冒険者パーティーの喧嘩仲間が呪いにかかってあたしに惚れたようです

・めぐめぐ・

文字の大きさ
8 / 13

8

しおりを挟む
 カメリアは、ベッドの上で目を覚ました。

「目覚めましたか。気分はどうですか?」

 嬉しそうなリーダーの声に、そちらに視線を向ける。
 ベッドの横にエルフィンが座ってこちらを見ていた。一つため息をつくと、カメリアは一つ頷いた。

「……問題はない」

「それは良かったです。でも、指輪に生命力を吸われていましたからね。しばらくは、安静にして下さいね」

「……ああ」

 短い言葉で、了承を伝える。

 いつもの端的な口調に、エルフィンは無事呪いが解けた事を改めて確認し、ホっと胸を撫で下ろした。
 しばし沈黙後、

「……スカーレットは?」

 カメリアは、視線を落したまま低い声で尋ねる。彼の問いに、エルフィンは視線をドアに向けると、優しい笑みを浮かべて答えた。

「レティにはミモザの相手をお願いしています。今、下の酒場にいるでしょう」

「……そうか」

 彼の言葉はそれだけだった。
 しかし、ここで会話を終わらせるわけにはいかなかった。エルフィンには他に用件があったのだ。

「実は一つあなたに相談があって、私一人がここに残ったのですよ」

 この言葉に、カメリアは短く息を吐いた。

「……指輪の話……だろ?」

「その通りです」

 黒髪の青年は、ご名答とばかりににっこり笑った。

 *

 スカーレットは、ミモザと一緒に酒場のテーブルに座っていた。

 呪いの解除に立ち会う事が許されず、一人でこの場所にいたのだが、今しがた指輪が外れたという報告をミモザから聞きホッとしていた。

 本当であればすぐにでも二人がいる部屋を訪れ、カメリアの様子や指輪の話が聞きたかったのだが、ミモザから待っているように父親に言われたと聞き、仕方なくこの場に留まっている。

 先ほどからミモザが楽しそうにお喋りをしているが、上の空で返答をしていた。

「ねえ、レティ! 私の話、聞いてくれてる?」

「えっ? ああ、ごめんごめん……」

「もぉー! 全然反省してないよ!」

「うっ……、ごめんなさい」

 スカーレットは、自分よりも十歳以上年下の少女に頭を下げ、丁寧に謝罪した。

 反省した様子に、少女の溜飲が下がる。そして少し彼女の方に身体を寄せると、その耳元でこっそり囁いた。

「ねえ、レティってカメリアが好きなの?」

「…………はっ? なっ、なっ、何言ってんの! 好きとかそういう話は、ミモザにはまだ早いっ‼」

「えー……、恋愛に年齢や種族は関係ないって、いつもお父さんが言ってるよ?」

「……何教えてんの、エルフィン……」

 少女の言葉に、スカーレットは呆れたように呟いた。そして疲れたように額に手を当てると、ワクワクと返答を待っているミモザの方を向いた。

「……好き……かどうかは分からないけど、死んだら嫌だって、寂しくて辛いって思った」

 返答が理解できなかったのか、不思議そうな表情が少女から返って来る。
 一つため息をつくと、肘をテーブルに立て、ぼんやりと二階の宿屋に続く階段に視線を向けた。

「あたし、今まで色んなパーティーで冒険に出て、たくさんの仲間が死ぬのを見て来たわ。でも……、死んでも悲しいって余り思わなかったの。でもね、カメリアが死ぬかもしれないって思った時、凄く怖かったの」

