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レンヴァル村の戦い
凰の目
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「アルってば……こんな忙しい時に、呼び出すなんて! 会ったら、絶対に文句を言ってやるんだから!」
ホワイト・ティアラ隊の隊長ネイア・ペンティスは、苛立ちを胸に押し込め幕舎から離れた薄暗い林の中を急ぎ足で進んでいる。
航太たちが、レンヴァル村から戻る直前の時間。
戦士達に休息と安らぎを与える、息を呑むような緊迫した時刻だ。
人目のない場所で、話をしたい……
アルパスターからの突然の呼び出しに、ネイアは仕事の合間を無理やり割いてここへやってきた。
心の奥底では、恋人であるアルパスターと久しぶりに2人きりの時間を過ごせるかもしれない。
そんな淡い期待に揺れていたが、しかし表面上は怒りが支配している。
ネイアの足音は枯れ葉を砕きながら鋭く響き、林の静寂を切り裂く。
その瞬間……背筋を凍らせる悪寒が、ネイアの全身を貫いた。
「何? この圧力! 戦場でも感じた事のない、このプレッシャーは……」
空気が一瞬で凝固し、目に見えない力がネイアの心臓を鷲づかみにする。
まるで巨大な獣がすぐ背後で牙を剥いているかのような、圧倒的な存在感。
冷や汗が額を伝い、ネイアは思わず足を止める。
鋭い視線を、圧力の源……木々の闇の奥へと、突き刺した。
バサバサバサッ!
風もないのに木々が激しく揺れ、枝が折れるような不気味な音が周囲に響く。
葉が狂ったように舞い、まるで嵐がそこだけを襲っているかのようだった。
ネイアの鼓動は耳をつんざくほどに速まり、喉が締め付けられる。
「何なの? 神獣でも……いるの?」
恐怖が、ネイアの心を締め上げた。
だが……好奇心と名も知れぬ衝動がネイアを突き動かし、足は勝手に動き出す。
木々の揺れる中心へ……まるで運命に引き寄せられるように、ネイアの歩みは早まる。
そして……そこに、アルパスターがいた。
「アル! なんで、こんな場所に? この圧力……いったい、何がいるの? 心臓が、砕けそう!」
林の奥……闇に佇むアルパスターの姿に、ネイアは声を震わせる。
ネイアの言葉は、途中で途切れた。
アルパスターが、一瞬でネイアに飛び寄る。
そして温かいが、大きく硬い手でネイアの口を塞ぐ。
「ネイア、少し静かにするんだ。そして、落ち着いて見てくれ。これは、彼の毎日の日課なんだ。心を強く保つ為の……な」
アルパスターの声は低く、まるで刃のように鋭い緊張感を帯びている。
ネイアは息を呑み、視線を木々の中心へと移した。
「えっ!」
叫びそうになる。
その瞬間……ネイアは自分の手で口を押さえ、その声を押し殺す。
目の前の光景が、ネイアの魂を凍りつかせた。
そこにいたのは、よく知っている小柄な男。
その男は幅広の両刃の剣を握りしめ、全身から迸る剣圧が木々を震わせる。
地面を揺らし、空気を切り裂く。
その力は空間そのものを引き裂き、林全体を呻かせるほどだった。
葉が舞い、枝が砕け、まるで自然が彼の力に屈しているかのようである。
だがネイアを戦慄させたのは、その力だけではない。
男の瞳……その瞳は血のように赤く、業火のように燃え盛っていたのだ。
「そんな! あれは、凰の目……なの? なぜ彼が、アーネ様しか使えなかった力を使っているの?」
凰の目……神話の世界に生きる者なら誰もが知る、伝説の赤い瞳。
7国の騎士の1人アーネ・フェリクスが使っていたとされ、神の力すらも押し返すと言われる絶対の力。
数10年も前に、アーネと共に消えたはずの力。
今ネイアの目の前で、その力は希望を宿して輝いている。
