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2人の逃避行
絶望の逃避行4
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「将軍! ゼークと智美は、どこだ? 傷は……足は治るのか?」
ホワイト・ティアラ隊医療用テントの入り口の重い布を乱暴に押し開け、航太は叫んだ。
その声は恐怖と希望が絡み合い、まるで心そのものが叫んでいるかのように聞こえる。
まだ大した治療も受けれていない航太の顔は、汗と血にまみれ蒼白である。
それでもその瞳には、ゼークと智美の笑顔を求める切実な光が宿っていた。
アルパスターの姿を捉えた瞬間、航太は急ぎ足で駆け寄った。
それだけの動きで息は途切れ、心臓の鼓動が耳の中で轟く程である。
航太も治療が必要な身体であったが、それでも2人の安否を確認せずにはいられなかった。
アルパスターは重々しく足を止め、腕に抱えたゼークを見下ろす。
その瞳は、戦場の残酷さを映し出す暗い湖のようだった。
「智美は、ゼークと離れ離れになったらしい。ゼークは戦っていたから見つける事は出来たが、智美は動ける状態じゃないようだ。そして、あの混戦……動かない人間を探す事は難しい。ゼークも治療が必要な程、身体中傷だらけなんでな……こいつだけを、まずは連れて戻ってきた」
その言葉は、航太の胸に冷たく突き刺さる。
航太は、怒りの言葉を叫びそうになった。
しかしアルパスターの腕に抱かれたゼークの姿を見て、その声は航太の口の中で凍りつく。
ゼークはヨトゥン兵の返り血にまみれ、全身が赤黒く染まっていた。
無数の傷がゼークの身体を切り刻み、鎧の半分以上は破損している。
アルパスターの腕を伝い、血液が床に流れた。
傷だらけのゼークの姿は、戦場の亡魂が最後の力を絞りきって燃え尽きてしまったかの様である。
微かに震える胸だけが、ゼークがまだこの世に留まっている証だった。
(こんなになるまで、智美を守るために戦って……こんなんじゃ、責める事なんて出来ねぇ! すまねぇ、ゼーク!)
航太の心は、感謝と悔恨の刃で切り裂かれた。
ゼークの犠牲が、まるで重い鉄の鎖となって航太の胸を締めつけていく。
唇を噛みしめると、血の味が口内に広がり涙が滲む。
自分は、何もできなかった。
智美を救えず、ゼークをこんな目に遭わせた無力な自分が許せない。
航太の横を駆け抜けた絵美は、ボロボロのゼークの姿を見て凍りついた。
「こんなになるまで、智ちんを守ろうとしてくれたんだ。ゼークは、隊長さんなのに……本当は、私達が守らなきゃいけなかったのに……ありがとう、ゼーク……」
絵美の声は震え、普段の陽気な笑顔は跡形もなく消えていた。
瞳には、涙が溢れる……しかし瞳のその奥には、燃えるような決意が宿っている。
絵美はアルパスターに向き直り、拳を握りしめ魂の叫びを叩きつける。
「私に、智美を探しに行かせてください! 絶対に、連れ戻してみせます! 双子の私なら、智美の居場所が分かるかもしれないから!」
その声は、普段の軽やかな絵美からは想像もつかない……命を賭けた覚悟が、そこにはあった。
絵美の瞳は星のように輝き、涙と決意が混じり合って揺れていた。
「そうだな、絵美! これ以上、ゼークに背負わせる訳にはいかねぇ! こんなに傷付いて……それで智美が見つからなかったなんて、言えやしねぇ! 絶対に、見つけるぞ!」
「うん! 智ちんの命も、ゼークの心も……絶対に私が守る! 私はまだ、全然動ける!」
アルパスターは絵美の瞳をじっと見つめ、戦場の重圧と彼女の覚悟を量るように沈黙した。
何分が経過しただろう……アルパスターの声は低く、しかし岩のように揺るぎない響きで答えた。
「分かった! 絵美、怪我は無いな? 少しでも不安があれば、ホワイト・ティアラ隊の隊員に声をかけてから行け! 捜索隊に合流したら、ネイアの指示に従うんだ。絶対に、単独で動くなよ!」
