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46話 竜の戸惑い

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side歩夢

「歩夢くん」

「…ぐすっ、うぅっ……。」

僕はいまだにその涙を止めることが出来ずにいた。
そんなディランさんは僕をあやすためか頭を撫で続けてくれる。
だけど僕は泣くのに必死すぎて特に気にしていなかった、けどそれもディランさんの次の行為によってとめられた。

「ちゅっ。」

え、今おでこに何か当たって…?
僕は驚くあまり泣くのもやめてディランさんを驚いた目で見つめることしかできなかった。

「やっと泣き止んでくれた。泣き顔も可愛いけど歩夢くんにはやっぱり笑顔が一番似合っているよ。」

ディランさんにそう言われ一瞬で我に返り、今まで泣いていたことが恥ずかしくなった。
今絶対顔赤くなってる気がする。

「歩夢くんちょっとごめんね。」

「え、うわっ。」

ディランさんに一言声をかけられたと思ったら次の瞬間にはディランさんの膝に乗せられて抱っこされてるような形になっていた。

「ディランさん、ぼ、僕そんな子供じゃないしちょっと恥ずかしいです…。」

「少しでいいからこのままで聞いてくれるかな?」

僕は恥ずかしさもあっておりたい気持ちはあったけどなぜかそこで頷いてしまった。

「ありがとう。あのね歩夢君の気持ちはわかった、でも一人で抱えるにはあまりにも危険すぎる。だから私に君を守らせてくれないかな?」

「え、ディランさんが…?」

「そう。私は竜人だからね、そう簡手に手を出してくる者はいない。だから君を守るための力になれるだろう。」

それはこの世界に詳しいディランさんが言うんだから本当のことなんだろうけど、でもなんで僕なんかにそんなにしてくれるの?

「な、なんでディランさんがそこまでしてくれるんですか?ただでさえ面倒なことだし、ディランさんは番を探す旅の途中なのに…。」

「…それは私自身も知りたいよ。」

「え、ごめんなさい、よく聞き取れなくて。なんですか?」

「なんでもないよ。ただ君は私の友であるアイザックの友人でもあり、その友の番である太一くんの弟だ。僕にはこれ以上守らない理由なんてないよ。それに歩夢くんはもう私の友人でもあるからね」

そう言ってディランさんは優しく微笑んだ。
そっか僕たちもう友達なんだ。

ッチク

あれ、なんか今胸の辺りがチクってしたような、なんだろう。
友達として力を貸してくれるって言ってくれたことに喜ぶべきなのにその時の僕はなぜかモヤモヤした気持ちになってしまった。

「それじゃそろそろ帰ろうか。」

「は、はい。」

それから無事家に帰った僕はその後もモヤモヤを忘れらないでいたけど、考えれば考えるほどその答えは謎に包まれた。


side ディラン

いつからだろう、彼から目を離せなくなったのは。
今思えば初めに出会った時から気になっていたのかもしれない。

はじめは警戒されていたけど少しずつ距離を縮めていけば行くほどなぜか彼のことが気になっていった。

だけど気になった理由が実は他にもある。
それは彼が聖霊と話せるんじゃないかと思ったからだ。
私の種族を言い当てるだけでなく、聖霊たちはいつも彼の周りを飛んでいる。
特に上級聖霊といるところを見た時は本当に驚いた。

落ち人で聖霊と話せる者なんて今まで聞いたことがないうえにそれが上級聖霊ともなると国家単位で狙われてもおかしくない。

だけど様子を見た感じ彼はそれを誰にも話さず秘密にしているようだった。
あまりにも危険すぎる。

だから今回彼を遠出に誘いその危険性を伝えることにした。
精霊の森に近づけば近づくほど彼の周りに精霊たちが集まりこれでもかと服や髪を引っ張っていた。

やっぱり聖霊と話せるのは間違いなさそうだ、だけどいつ話し始めたものかな。
いきなり話しても彼を怖がらせるだけかもしれないし、とりあえず今は彼の好きな絵を描いたり聖霊たちと過ごして楽しんでもらおう。
これで少しでもリラックスしてくれるといいんだけど。

それから私は彼が絵を描いている間聖霊と遊んだり横になって森の空気を堪能した。

この森はいつ来ても空気が澄んでいて心地いいな。

そうして数時間過ごしていると絵を描き終えたのか、聖霊たちを連れて歩夢くんがこちらに歩いてくるのが見えた。

本当ならそこで起きるべきだったのかもしれないけど、私はそれをすることができなかった。
精霊をつれて歩く彼があまりにも綺麗だったから。

ドクッ

いや、私には運命の番がいるはずなのに…。
そもそもなぜこれほど彼に構いたくなるのかも正直自分自身わからずにいた。
 
とりあえず本題の話をしないと。

それから彼に声をかけ他愛もない時間を過ごした後早速話を切り出してみることにした。

案の定彼は怯え、彼の兄に心配をさせたくないと、そして今度は自分が兄たちを守る側になるのだと言い泣きだしてしまった。

それほど兄のことを大切にしているんだろう、
だけどそれじゃ誰が君を守るんだ?

そう思った時には彼のおでこにキスをし、自分が守ると言っていた。
今思えば番を待ち望んでいた自分がそんなことをするなんてと自分自身信じられなかったけど、後悔はない。

それにいずれその理由もわかるような気がして妙に心は落ち着いていた。




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