「怖かった? 何で?」

「何でかな……。いつも口喧嘩している相手がいなくなるのが、凄く嫌だったから……かな?」

 今まで、カメリアとは色んな言い合いをした。
 しかし彼がいなくなると思った瞬間、今までカメリアと交わした会話が脳内を駆け巡った。

 その時感じたのは、今までの口喧嘩が、スカーレットにとっても決して不快ではなかったということ。
 むしろ、言いたい事を言いあえて楽しいとすら感じていたこと。

 カメリアがスカーレットとの会話を楽しんでいたように、彼女もまた彼と話すことが楽しかったのだ。

 そんな事を思いながら、今ベッドで休んでいると思われるカメリアに想いを馳せた。
 感傷に浸っている彼女の横で、ミモザが不思議そうに目を丸くしている。

「……良く分かんないけど、それってやっぱりレティはカメリアが好きってことじゃないの?」

「……なんだろね、ほんと」

 スカーレットは、言葉を濁した。
 彼女が返答から逃げた事に、ミモザは再びぷうっと頬を丸く膨らませると、

「大人って変なの! 好きなら好きって言えばいいのにっ!」

と、不満そうにしている。

(まあ、子どもの世界ならそうなんだろうけど……。大人の世界は複雑なのよ)

 スカーレットはミモザの頬っぺたを突っつくと、その膨らみを潰した。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

可愛らしい人

はるきりょう
恋愛
「でも、ライアン様には、エレナ様がいらっしゃるのでは?」 「ああ、エレナね。よく勘違いされるんだけど、エレナとは婚約者でも何でもないんだ。ただの幼馴染み」 「それにあいつはひとりで生きていけるから」 女性ながらに剣術を学ぶエレナは可愛げがないという理由で、ほとんど婚約者同然の幼馴染から捨てられる。 けれど、 「エレナ嬢」 「なんでしょうか?」 「今日の夜会のパートナーはお決まりですか?」  その言葉でパートナー同伴の夜会に招待されていたことを思い出した。いつものとおりライアンと一緒に行くと思っていたので参加の返事を出していたのだ。 「……いいえ」  当日の欠席は著しく評価を下げる。今後、家庭教師として仕事をしていきたいと考えるのであれば、父親か兄に頼んででも行った方がいいだろう。 「よければ僕と一緒に行きませんか?」

侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています

猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。 しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。 本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。 盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

王子様への置き手紙

あおき華
恋愛
フィオナは王太子ジェラルドの婚約者。王宮で暮らしながら王太子妃教育を受けていた。そんなある日、ジェラルドと侯爵家令嬢のマデリーンがキスをする所を目撃してしまう。ショックを受けたフィオナは自ら修道院に行くことを決意し、護衛騎士のエルマーとともに王宮を逃げ出した。置き手紙を読んだ皇太子が追いかけてくるとは思いもせずに⋯⋯ 小説家になろうにも掲載しています。

【完結】「お前とは結婚できない」と言われたので出奔したら、なぜか追いかけられています

22時完結
恋愛
「すまない、リディア。お前とは結婚できない」 そう告げたのは、長年婚約者だった王太子エドワード殿下。 理由は、「本当に愛する女性ができたから」――つまり、私以外に好きな人ができたということ。 (まあ、そんな気はしてました) 社交界では目立たない私は、王太子にとってただの「義務」でしかなかったのだろう。 未練もないし、王宮に居続ける理由もない。 だから、婚約破棄されたその日に領地に引きこもるため出奔した。 これからは自由に静かに暮らそう! そう思っていたのに―― 「……なぜ、殿下がここに?」 「お前がいなくなって、ようやく気づいた。リディア、お前が必要だ」 婚約破棄を言い渡した本人が、なぜか私を追いかけてきた!? さらに、冷酷な王国宰相や腹黒な公爵まで現れて、次々に私を手に入れようとしてくる。 「お前は王妃になるべき女性だ。逃がすわけがない」 「いいや、俺の妻になるべきだろう?」 「……私、ただ田舎で静かに暮らしたいだけなんですけど!!」

短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜

美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?

事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~

水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」 第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。 彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。 だが、彼女は知っていた。 その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。 追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。 「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」 「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」 戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。 効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。

処理中です...