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「隊長、解毒方法なのですが……」
「解毒、出来るのか?」
「はい。しかし方法が……」
期待のこもった視線を向けられ、レフは言葉を濁した。しかし命がかかっている事態なのだ。言い淀んでいる暇はない。
意を決して、口を開いた。
「レーンドラの解毒は……、あなたのナカに直接、男の精を受ける事です」
「おっ、男の……?」
リースは唖然とした表情で、彼の言葉の一部を反芻した。
内容を理解した瞬間、深緑の睫毛が覆う大きな瞳が激しく瞬きを繰り返し、少し薄い唇が、どう言葉を続ければいいのか戸惑うように、開いては閉じるを繰り返している。
かなり、動揺しているようだ。
自分を抱く部下から視線を逸らすと、どもりながら今の意味を確認した。
「そっ……、そ、そ、そ、それは……、誰か男と交わる……ということ……か? そしてナカに……」
「まあ……そういう事になります……ね」
彼女の問いかけを気まずそうに肯定すると、レフは真っ赤になった上司から視線を逸らした。
レーンドラを飲まされた者は、痛みから逃れ生き残るため、自ら性の快楽に堕ち敵味方関係なく身体を求めるようになる。
敵も、情報を引き出すという名目で、リースを存分に楽しもうとしていたのだろう。
(その前に助けることが出来て、本当に良かった……でも……)
ほっとする反面、これからしなければならない提案を思うと、レフの心が暗く沈む。
リースに気づかれないよう息を吐くと、意を決して口を開いた。
「確か隊長には……婚約者がいたはずですよね? その方となら……」
最後は蚊の鳴くような声になり、全てを言えずに途切れてしまった。婚約者という単語に反応したレフの心が、それ以上言葉を続ける事を許さなかったからだ。
そうなるのも仕方なかった。
レフは、リースに密かな想いを寄せていたからだ。
副長として常にそばにあったレフは、リースと多くの時間を過ごした。
自信に溢れながらも時折弱さを見せ、しかし諦めずに常に前へ進む姿。
彼女への憧れが、恋慕のそれに変わるのに時間はかからなかった。
しかしリースに婚約者がいると風の噂で知ってから、この気持ちを決して悟られまいと抑えて来た。
彼女は今でこそ分隊の隊長だが、元は貴族の娘。
婚約者がいても当たり前じゃないかと、実らぬ恋をした自分の愚かさを嗤った事もあった。
男性の精を必要とするなら、婚約者相手の方がダメージは少ない。
レフが苦しいながらも、彼女を気遣った結果だった。
だが、
(辛い……。隊長が……、見知らぬ誰かに抱かれるなんてっ……!)
心がギュッと締め付けられた。
自分の愛する女性が知らない誰かに激しく突かれ、嬌声をあげながら堕ちる姿を想像すると、嫉妬で気が狂いそうになる。
薬が効きつつも、こうしてまだ理性を保てているのは、彼女の強い意志があってこそだが、命の危機は一刻とせまっている。
婚約者とは言え、自分以外の人間に抱かれて欲しくないという身勝手な嫉妬で、愛する人を失うわけにはいかなかった。
だが、リースは意外な言葉を返した。
「それは……、嘘だ。周りから結婚の催促を避けるため、嘘をついたんだ……」
「え? 嘘?」
「まあ……、私も良い歳だからな」
彼の驚く顔を見てリースは小さく笑ったが、それ以上の理由は言わなかった。
代わりに真剣な表情を浮かべると、レフの腰にささったナイフを手にした。
「とにかくそういう事なら……、どうか私を殺してくれ」
「解毒、出来るのか?」
「はい。しかし方法が……」
期待のこもった視線を向けられ、レフは言葉を濁した。しかし命がかかっている事態なのだ。言い淀んでいる暇はない。
意を決して、口を開いた。
「レーンドラの解毒は……、あなたのナカに直接、男の精を受ける事です」
「おっ、男の……?」
リースは唖然とした表情で、彼の言葉の一部を反芻した。
内容を理解した瞬間、深緑の睫毛が覆う大きな瞳が激しく瞬きを繰り返し、少し薄い唇が、どう言葉を続ければいいのか戸惑うように、開いては閉じるを繰り返している。
かなり、動揺しているようだ。
自分を抱く部下から視線を逸らすと、どもりながら今の意味を確認した。
「そっ……、そ、そ、そ、それは……、誰か男と交わる……ということ……か? そしてナカに……」
「まあ……そういう事になります……ね」
彼女の問いかけを気まずそうに肯定すると、レフは真っ赤になった上司から視線を逸らした。
レーンドラを飲まされた者は、痛みから逃れ生き残るため、自ら性の快楽に堕ち敵味方関係なく身体を求めるようになる。
敵も、情報を引き出すという名目で、リースを存分に楽しもうとしていたのだろう。
(その前に助けることが出来て、本当に良かった……でも……)
ほっとする反面、これからしなければならない提案を思うと、レフの心が暗く沈む。
リースに気づかれないよう息を吐くと、意を決して口を開いた。
「確か隊長には……婚約者がいたはずですよね? その方となら……」
最後は蚊の鳴くような声になり、全てを言えずに途切れてしまった。婚約者という単語に反応したレフの心が、それ以上言葉を続ける事を許さなかったからだ。
そうなるのも仕方なかった。
レフは、リースに密かな想いを寄せていたからだ。
副長として常にそばにあったレフは、リースと多くの時間を過ごした。
自信に溢れながらも時折弱さを見せ、しかし諦めずに常に前へ進む姿。
彼女への憧れが、恋慕のそれに変わるのに時間はかからなかった。
しかしリースに婚約者がいると風の噂で知ってから、この気持ちを決して悟られまいと抑えて来た。
彼女は今でこそ分隊の隊長だが、元は貴族の娘。
婚約者がいても当たり前じゃないかと、実らぬ恋をした自分の愚かさを嗤った事もあった。
男性の精を必要とするなら、婚約者相手の方がダメージは少ない。
レフが苦しいながらも、彼女を気遣った結果だった。
だが、
(辛い……。隊長が……、見知らぬ誰かに抱かれるなんてっ……!)
心がギュッと締め付けられた。
自分の愛する女性が知らない誰かに激しく突かれ、嬌声をあげながら堕ちる姿を想像すると、嫉妬で気が狂いそうになる。
薬が効きつつも、こうしてまだ理性を保てているのは、彼女の強い意志があってこそだが、命の危機は一刻とせまっている。
婚約者とは言え、自分以外の人間に抱かれて欲しくないという身勝手な嫉妬で、愛する人を失うわけにはいかなかった。
だが、リースは意外な言葉を返した。
「それは……、嘘だ。周りから結婚の催促を避けるため、嘘をついたんだ……」
「え? 嘘?」
「まあ……、私も良い歳だからな」
彼の驚く顔を見てリースは小さく笑ったが、それ以上の理由は言わなかった。
代わりに真剣な表情を浮かべると、レフの腰にささったナイフを手にした。
「とにかくそういう事なら……、どうか私を殺してくれ」
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