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レンヴァル村の戦い
慰霊碑への誓い
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物語は、少し遡る。
ランカストたちが慰霊碑に祈りを捧げるその少し前、レンヴァル村の静かな丘に1人男が佇んでいた。
軍師、ガヌロン。
ベルヘイム軍の知謀を担う男であり、この地レンヴァル村の生まれでもある。
ガヌロンの手には綺麗な花束が握られ、慰霊碑に刻まれた名ソフィーア・ルンドホルムの下にそっと供えられた。
冷たい石碑の表面に指を滑らせ、ガヌロンは目を閉じた。
その声は低く、震える。
「ソフィー、帰ってきたよ。今回の遠征軍には、お前が愛し……そして、お前を見殺しにした男もいる。忌まわしいことに、同じ軍の味方同士だ。どうしたものかな……」
風がガヌロンの髪を揺らし、丘の草木がざわめく。
ガヌロンの胸には、抑えきれぬ憤りと哀しみが渦巻いていた。
ソフィーア……ガヌロンの愛娘である。
その命を奪った過去の傷は、今も癒えることなく彼を苛んでいた。
その時、背後から足音が響いた。
ゆっくりと、しかし確かな歩調で近づく影。
ガヌロンが振り返ると、そこには黒い鎧に身を包んだ男が立っていた。
ビューレイスト……ロキ軍が誇る、最強の剣士。
その黒髪が風に揺れ、口元には不敵な笑みが浮かんでいる。
「ガヌロン殿、ヨトゥン領レンヴァル村にようこそ……いや、貴殿にとっては故郷でしたかな? お1人で来て頂いた事、感謝いたします」
その声は穏やかだが、どこか底知れぬ威圧感を孕んでいた。
ガヌロンは無言で、懐から1枚の手紙を取り出す。
封蝋には、高位魔法の痕跡が宿る。
ガヌロン以外の者が開けば全く別の文章に化ける、巧妙に仕組まれた手紙だ。
「ビューレイスト殿だな? この手紙……ここまで手の込んだものをよこして、こんな場所に私を呼び出すとはな。私を、どうするつもりだ?」
ガヌロンの目は鋭く、ビューレイストを捉える。
だが……その心の奥では、恐怖が蠢く。
ロキ軍最強の剣士を前に、戦えば自分に勝ち目はない。
それでも、ガヌロンはここへ来た。
手紙に記された内容が、あまりにも魅力的だったからだ。
ビューレイストは、静かに笑みを深める。
「その手紙の内容通りですよ。貴殿と接触する機会を伺っていたが、我が領内で貴殿が不自然に思われずに軍を抜けられるこの地……貴殿の娘が眠るこの地なら、問題なく我々と会えるでしょう。ロキ様の配慮ですよ」
ガヌロンの声が、わずかに震えた。
「手紙には水のMyth Knightを我が軍に戻す代わりに、デュランダルを差し出せと書いてある。だがデュランダルは、ランカスト将軍の神剣。他の者では、持つ事すらできん。そんな取引に、何の意味がある? 意味が分からんな……」
ビューレイストの目は、まるでガヌロンの心を見透かすように細められた。
「本当に、意味が分からないと? ベルヘイム1の知謀を持つと言われる程の人物が、理解できない筈もない。意味が分かっていなければ、私と会う訳がないでしょう。ソフィーア様の無念を晴らす機会を、我々が与えようとしている……それだけの事ですよ」
ガヌロンは、唇を噛む。
ビューレイストの言葉は、ガヌロンの心の奥底に問答無用に突き刺さる。
「なるほどな。しかしソフィーを殺したユトムンダスは、ロキ殿の部下だった筈。ならば、私の恨みを晴らすべき相手はロキ殿という事になる。ランカスト将軍の首でロキ殿を討てるなら、ベルヘイムとしては断らない訳にはいかんがね……」
ビューレイストは、小さく笑う。
その笑い声には、どこか嘲るような響きがあった。
「ご冗談を……ランカスト将軍は、名将でありましょう。しかし、ロキ様と同列に語られる様な人物ではない。我々が提案しているのは、ノアの末裔である水のMyth Knightとベルヘイム12騎士であるランカスト将軍の交換……悪い話ではないでしょう。その過程で、ランカスト将軍を我々が討ちましょうと言っているのです」
ガヌロンの心臓が、激しく脈打つ。
ビューレイストの言葉は、ガヌロンの復讐心を巧みに煽ってくる。