「分かった! ありがとう、将軍! 」
絵美は涙を振り払い、ウィンクで応える。
その笑顔はどこか儚く、まるで戦場に咲く一輪の花のようだった。
絵美は振り返らず、風のようにテントを飛び出した。
その背中には、智美を必ず取り戻すという不屈の意志が燃えていた。
「将軍、オレも行くぜ! ゼークを頼む!」
絵美を追おうと、気合いを入れた航太が一歩を踏み出した。
だが……そんな航太の頭に、アルパスターの声が雷のように轟き渡る。
「お前は、その傷を治せ! そんな重症の身体で、何をする? お前を守る為に、更に人員を割く事になる事を理解しろ!」
その言葉は航太の心を容赦なく貫き、踏み出した一歩で足が止まる。
確かに、自分の身体は戦闘で負った深い傷のせいで鉛のように重い。
フェルグスやスリヴァルディのような猛者も、まだ戦場に留まっているかもしれない。
ヨトゥン兵が、どこに潜んでいるかも分からない。
こんな身体で戦場に出れば、命を散らすだけだ。
それどころか、自分を守る為に傷つく人がいるかもしれない。
自分の判断のミスで、守ってくれた兵が命を散らした時の事を思い出す。
それと同等に、航太の心を支配していたのは恐怖だった。
フェルグスやスリヴァルディとの戦い……その戦いでの血と絶叫が脳裏を焼き、身体が凍りつく。
自分自身の弱さが、まるで冷たい奈落に突き落とされたかの様に航太の心を縛りつけていた。
(こんなオレじゃ……智美を救うどころか、皆の足を引っ張るだけだ! 皆を信じて、待つしかねぇ……頼むぜ、絵美!)
忸怩たる思いが、航太の心を飲み込もうとする。
その時……冷たく震える手が、航太の手に触れた。
航太の身体が、わずかに揺れる。
震える腕を、航太に伸ばしていた。
震える手で、航太に触れていた。
ゼークは微かに目を開け、掠れた声で呟く。
「航太、ごめん……智美を、守れなかった……約束、守れなかった! ごめんね……ごめん……なさい……」
掠れた、その言葉は……
後悔が浮かぶ、その瞳は……
震える、その手は……
航太の心を、粉々に打ち砕いた……
ホワイト・ティアラ隊医療用テントの入り口の重い布を乱暴に押し開け、航太は叫んだ。
その声は恐怖と希望が絡み合い、まるで心そのものが叫んでいるかのように聞こえる。
まだ大した治療も受けれていない航太の顔は、汗と血にまみれ蒼白である。
それでもその瞳には、ゼークと智美の笑顔を求める切実な光が宿っていた。
アルパスターの姿を捉えた瞬間、航太は急ぎ足で駆け寄った。
それだけの動きで息は途切れ、心臓の鼓動が耳の中で轟く程である。
航太も治療が必要な身体であったが、それでも2人の安否を確認せずにはいられなかった。
アルパスターは重々しく足を止め、腕に抱えたゼークを見下ろす。
その瞳は、戦場の残酷さを映し出す暗い湖のようだった。
「智美は、ゼークと離れ離れになったらしい。ゼークは戦っていたから見つける事は出来たが、智美は動ける状態じゃないようだ。そして、あの混戦……動かない人間を探す事は難しい。ゼークも治療が必要な程、身体中傷だらけなんでな……こいつだけを、まずは連れて戻ってきた」
その言葉は、航太の胸に冷たく突き刺さる。
航太は、怒りの言葉を叫びそうになった。
しかしアルパスターの腕に抱かれたゼークの姿を見て、その声は航太の口の中で凍りつく。
ゼークはヨトゥン兵の返り血にまみれ、全身が赤黒く染まっていた。
無数の傷がゼークの身体を切り刻み、鎧の半分以上は破損している。
アルパスターの腕を伝い、血液が床に流れた。
傷だらけのゼークの姿は、戦場の亡魂が最後の力を絞りきって燃え尽きてしまったかの様である。
微かに震える胸だけが、ゼークがまだこの世に留まっている証だった。
(こんなになるまで、智美を守るために戦って……こんなんじゃ、責める事なんて出来ねぇ! すまねぇ、ゼーク!)
