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第3話 安眠様
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あの時のことを思い返してみると、眠かったということばかりを覚えている。とにかく眠い。眠気と戦うのに必死で、それ以外は眼中になかった。
そういう状態だったからあまり鮮明な記憶はない。そんな中から原因を見つけ出せるだろうか。とても魔法や夢を見ているでは説明がつかないこの状況の……。
俺は腕を組んで、目を閉じ、集中して考えた……。
「ああああああああああ!」
そして、原因に辿り着いた時、俺は再びその場所で叫んだ。
「そうだ……そういえば、あの時……」
今こうして起きる前に俺はもう1回途中で起きていたのだ。思い出した。そうだ、あのババアだ。
そうだ。そうだった。見ていた夢のように記憶がある。ぼんやりしているけど、確かに。俺はあのババアに永い眠りの呪いをかけられたんだ。
「ということは……もしかして……あれからかなり時間が経った?」
いやもしかしなくてもそうだ。俺はあの呪術師のババアに眠りの呪いをかけられて、そこから目覚めた結果が今。目の前に広がる景色なのだ。
ボロボロの小屋になった宿屋――森になった村――この古びた俺の石像――。永久の眠りの呪い。1週間も準備してそれをかけられた俺は超長期睡眠をしてしまったのだ――。
答えが分かると、心が抜けてどこかへ逃げていくような気分になる。意識が遠く遠く……頭の中がからっぽになる。
俺はそんな状態で一旦寝ていた宿屋の一室に戻った。倒れ込みたい気分だったけれど、土や草に倒れるのは嫌だった。
「マジかよ……これからどうしよう……」
俺が眠っている間ずっと安全だったことや、永久の眠りから目覚められた理由はすぐに分かる。俺の生まれ持ったスキルのおかげだと思う。
だけど、起きたところで相当な時間が経過して知らない場所になったこの世界でこれからどうやって生きていけというのだ…………。
眠る前にあった俺の私物は全て無くなっていた。脱いだ服も、お金も綺麗さっぱり。床にはほこりすらない。
現実を直視できない。嘘だろという言葉が頭の中でこだまする。眠くもないのにまばたきが繰り返されて、視界がゆっくりぼやけていく……。
「――?人の気配?」
気を落としていた時、外から気配を感じて、俺は小声でそう言った。
外から二足歩行で歩く音が聞こえる。しかも、どうやらこちらに向かってきている。
寝ていた俺は音を立てずに体を起こして、臨戦態勢に入った。
足音はどんどん大きくなって……部屋のドアがゆっくりと開いていく……。そして、その奥にいる人物と目が合った――。
開いたドアの先には若い女の子の姿があった。クリーム色の長い髪に少しタレた目。見たところ10代後半くらいと思われる。
おかしなところはない……ただ特徴的なのは頭に角が生えているというところだ。頭部の左右に羊のような丸まった角がある。獣人族だ。
ヒツジ角の女の子は俺の姿を見るとピタリと動きを止める。
俺も相手の出方を見て動きを止めた……。
そのまま10秒ぐらいの沈黙……そして……。
「ひえええ!?安眠様が起きてるぅ!?」
ヒツジ角の女の子は尻もちをついて驚いた。
「安眠様……?」
ヒツジ角の女の子は胸のところに花とタオルを持っていた。その持ち物を床にばら撒いて、怯えてるとも思える表情で俺を見ている。
「はあ……どうしよう……」
「安眠様って……俺のこと?」
「まさか、本当にこんなことが……」
「ねえ……。さっきの安眠様って俺のこと?」
「少々お待ちください安眠様!急いで私の村の長を呼んできますので!」
「え。ちょっと……」
いくらか話しかけてみたけど聞こえてはいないみたいで、ヒツジ角の女の子はどこかへ走り出す。
俺は一瞬迷ったけど、それを追って走り出した。自分が安眠様と呼ばれたこと以外にも聞きたいことがある――。せっかく見つけた人間だ――。
床に落ちた花を飛び越えて、再び外に出るとすぐにクリーム色の髪が揺れる後ろ姿は見つかる。
けれど、たかが数秒出遅れただけでその背中はかなり遠くまで森を進んでいた。
「おーい!ちょっと待ってくれ!」
手を挙げながら森の中を走ってついて行く。
「そこの……君っ。止まってくれないか?」
走って走って――声を出して――それでもヒツジ角の女の子は止まってくれなかった。それどころか追い付くこともできない。
普通に走るのが早いのだ。獣人族は基本的に人間よりも身体能力が高い……。
それならばと、俺は踏み込む足に力を入れる。無理やり前に行くのは不本意だけど、一応人類最強とも呼ばれていた俺がもう少し本気で走れば追い付けない速度ではない。
久しぶりに体にギアを入れる感覚……永い眠りでなまっているかとも思ったが……その体は驚くほど軽かった。
ものの数秒でその背中を目前に捉える。そっと肩を叩いて止まってもらおう。俺は腕を伸ばした――。
しかし、そのちょうどそのタイミングで何故だかヒツジ角の女の子は足を止める――。
「ちょっ――あぶなっ――」
急ブレーキをかけながら、ぶつからないように無理やり体を捻った。その結果、服がかすりながらもなんとか避けることはできたのだけれど……。
足はくじいたし、盛大に女の子の前でこけてしまった……。
「いってー……恥ずかしいし……」
草の中でぼそりと言った。
何故止まったのかと体を起こして後ろを見てみる。するとそこには先程以上に怯えるヒツジ角の女の子の姿があった。
