冒険者パーティーの喧嘩仲間が呪いにかかってあたしに惚れたようです

・めぐめぐ・

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 スカーレットの髪がキラリと光った。

 それを瞳に捕えたミモザが、嬉しそうな表情を浮かべ、光の元を指さした。

「レティ! この間のお誕生日の時にあげた髪飾り、着けてくれてるんだね! すっっごく、かわいいー」

 少女であっても女性。キラキラ光る物と可愛い物には目がない。

 スカーレットは、ミモザが指摘した髪飾りを外すと、自分の目の前に持って来た。

 彼女の手には、先日自身の誕生日の際にエルフィン親子から贈られた髪飾りが握られている。

 銀色の小さな花が無数に飾られたデザインだ。人差し指ぐらいの大きさで、髪の毛に付けていても仕事の邪魔にならないのが気に入っていた。

「ありがとう、ミモザ。あたしもこの髪飾り、とっても気に入ってるの。ミモザはお父さんと違ってセンスいいよねー」

「えへへ~」

 褒められたミモザは、嬉しそうに表情を緩めた。その横で、センスをディスられた父親が、苦笑いを浮かべている。

 スカーレットは髪飾りを元通りつけ直すと、黙って食事を進めているカメリアに対し、不満そうな視線を向けた。

「どっかの誰かさんは、あたしの誕生日を知っていながら、何もプレゼントしてくれなかったけどねー」

 誰かさんとは、もちろんカメリアの事だ。

 ミモザから誕生日を聞かれた時、カメリアもその場にいたはずなのだが、当日彼からのプレゼントはなかった。

 それに、スカーレットは不満を述べているのだ。

 カメリアが食事の手を一瞬止めたが、すぐに再開すると、自分を覗き込む彼女と視線を合わせないまま口を開いた。

「……子どもじゃあるまいし……」

「何言ってんのよっ! プレゼントに歳なんて関係ないでしょ⁉ 狂戦士って皆、あんたみたいに人の感情に鈍いの⁉」

「まあまあ、レティ、落ち着いて。狂戦士は、自身の感情を表情に出すのができないだけで、感じる心などは我々と同じなのですよ?」

 エルフィンが、慌てて怒るスカーレットをおしとどめた。

 盗賊も精霊魔法使いも、多く存在しているが、狂戦士は少し事情が違った。

 狂戦士は、職業としては戦士に当たるのだが、特殊でその数も少ない。

 感情の高ぶり、もしくは狂戦士化というスキルを使う事で、強大な身体能力を得ることができる。しかし代わりに、自身の意識がなくなり、体力もしくは命尽きるまで戦い続ける破壊者となるのだ。

 そのため、狂戦士のパーティーには必ず、彼を正気に戻すための魔法使いが必要となる。

 それと、狂戦士になると、自分の感情や言葉を自由に出せなくなるという副作用が現れる。ただ心は普通の人間と同じなので、相手の気持ちを汲み取ったりはできるらしい。

 仲間にも危険が及ぶ恐れがあり、不愛想で面白みのない狂戦士を、好き好んでパーティーに入れる冒険者はそうおらず、一部では、神の呪いだと忌み嫌う者もいるくらい狂戦士の存在は冒険者たちの中でも異端だった。

 狂戦士の副作用の部分のみ説明を受けたスカーレットは、まだ懐疑的だ。

「本当に? 心では笑ってるのに顔に出せない事なんてできるの? 絶対にあんた、我慢してるでしょ」

 笑い上戸なスカーレットには、気持ちを表に出せないカメリアが信じられないようだ。

 食事の手を止め、カメリアが一つため息をついた。

「……別に我慢などしていない。……それに、笑いの沸点はお前ほど低くない」

「……ちょっと、聞き捨てならないんだけど。誰が笑いの沸点が低いってんのよっ!」

 きいいっ!と悔しさに歯を噛みしめながら、スカーレットは叫んだ。

 この二人の喧嘩は、いつもの事だった。

 感情的・衝動的なスカーレット、そして冷静で理論的なカメリア、全く異なる性格がぶつかるのは仕方なく、その度に二人の間を取り持つのが、リーダーであるエルフィンだった。

(ほんっとこいつ、あたしの事良く思ってないに違いないわ!)

 腕を組み、鼻を鳴らすとスカーレットは思った。
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