航太の心は、感謝と悔恨の刃で切り裂かれた。
ゼークの犠牲が、まるで重い鉄の鎖となって航太の胸を締めつけていく。
唇を噛みしめると、血の味が口内に広がり涙が滲む。
自分は、何もできなかった。
智美を救えず、ゼークをこんな目に遭わせた無力な自分が許せない。
航太の横を駆け抜けた絵美は、ボロボロのゼークの姿を見て凍りついた。
「こんなになるまで、智ちんを守ろうとしてくれたんだ。ゼークは、隊長さんなのに……本当は、私達が守らなきゃいけなかったのに……ありがとう、ゼーク……」
絵美の声は震え、普段の陽気な笑顔は跡形もなく消えていた。
瞳には、涙が溢れる……しかし瞳のその奥には、燃えるような決意が宿っている。
絵美はアルパスターに向き直り、拳を握りしめ魂の叫びを叩きつける。
「私に、智美を探しに行かせてください! 絶対に、連れ戻してみせます! 双子の私なら、智美の居場所が分かるかもしれないから!」
その声は、普段の軽やかな絵美からは想像もつかない……命を賭けた覚悟が、そこにはあった。
絵美の瞳は星のように輝き、涙と決意が混じり合って揺れていた。
「そうだな、絵美! これ以上、ゼークに背負わせる訳にはいかねぇ! こんなに傷付いて……それで智美が見つからなかったなんて、言えやしねぇ! 絶対に、見つけるぞ!」
「うん! 智ちんの命も、ゼークの心も……絶対に私が守る! 私はまだ、全然動ける!」
アルパスターは絵美の瞳をじっと見つめ、戦場の重圧と彼女の覚悟を量るように沈黙した。
何分が経過しただろう……アルパスターの声は低く、しかし岩のように揺るぎない響きで答えた。
「分かった! 絵美、怪我は無いな? 少しでも不安があれば、ホワイト・ティアラ隊の隊員に声をかけてから行け! 捜索隊に合流したら、ネイアの指示に従うんだ。絶対に、単独で動くなよ!」
「分かった! ありがとう、将軍! 」
絵美は涙を振り払い、ウィンクで応える。
その笑顔はどこか儚く、まるで戦場に咲く一輪の花のようだった。
絵美は振り返らず、風のようにテントを飛び出した。
その背中には、智美を必ず取り戻すという不屈の意志が燃えていた。
「将軍、オレも行くぜ! ゼークを頼む!」
絵美を追おうと、気合いを入れた航太が一歩を踏み出した。
だが……そんな航太の頭に、アルパスターの声が雷のように轟き渡る。
「お前は、その傷を治せ! そんな重症の身体で、何をする? お前を守る為に、更に人員を割く事になる事を理解しろ!」
その言葉は航太の心を容赦なく貫き、踏み出した一歩で足が止まる。
確かに、自分の身体は戦闘で負った深い傷のせいで鉛のように重い。
フェルグスやスリヴァルディのような猛者も、まだ戦場に留まっているかもしれない。
ヨトゥン兵が、どこに潜んでいるかも分からない。
こんな身体で戦場に出れば、命を散らすだけだ。
それどころか、自分を守る為に傷つく人がいるかもしれない。
自分の判断のミスで、守ってくれた兵が命を散らした時の事を思い出す。
それと同等に、航太の心を支配していたのは恐怖だった。
フェルグスやスリヴァルディとの戦い……その戦いでの血と絶叫が脳裏を焼き、身体が凍りつく。
自分自身の弱さが、まるで冷たい奈落に突き落とされたかの様に航太の心を縛りつけていた。
(こんなオレじゃ……智美を救うどころか、皆の足を引っ張るだけだ! 皆を信じて、待つしかねぇ……頼むぜ、絵美!)
忸怩たる思いが、航太の心を飲み込もうとする。
その時……冷たく震える手が、航太の手に触れた。
航太の身体が、わずかに揺れる。
震える腕を、航太に伸ばしていた。
震える手で、航太に触れていた。
ゼークは微かに目を開け、掠れた声で呟く。
「航太、ごめん……智美を、守れなかった……約束、守れなかった! ごめんね……ごめん……なさい……」
掠れた、その言葉は……
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