「ロキ様は、全てお見通しですよ。ガヌロン殿が持つ、ランカスト将軍に対する黒の感情。同じ軍にいるのです……復讐しようと思っても、それは不可能。ましてや、相手は英雄と称される男。自らの手で討てば、復讐によって地位も命も失うでしょう。ソフィーア殿が犠牲になったというのに、ユトムンダスを倒した英雄として讃えられるランカストを見続けなければいけない。それは、とても辛いでしょう?」
ガヌロンは、拳を強く握りしめた。
ビューレイストの言葉は、あまりにも的確にガヌロンの心を抉つ。
「ならば水のMyth Knightと交換で、一度だけそちらの指示に従ってやる。それでいいだろ? 私は立場上ランカスト将軍を危険に晒す訳にはいかないが、将軍の行動を止める義理もない。どのようにデュランダルを奪うかは知らんが、我々としては全てを肯定する訳にもいかん」
ビューレイストの笑みが、一層深まる。
「我々の考えは、やはり理解されているようだ。流石は、ベルヘイム1の知謀。我々の目的は、捕われの姫とミステルテインを手に入れることだけ。その為には、バロールと人間の軍の勢力は均等ぐらいが都合がいい……」
ビューレイストは1歩近づき、ガヌロンの肩に手を置いた。
その手は軽いようでいて、まるでガヌロンの心を縛る鎖のように重くのしかかる。
「貴殿に、迷惑はかけませんよ。改めてベルヘイム軍に、水のMyth Knightをお返しする伝令を送ります。その時に、また指示を送ります。この件に関しては、我々は同じ目的を持つ者です。そして、対バロールに対してもです」
そう言い残すと、ビューレイストは黒髪を風になびかせ颯爽と去っていく。
ガヌロンは言葉を失い、ただ慰霊碑に供えた花束を見つめた。
花弁が風に揺れる様は、まるでソフィーアの微笑みを映しているようである。
ガヌロンが仕掛けた魔法……この魔法が発動しなければ、ロキの監視は続いてしまう。
だが、ガヌロンの心は決まっていた。
「ソフィー……必ず、お前の恨みを晴らす。ロキもランカストも、共に我々の敵だ。私の命は、今もお前と共にある。我が剣、ミュルグレスよ……私の本心を、隠し続けろ。ソフィー、お前の願いだけは……」
ガヌロンはもう一度、慰霊碑に手を合わせたる。
脳裏に浮かぶのは、ソフィーアの笑顔。
かつての温かな記憶が、ガヌロンの復讐の炎を一層燃え上がらせていた。
ランカストたちが慰霊碑に祈りを捧げるその少し前、レンヴァル村の静かな丘に1人男が佇んでいた。
軍師、ガヌロン。
ベルヘイム軍の知謀を担う男であり、この地レンヴァル村の生まれでもある。
ガヌロンの手には綺麗な花束が握られ、慰霊碑に刻まれた名ソフィーア・ルンドホルムの下にそっと供えられた。
冷たい石碑の表面に指を滑らせ、ガヌロンは目を閉じた。
その声は低く、震える。
「ソフィー、帰ってきたよ。今回の遠征軍には、お前が愛し……そして、お前を見殺しにした男もいる。忌まわしいことに、同じ軍の味方同士だ。どうしたものかな……」
風がガヌロンの髪を揺らし、丘の草木がざわめく。
ガヌロンの胸には、抑えきれぬ憤りと哀しみが渦巻いていた。
ソフィーア……ガヌロンの愛娘である。
その命を奪った過去の傷は、今も癒えることなく彼を苛んでいた。
その時、背後から足音が響いた。
ゆっくりと、しかし確かな歩調で近づく影。
ガヌロンが振り返ると、そこには黒い鎧に身を包んだ男が立っていた。
ビューレイスト……ロキ軍が誇る、最強の剣士。
その黒髪が風に揺れ、口元には不敵な笑みが浮かんでいる。
「ガヌロン殿、ヨトゥン領レンヴァル村にようこそ……いや、貴殿にとっては故郷でしたかな? お1人で来て頂いた事、感謝いたします」
その声は穏やかだが、どこか底知れぬ威圧感を孕んでいた。
ガヌロンは無言で、懐から1枚の手紙を取り出す。
封蝋には、高位魔法の痕跡が宿る。
ガヌロン以外の者が開けば全く別の文章に化ける、巧妙に仕組まれた手紙だ。
「ビューレイスト殿だな? この手紙……ここまで手の込んだものをよこして、こんな場所に私を呼び出すとはな。私を、どうするつもりだ?」
ガヌロンの目は鋭く、ビューレイストを捉える。
だが……その心の奥では、恐怖が蠢く。
ロキ軍最強の剣士を前に、戦えば自分に勝ち目はない。
それでも、ガヌロンはここへ来た。
手紙に記された内容が、あまりにも魅力的だったからだ。
