走らされることは目に見えているのだ。
「あ!せやったせやった、アレはちっちゃい女の子がやらんと意味無いんやったな。いやぁ、うちも大分記憶遠なってきてて怖いわぁ。やっぱ細かいことすっと出てこんもんやね」
「何でそんなヤバい概念があるんだ……というか、ゲラコ今何歳だよ。記憶云々の発言がやたら今は亡き俺のおばあちゃんにそっくりなんだが」
「そやなぁ……うち、何歳に見える?」
おっとこれは不味い。ヨメルタの顔がピシリと固まった。うっかり忘れていたが、女性の年齢とは得てして地雷である。正直に答えても、お世辞で答えても、行き着く先は理不尽な反応が待っているものだ。
「ええよ、正直に言うて。ゲラコちゃんそう簡単に怒らへんから」
「……に」
「に?」
「……二十代、後半かと」
「ふーん、なるほど。せやなぁ、うちは美人な姉ちゃんやもんなぁ。正直者は好きやで」
ゲラコはうんうん頷きながら立ち上がる。ヨメルタがほっと一息吐いた時──カッとゲラコの猫目が見開かれた。
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「え」「……え?」
固まったゲラコを見てヨメルタは瞳を瞬かせた。いやいや、え、じゃないが。自分で言ってたのに何驚いてるんだこの人。
「そ、そお?なんや若い子にそんなん言われたら照れるなぁ。サービスで追加は三周だけにしとくわな、今回だけやで」
そっぽを向いて、髪をくるくると指に巻き付けながら「ほに、まだ終わってへんやろ。はよ立ちぃ」と言うゲラコ。それをぽけーっとした顔で眺めながら立ち上がったヨメルタは、ぼそりと一言。
「い、意外と可愛げあるんだな」
「意外は余計や一言多いねん!オラとっとと走ってこんかァッ!!!」
思いっきり背中を叩かれて「あイッタァ!」と悲鳴を上げたヨメルタは、痛みを堪えながら渋々走り出した。
あーくそ、やっぱ可愛くねぇ!!!
ゲラコ教官のブートキャンプで鍛えられること早十日。毎日ランニングや筋トレなど、やることはシンプルでも内容が中々にハードだった。腕立て伏せの際に背の上へ座られた時は大分イラッときたものである。とはいえすぐにぺしゃっと潰れたのは最初だけで、次から多少持つようになったのは驚きであった。
そもそもあまり連日やり過ぎない方がいいんじゃ、と思ったヨメルタだが、ゲラコは「大丈夫やって、うちに任せとき!」の一点張りで。どうやら用意される謎の食事が鍵のようで、毎回裂け目に手を突っ込んでは、
「うーん、これはATK増加、こっちはDEF、まぁ両方上がるのでええか。LUKとINTは自前で頑張ってもらうとして、MP用にデザートでも」
などと呪文のような言葉を言っていた。雰囲気から自分の体に影響を及ぼすものであることを察して、ヨメルタは食事を見る度に複雑な顔をしていた。一体何が……入っているというんだ……
一度聞いてみたところ、ドラゴンの尻尾と言われたのでもうそれ以上は聞かなかった。商人としては失格だが、聞かない方が幸せになれる気がしたのだ。まぁ要は現実逃避である。
そして今日。貴重な安らぎの時間である朝食タイムだというのに、眉間にしわを寄せたヨメルタの姿があった。
「二日目から変だなとは思っていたんだ……なんか筋肉痛の時間がやたら短いし、寝るだけで一日の疲れがスッキリとれるし、動けるようになるのが早くて不自然過ぎたし」
ヨメルタはちら、とゲラコを見た。当の本人はこちらの困惑を物ともせず、優雅にコーヒーをすすっている。もはや腹も立たなくなったその憎たらしい顔を変えるべく、自身の体に指を指した。
「どう考えてもおかしいんだよ俺の体。途中までは俺も頑張ったしな、とか思ってたし疲れてたから深く考えてなかったが……が!流石に普通こんな早く筋肉つかないだろ!」
「ええやんか、細マッチョとマッチョの中間。確実に男前が上がっとるで。ひゅー、ヨメちゃんカッコええわぁ!」
「茶化すな答えろ」