「驚いただろう? 俺も初めて彼を見た時、魂が震えた。驚きと、希望。彼がいるなら、バロールの魔眼に立ち向かえる。絶望の戦いが、希望の戦いに変えられる」
アルパスターの声は静かだが、内に秘めた炎のような決意が滲む。
だがネイアの耳に、アルパスターの言葉の殆どが届かなかった。
目の前の男の……その圧倒的な存在感に、心が完全に飲み込まれていく。
普段見せている、優しい笑顔。
傷つけるより、傷を治す姿の方が似合う男。
恐怖と畏怖が混じる嵐が、ネイアの胸を激しく掻き乱す。
「今は、この事を絶対に口外しないでほしい。私とネイア、それにユングヴィ王子だけがこの秘密を知っている。ヨトゥン軍に知られたら、バロールに近づくことすらできなくなるからな。警戒されたら、それで終わりだ」
アルパスターの言葉に、ネイアはようやく意識を取り戻した。
しかし視線はまだ、その小柄な男から離れられない。
赤い瞳の輝きは、ネイアの魂を貫く刃のようだった。
「バロールの魔眼……見るだけで、人間を死に追いやるその力。今回の遠征軍は、ほぼ全員がバロールとの決戦で死ぬ覚悟だった。でも、彼がいるなら……多くの兵が、助かるかもしれない!」
アルパスターの言葉に、ネイアの瞳が微かに希望の光を宿す。
「そう……凰の目を持つ者だけが、バロールの魔眼に対抗できる。彼がバロールの魔眼を抑えてくれれば、兵の犠牲を最小限にできるかもしれない。そして彼の力は、伝説の騎士アーネと同等。いや、それ以上かもしれない」
その言葉に、ネイアの瞳が見開かれた。
心臓が締め付けられるような衝撃が、ネイアを襲う。
あの気弱そうな男が、伝説の騎士を超える力を持つ?
信じがたい事実が、ネイアの理性を粉々に砕いていく。
「ネイア、どうしても伝えたかったんだ。彼のいる部隊の隊長として……そして、私の最愛の人として。彼は人類の希望であり、切り札だ。もしホワイト・ティアラ隊が敵の攻撃に晒されたら、命を懸けてでも彼を守ってほしい。彼の力を、ヨトゥン軍に知られてはいけないんだ」
アルパスターの意志は、鋼のように硬く炎のように熱く感じた。
最愛の人の命を危険に晒しても、守らなくてはいけない存在だと。
ネイアは唇を噛みしめ、深く頷く。
「そうね……分かったわ。バロールと戦うまでは、彼をヨトゥン軍に近づけさせない。バロールに彼の存在が知られたら、全ての希望が失われる。でもアル、彼の強さは本物なの? 私は、命を懸ける覚悟を決めた。だから、確かめておきたいの……希望を託せる力が、彼にあるのかを」
ネイアの声は恐怖と決意が交錯し、震えている。
アルパスターは、ネイアの真剣な眼差しを見つめ静かに頷く。
「だろうな……そう言うと、思っていたよ。だから、こんな人目のない場所に呼んだんだ。彼は、その力をネイアに見せることを許してくれた。信用……されているんだな」
その言葉と同時に、アルパスターは神槍ブリューナクを握りしめ構える。
槍先に宿る光は、雷鳴を孕む嵐そのものだった。
空気が震え、大地が唸る。
「アル? ちょっと……本気で戦うつもり? あなたは、フィアナ騎士団の上位騎士なのよ? いくらなんでも!」
ネイアの叫びが、林の闇を切り裂く。
だがアルパスターの目は燃えるような決意に満ち、揺るぎない。
「私の全力が、彼にどこまで通じるか……ネイア、その目に焼き付けろ! 彼が、命を懸けて守る価値がある存在なのかを!」
その言葉が響き終わるや否や、ブリューナクが咆哮した。
槍先から迸った3本の閃光は雷霆の如く空気を焼き、大地を裂きながら小柄な男へと突き進む。
轟音が林を震わせ、木々が悲鳴を上げ、地面が爆ぜた。
閃光は空間を歪め、まるで世界そのものを引き裂くかのような勢いで小柄な男に迫る!