「やっぱり安眠様が目覚めるのは不吉の予兆なんだ……」
そして、横を見ると足を止めた理由はすぐに分かった。
俺のすぐ近くに魔物の姿があった。
しかも、かなりいかつい奴だ。
そういう状態だったからあまり鮮明な記憶はない。そんな中から原因を見つけ出せるだろうか。とても魔法や夢を見ているでは説明がつかないこの状況の……。
俺は腕を組んで、目を閉じ、集中して考えた……。
「ああああああああああ!」
そして、原因に辿り着いた時、俺は再びその場所で叫んだ。
「そうだ……そういえば、あの時……」
今こうして起きる前に俺はもう1回途中で起きていたのだ。思い出した。そうだ、あのババアだ。
そうだ。そうだった。見ていた夢のように記憶がある。ぼんやりしているけど、確かに。俺はあのババアに永い眠りの呪いをかけられたんだ。
「ということは……もしかして……あれからかなり時間が経った?」
いやもしかしなくてもそうだ。俺はあの呪術師のババアに眠りの呪いをかけられて、そこから目覚めた結果が今。目の前に広がる景色なのだ。
ボロボロの小屋になった宿屋――森になった村――この古びた俺の石像――。永久の眠りの呪い。1週間も準備してそれをかけられた俺は超長期睡眠をしてしまったのだ――。
答えが分かると、心が抜けてどこかへ逃げていくような気分になる。意識が遠く遠く……頭の中がからっぽになる。
俺はそんな状態で一旦寝ていた宿屋の一室に戻った。倒れ込みたい気分だったけれど、土や草に倒れるのは嫌だった。
「マジかよ……これからどうしよう……」
俺が眠っている間ずっと安全だったことや、永久の眠りから目覚められた理由はすぐに分かる。俺の生まれ持ったスキルのおかげだと思う。
だけど、起きたところで相当な時間が経過して知らない場所になったこの世界でこれからどうやって生きていけというのだ…………。
眠る前にあった俺の私物は全て無くなっていた。脱いだ服も、お金も綺麗さっぱり。床にはほこりすらない。
現実を直視できない。嘘だろという言葉が頭の中でこだまする。眠くもないのにまばたきが繰り返されて、視界がゆっくりぼやけていく……。
「――?人の気配?」
気を落としていた時、外から気配を感じて、俺は小声でそう言った。
外から二足歩行で歩く音が聞こえる。しかも、どうやらこちらに向かってきている。
寝ていた俺は音を立てずに体を起こして、臨戦態勢に入った。
足音はどんどん大きくなって……部屋のドアがゆっくりと開いていく……。そして、その奥にいる人物と目が合った――。
開いたドアの先には若い女の子の姿があった。クリーム色の長い髪に少しタレた目。見たところ10代後半くらいと思われる。
おかしなところはない……ただ特徴的なのは頭に角が生えているというところだ。頭部の左右に羊のような丸まった角がある。獣人族だ。
ヒツジ角の女の子は俺の姿を見るとピタリと動きを止める。
俺も相手の出方を見て動きを止めた……。
そのまま10秒ぐらいの沈黙……そして……。
「ひえええ!?安眠様が起きてるぅ!?」
ヒツジ角の女の子は尻もちをついて驚いた。
「安眠様……?」
ヒツジ角の女の子は胸のところに花とタオルを持っていた。その持ち物を床にばら撒いて、怯えてるとも思える表情で俺を見ている。
「はあ……どうしよう……」
「安眠様って……俺のこと?」
「まさか、本当にこんなことが……」
「ねえ……。さっきの安眠様って俺のこと?」
「少々お待ちください安眠様!急いで私の村の長を呼んできますので!」
「え。ちょっと……」
いくらか話しかけてみたけど聞こえてはいないみたいで、ヒツジ角の女の子はどこかへ走り出す。
俺は一瞬迷ったけど、それを追って走り出した。自分が安眠様と呼ばれたこと以外にも聞きたいことがある――。せっかく見つけた人間だ――。
床に落ちた花を飛び越えて、再び外に出るとすぐにクリーム色の髪が揺れる後ろ姿は見つかる。
けれど、たかが数秒出遅れただけでその背中はかなり遠くまで森を進んでいた。
「おーい!ちょっと待ってくれ!」
手を挙げながら森の中を走ってついて行く。
「そこの……君っ。止まってくれないか?」
走って走って――声を出して――それでもヒツジ角の女の子は止まってくれなかった。それどころか追い付くこともできない。
普通に走るのが早いのだ。獣人族は基本的に人間よりも身体能力が高い……。
それならばと、俺は踏み込む足に力を入れる。無理やり前に行くのは不本意だけど、一応人類最強とも呼ばれていた俺がもう少し本気で走れば追い付けない速度ではない。
久しぶりに体にギアを入れる感覚……永い眠りでなまっているかとも思ったが……その体は驚くほど軽かった。
ものの数秒でその背中を目前に捉える。そっと肩を叩いて止まってもらおう。俺は腕を伸ばした――。
しかし、そのちょうどそのタイミングで何故だかヒツジ角の女の子は足を止める――。
「ちょっ――あぶなっ――」
急ブレーキをかけながら、ぶつからないように無理やり体を捻った。その結果、服がかすりながらもなんとか避けることはできたのだけれど……。
足はくじいたし、盛大に女の子の前でこけてしまった……。
「いってー……恥ずかしいし……」
草の中でぼそりと言った。
何故止まったのかと体を起こして後ろを見てみる。するとそこには先程以上に怯えるヒツジ角の女の子の姿があった。
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