愛を知らない少年たちの番物語。

あゆみん

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27話 side 番

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俺たち冒険者は、ある依頼をこなしていた。

「なんで俺たちが見回りなんてしなくちゃいけねぇんだよ!」

「お祭り行きたかったっすよ~……」

「しょうがねぇだろ。騎士団は遠征中でいないんだ。ほら、愚痴言ってないで歩け」

「待ってくださいよ~アイザックさぁん!」
「アイザックさんの鬼~!!」

年に一度のノウゼンカズラ祭で、街はどこもかしこも浮かれ騒ぎだ。
例年は酔っぱらいを騎士団が回収して回るんだが、その騎士団がいないせいで、今年は俺たちの仕事になったというわけだ。

三人一組で巡回しながら歩いていると、ふいに甘い香りが鼻を掠めた。

……ん?

足が止まる。

俺は、もう一度、静かに息を吸い込む。

果実が熟れきったような、濃く深い甘さ。
その匂いに触れた瞬間、胸の奥が震えた。

胸のざわつきはすぐ腹の底に落ち、そこから熱になって全身をじんわり満たしていく。
その抗いがたいような感覚。

まさか──。

ある可能性が頭をよぎった瞬間、理性より先に足が動いていた。

「ちょっ、アイザックさん!? どこ行くんすか!」
「アイザックさーん!!」

仲間の声が後方で響く。遠い世界の雑音みたいだ。
今は、この匂いだけが俺の世界を占めていた。

数分ほど全力で走り続け──匂いが飽和するほど濃くなった場所で、俺は足を止めた。

街灯の裏。
影になった場所で、小さくうずくまる影がある。

……間違いない。

胸の奥で何かがはっきりと鳴った。
そこで初めて、自分の心臓が異様なほど速く打っていることに気づく。

「……やっと見つけた」

そう、声が勝手に漏れた。
その瞬間、その子が顔を上げる。

目がぶつかった瞬間、全身を鋭い稲妻が貫いた。

今すぐ抱き寄せたい。
押し倒して、自分の匂いを刻みつけたい。
甘やかして、俺がいないと生きられないくらい、徹底的に堕としてしまいたい。

そんな危うい欲が、気づけば理性を押し流していた。
胸の奥の“虎”が、ゆっくりと目を覚ましたみたいだ。

俺はその子へ向かって歩み寄る。
一歩、また一歩。
距離が縮まるほど、体の奥で渇きが強くなる。

そのとき──
その子が怯えたように目を見開き、ふっと輪郭が揺らいで──消えた。

「な、転移魔法…っ⁈」

しばらく呆然と立ち尽くす。
転移なんて、上級の中でも選ばれた者しか扱えない魔法だ。
一体、あの子は何者なのか。

だが、それ以上に胸に焼き付くのは──“逃げられた”という事実。

喉の奥が低く鳴る。
追いかけたい。
出会った瞬間に刻まれた衝動が、血の中でうずく。

「綺麗な子だったな……まさか俺の番が、落ち人だったとは──」

しかも、あの子がしていた耳飾り──あいつらがしてたのと同じものだ。

そこで俺は状況理解し、すぐさま仲間の元へと戻った。
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