だが、その瞬間……小柄の男の赤い瞳が、一際強く輝いた。
剣を握る手に力が漲り、彼の周囲に渦巻く剣圧が爆発的に膨れ上がる。
地面が陥没し、剣圧という名の衝撃波がネイアの身体を突き飛ばす勢いで襲いかかった。
ネイアは咄嗟に身を低くし、衝撃に耐える。
そして、目を見開いたまま動けなくなった。
「そんな……」
ネイアの声は、爆風にかき消される。
アルパスターの全力の攻撃と、小柄の男の放つ圧倒的な力が激突した瞬間……林全体が戦場と化し、天地がひっくり返るような衝撃がネイアの心を貫いた。
ホワイト・ティアラ隊の隊長ネイア・ペンティスは、苛立ちを胸に押し込め幕舎から離れた薄暗い林の中を急ぎ足で進んでいる。
航太たちが、レンヴァル村から戻る直前の時間。
戦士達に休息と安らぎを与える、息を呑むような緊迫した時刻だ。
人目のない場所で、話をしたい……
アルパスターからの突然の呼び出しに、ネイアは仕事の合間を無理やり割いてここへやってきた。
心の奥底では、恋人であるアルパスターと久しぶりに2人きりの時間を過ごせるかもしれない。
そんな淡い期待に揺れていたが、しかし表面上は怒りが支配している。
ネイアの足音は枯れ葉を砕きながら鋭く響き、林の静寂を切り裂く。
その瞬間……背筋を凍らせる悪寒が、ネイアの全身を貫いた。
「何? この圧力! 戦場でも感じた事のない、このプレッシャーは……」
空気が一瞬で凝固し、目に見えない力がネイアの心臓を鷲づかみにする。
まるで巨大な獣がすぐ背後で牙を剥いているかのような、圧倒的な存在感。
冷や汗が額を伝い、ネイアは思わず足を止める。
鋭い視線を、圧力の源……木々の闇の奥へと、突き刺した。
バサバサバサッ!
風もないのに木々が激しく揺れ、枝が折れるような不気味な音が周囲に響く。
葉が狂ったように舞い、まるで嵐がそこだけを襲っているかのようだった。
ネイアの鼓動は耳をつんざくほどに速まり、喉が締め付けられる。
「何なの? 神獣でも……いるの?」
恐怖が、ネイアの心を締め上げた。
だが……好奇心と名も知れぬ衝動がネイアを突き動かし、足は勝手に動き出す。
木々の揺れる中心へ……まるで運命に引き寄せられるように、ネイアの歩みは早まる。
そして……そこに、アルパスターがいた。
「アル! なんで、こんな場所に? この圧力……いったい、何がいるの? 心臓が、砕けそう!」
林の奥……闇に佇むアルパスターの姿に、ネイアは声を震わせる。
ネイアの言葉は、途中で途切れた。
アルパスターが、一瞬でネイアに飛び寄る。
そして温かいが、大きく硬い手でネイアの口を塞ぐ。
「ネイア、少し静かにするんだ。そして、落ち着いて見てくれ。これは、彼の毎日の日課なんだ。心を強く保つ為の……な」
アルパスターの声は低く、まるで刃のように鋭い緊張感を帯びている。
ネイアは息を呑み、視線を木々の中心へと移した。
「えっ!」
叫びそうになる。
その瞬間……ネイアは自分の手で口を押さえ、その声を押し殺す。
目の前の光景が、ネイアの魂を凍りつかせた。
そこにいたのは、よく知っている小柄な男。
その男は幅広の両刃の剣を握りしめ、全身から迸る剣圧が木々を震わせる。
地面を揺らし、空気を切り裂く。
その力は空間そのものを引き裂き、林全体を呻かせるほどだった。
葉が舞い、枝が砕け、まるで自然が彼の力に屈しているかのようである。
だがネイアを戦慄させたのは、その力だけではない。
男の瞳……その瞳は血のように赤く、業火のように燃え盛っていたのだ。
「そんな! あれは、凰の目……なの? なぜ彼が、アーネ様しか使えなかった力を使っているの?」
凰の目……神話の世界に生きる者なら誰もが知る、伝説の赤い瞳。
7国の騎士の1人アーネ・フェリクスが使っていたとされ、神の力すらも押し返すと言われる絶対の力。
数10年も前に、アーネと共に消えたはずの力。
今ネイアの目の前で、その力は希望を宿して輝いている。
「驚いただろう? 俺も初めて彼を見た時、魂が震えた。驚きと、希望。彼がいるなら、バロールの魔眼に立ち向かえる。絶望の戦いが、希望の戦いに変えられる」