ビューレイストは、静かに笑みを深める。
「その手紙の内容通りですよ。貴殿と接触する機会を伺っていたが、我が領内で貴殿が不自然に思われずに軍を抜けられるこの地……貴殿の娘が眠るこの地なら、問題なく我々と会えるでしょう。ロキ様の配慮ですよ」
ガヌロンの声が、わずかに震えた。
「手紙には水のMyth Knightを我が軍に戻す代わりに、デュランダルを差し出せと書いてある。だがデュランダルは、ランカスト将軍の神剣。他の者では、持つ事すらできん。そんな取引に、何の意味がある? 意味が分からんな……」
ビューレイストの目は、まるでガヌロンの心を見透かすように細められた。
「本当に、意味が分からないと? ベルヘイム1の知謀を持つと言われる程の人物が、理解できない筈もない。意味が分かっていなければ、私と会う訳がないでしょう。ソフィーア様の無念を晴らす機会を、我々が与えようとしている……それだけの事ですよ」
ガヌロンは、唇を噛む。
ビューレイストの言葉は、ガヌロンの心の奥底に問答無用に突き刺さる。
「なるほどな。しかしソフィーを殺したユトムンダスは、ロキ殿の部下だった筈。ならば、私の恨みを晴らすべき相手はロキ殿という事になる。ランカスト将軍の首でロキ殿を討てるなら、ベルヘイムとしては断らない訳にはいかんがね……」
ビューレイストは、小さく笑う。
その笑い声には、どこか嘲るような響きがあった。
「ご冗談を……ランカスト将軍は、名将でありましょう。しかし、ロキ様と同列に語られる様な人物ではない。我々が提案しているのは、ノアの末裔である水のMyth Knightとベルヘイム12騎士であるランカスト将軍の交換……悪い話ではないでしょう。その過程で、ランカスト将軍を我々が討ちましょうと言っているのです」
ガヌロンの心臓が、激しく脈打つ。
ビューレイストの言葉は、ガヌロンの復讐心を巧みに煽ってくる。
「ロキ様は、全てお見通しですよ。ガヌロン殿が持つ、ランカスト将軍に対する黒の感情。同じ軍にいるのです……復讐しようと思っても、それは不可能。ましてや、相手は英雄と称される男。自らの手で討てば、復讐によって地位も命も失うでしょう。ソフィーア殿が犠牲になったというのに、ユトムンダスを倒した英雄として讃えられるランカストを見続けなければいけない。それは、とても辛いでしょう?」
ガヌロンは、拳を強く握りしめた。
ビューレイストの言葉は、あまりにも的確にガヌロンの心を抉つ。
「ならば水のMyth Knightと交換で、一度だけそちらの指示に従ってやる。それでいいだろ? 私は立場上ランカスト将軍を危険に晒す訳にはいかないが、将軍の行動を止める義理もない。どのようにデュランダルを奪うかは知らんが、我々としては全てを肯定する訳にもいかん」
ビューレイストの笑みが、一層深まる。
「我々の考えは、やはり理解されているようだ。流石は、ベルヘイム1の知謀。我々の目的は、捕われの姫とミステルテインを手に入れることだけ。その為には、バロールと人間の軍の勢力は均等ぐらいが都合がいい……」
ビューレイストは1歩近づき、ガヌロンの肩に手を置いた。
その手は軽いようでいて、まるでガヌロンの心を縛る鎖のように重くのしかかる。
「貴殿に、迷惑はかけませんよ。改めてベルヘイム軍に、水のMyth Knightをお返しする伝令を送ります。その時に、また指示を送ります。この件に関しては、我々は同じ目的を持つ者です。そして、対バロールに対してもです」
そう言い残すと、ビューレイストは黒髪を風になびかせ颯爽と去っていく。
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花弁が風に揺れる様は、まるでソフィーアの微笑みを映しているようである。
ガヌロンが仕掛けた魔法……この魔法が発動しなければ、ロキの監視は続いてしまう。
だが、ガヌロンの心は決まっていた。
「ソフィー……必ず、お前の恨みを晴らす。ロキもランカストも、共に我々の敵だ。私の命は、今もお前と共にある。我が剣、ミュルグレスよ……私の本心を、隠し続けろ。ソフィー、お前の願いだけは……」
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