普通がどれくらいか分からないため気付くのが遅れたが、今朝肌着が妙にピッチリするなと思ったらこれだ。日に日にこなせるトレーニングが増えていく時点で何故気付かなかったんだろう、と思うレベルである。明らかに成長スピードが異常だった。
「えー、まぁ教えてあげてもええけど……情報をタダでっていうのは、ちょおっと無理があるよなぁ?」
「はぁ……要求は何だ」
「ゲラコちゃんの髪の毛結んで♡」
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三つ編み三本頼むわ、とご機嫌に手を振りながら面倒な注文をするゲラコ。文句を言ってもどうしようもないので、渡されたゴムを持って髪を手に取った。少しオレンジの混ざった綺麗な赤毛を三分割し、まずは一本三つ編みを作っていく。
「まぁ薄々分かってたかもしれんけど。種明かしするとやな、言うたら超絶ドーピングメニューやったわけよ」
「超絶どーぴ……?なんだそりゃ」
「んー、筋力増強薬とかそういうやつの料理版、みたいな?」
「にしたっておかしいだろ。多分普通は月単位でかかるはずだ」
うわ結構毛がはみ出てしまった、と思いながら次のに取りかかる。もしかしたらバレないかもしれないので平然とした態度を装って。
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「待て、魔法?ゲラコお前……もしかして、成長魔法か?」
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と怒りをあらわにした。成長魔法を人体に使うのは極めて調整が難しく、一歩間違えると大変なことになる。それで禁止級の魔法になっていたはずだというのに、このバカときたら……!ぐいぐい髪を引っ張りながらヨメルタは憤慨した。
「アイダダダッ!ごめ、ごめんて、でもうちなら大丈夫やから!ほんまに!ゲラコちゃん嘘つかへん」
「いや絶対嘘」
「やだ、うちの信用無さすぎ……?」
「自分の胸に手当てて考えてみろよ」
「……んふ」
「はい有罪、笑ってんじゃねぇか」
やってしまったものは仕方がないし、今のところ自分の体に不調は無いのでとりあえず無罪放免とするヨメルタ。そもそもゲラコを裁ける立場ではないため、いつも通り怒るだけ怒って終了である。
「アレが駄目なんは扱いが難しいからで、うまく使えば効率的に訓練できるええ魔法なんやけどなぁ」
ゲラコが性懲りもなく何か言っている間に、完成した三つ編みをペシッと背に叩きつける。大分ボサボサだがやり直すのも面倒なので「ほら、終わったぞ」と言って距離をとった。
振り返ったゲラコは、少し物言いたげな顔でヨメルタを見上げる。そんなに成長魔法の使用を認めさせたいのか、と思ったらどうやら違うらしい。
「でも勘違いせんといてや。あの魔法は、決してアレだけで成長するもんやないんよ。ヨメちゃんがちゃあんと努力した結果なんやで」
らしくない穏やかな声を聞いて、ヨメルタは淡い群青色の目を見開いた。ぴかぴかと虹彩の一部が緑色に輝く。
「……お前、人を真面目に褒めたりできるんだな」
「ゲラコちゃんがせぇっかく褒めたのに失礼過ぎんか???うちだって人の努力は認めるわ」
日頃の行いである。しかしそんなの知ったことではないとばかりに、ゲラコはわざとらしくムッと口をとがらせる。そしておもむろに三つ編みを手前に持ってきて、出来映えを確認した途端にプハッと吹き出した。
「ワハハ、下手くそ」
「うっせ、やったことなかったんだよ」
毛束を出してこなれ感を演出、という割には乱れすぎている三つ編みをいじりながら──ゲラコは一向に解こうとしなかった。あっさり魔法でやり直されると思っていたヨメルタは、何となくいたたまれなくなって目を逸らす。さっさと直せばいいものをと思うけれど、どこか、ほんの少しだけ嬉しかった。
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