アルパスターの声は静かだが、内に秘めた炎のような決意が滲む。
だがネイアの耳に、アルパスターの言葉の殆どが届かなかった。
目の前の男の……その圧倒的な存在感に、心が完全に飲み込まれていく。
普段見せている、優しい笑顔。
傷つけるより、傷を治す姿の方が似合う男。
恐怖と畏怖が混じる嵐が、ネイアの胸を激しく掻き乱す。
「今は、この事を絶対に口外しないでほしい。私とネイア、それにユングヴィ王子だけがこの秘密を知っている。ヨトゥン軍に知られたら、バロールに近づくことすらできなくなるからな。警戒されたら、それで終わりだ」
アルパスターの言葉に、ネイアはようやく意識を取り戻した。
しかし視線はまだ、その小柄な男から離れられない。
赤い瞳の輝きは、ネイアの魂を貫く刃のようだった。
「バロールの魔眼……見るだけで、人間を死に追いやるその力。今回の遠征軍は、ほぼ全員がバロールとの決戦で死ぬ覚悟だった。でも、彼がいるなら……多くの兵が、助かるかもしれない!」
アルパスターの言葉に、ネイアの瞳が微かに希望の光を宿す。
「そう……凰の目を持つ者だけが、バロールの魔眼に対抗できる。彼がバロールの魔眼を抑えてくれれば、兵の犠牲を最小限にできるかもしれない。そして彼の力は、伝説の騎士アーネと同等。いや、それ以上かもしれない」
その言葉に、ネイアの瞳が見開かれた。
心臓が締め付けられるような衝撃が、ネイアを襲う。
あの気弱そうな男が、伝説の騎士を超える力を持つ?
信じがたい事実が、ネイアの理性を粉々に砕いていく。
「ネイア、どうしても伝えたかったんだ。彼のいる部隊の隊長として……そして、私の最愛の人として。彼は人類の希望であり、切り札だ。もしホワイト・ティアラ隊が敵の攻撃に晒されたら、命を懸けてでも彼を守ってほしい。彼の力を、ヨトゥン軍に知られてはいけないんだ」
アルパスターの意志は、鋼のように硬く炎のように熱く感じた。
最愛の人の命を危険に晒しても、守らなくてはいけない存在だと。
ネイアは唇を噛みしめ、深く頷く。
「そうね……分かったわ。バロールと戦うまでは、彼をヨトゥン軍に近づけさせない。バロールに彼の存在が知られたら、全ての希望が失われる。でもアル、彼の強さは本物なの? 私は、命を懸ける覚悟を決めた。だから、確かめておきたいの……希望を託せる力が、彼にあるのかを」
ネイアの声は恐怖と決意が交錯し、震えている。
アルパスターは、ネイアの真剣な眼差しを見つめ静かに頷く。
「だろうな……そう言うと、思っていたよ。だから、こんな人目のない場所に呼んだんだ。彼は、その力をネイアに見せることを許してくれた。信用……されているんだな」
その言葉と同時に、アルパスターは神槍ブリューナクを握りしめ構える。
槍先に宿る光は、雷鳴を孕む嵐そのものだった。
空気が震え、大地が唸る。
「アル? ちょっと……本気で戦うつもり? あなたは、フィアナ騎士団の上位騎士なのよ? いくらなんでも!」
ネイアの叫びが、林の闇を切り裂く。
だがアルパスターの目は燃えるような決意に満ち、揺るぎない。
「私の全力が、彼にどこまで通じるか……ネイア、その目に焼き付けろ! 彼が、命を懸けて守る価値がある存在なのかを!」
その言葉が響き終わるや否や、ブリューナクが咆哮した。
槍先から迸った3本の閃光は雷霆の如く空気を焼き、大地を裂きながら小柄な男へと突き進む。
轟音が林を震わせ、木々が悲鳴を上げ、地面が爆ぜた。
閃光は空間を歪め、まるで世界そのものを引き裂くかのような勢いで小柄な男に迫る!
だが、その瞬間……小柄の男の赤い瞳が、一際強く輝いた。
剣を握る手に力が漲り、彼の周囲に渦巻く剣圧が爆発的に膨れ上がる。
地面が陥没し、剣圧という名の衝撃波がネイアの身体を突き飛ばす勢いで襲いかかった。
ネイアは咄嗟に身を低くし、衝撃に耐える。
そして、目を見開いたまま動けなくなった。
「そんな……」
ネイアの声は、爆風にかき消される。
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