雫物語 Rewrite 〜神剣に導かれて神話の世界に行ったら『先祖の恩人の恩人』の姫を救う戦いに巻き込まれただけじゃないらしい〜

くろぷり

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レンヴァル村の戦い

疾風と閃光3

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「くそっ、やるしか……ないのか!」

 フェルグスは歯を食いしばり、神剣カラドボルグを握り締める。
 黄金の鎧が月光を浴び、まるで燃え盛る聖炎のような輝きを見せた。

 対するフードの男は戦意を秘めた様子もなく、腕をだらりと下げ静かに佇んでいる。

 その姿に、フェルグスの怒りは沸点を超えた。
 血管が脈打ち、心臓の鼓動が耳元で響く。

 母の……そして、レンヴァル村の全ての人の命が賭かっている。
 手を抜いて戦えばスリヴァルディの機嫌を損なって、誰が殺されるか分からない。
 見せ物だと分かっていても、全力で闘わなくてはいけない決闘の筈。

「貴公は……戦う気があるのか? 戦う気が無いなら、邪魔をするな! 母も村人も、私が助ける!」

 フェルグスは咆哮し、神剣カラドボルグを振り上げる。
 声は広場に響き、鳥たちを空に飛び立たせた。

「母を救う為だ! すまんが、ここで死んでくれ!」

 カラドボルグが空間を裂き、雷鳴の如く唸りを上げる。
 神器の刃は距離や間合いを無視し、稲妻のような閃光となってフードの男に襲いかかったた。

 カラドボルグの軌跡は大気を焼き、地面を焦がす。
 触れるもの全てを、粉砕するかの様な威力を持っている。
 神剣カラドボルグが放つ光は、暗闇の中に太陽の欠片が降り注いだかのようだった。

 村の広場に集まったヨトゥン兵士たちですら圧倒的な力に息を呑み、スリヴァルディすら一瞬目を細める。

 誰もが、フード男の身体が両断される瞬間を想像した。

 だが……次の瞬間、ありえない光景が広がる。

 カラドボルグの閃光は、フード男の胸を貫く寸前で突如として軌道を歪めた。

 閃光が……曲がる?

 まるで柔らかな風の吐息に導かれるように、閃光は虚空を切り裂き地面に突き刺さる。

 衝撃波が土を爆砕し、粉塵が渦を巻いて舞い上がった。
 爆音が、広場を震わせる。
 近くの木々が根元から折れ、地面に倒れ込んだ。

 フードの男の前には透明な天使の翼のような風が揺らめき、神剣カラドボルグの力を嘲笑うかのように守護している。

 風は優しく……しかし絶対的な力でカラドボルグの閃光を脇に逸らし、その刃先は無力にも地面を抉った。

 土が飛び散り、フェルグスの足元に降り注ぐ。

「な……んだと?」

 フェルグスは目を見開き、信じられない思いで叫ぶ。
 声は震え、鎧の肩当てが恐怖に軋む。

「カラドボルグの一撃が……逸らされた?」

 カラドボルグは、上級神器。
 神々の祝福を受けた、最強クラスの神剣の筈。

 何であっても貫くその一撃が、フェルグスの意思に反して外れるなどありえない。
 だが今……確かにその刃は、何の抵抗もなく逸らされたのだ。

 フェルグスの心に、冷たい恐怖が這い上がる。
 表現し難い恐怖を感じ、手の中でカラドボルグが震えた。

「何かの……間違いだ! 私の中で、理不尽な決闘を拒否する心があっただけだ!」

 フェルグスは咆哮し、恐怖を振り払う。
 額の汗が目に入り、視界を滲ませていく。

「私の心に、迷いがあった……だが、母を救うためだ! 次は、外さん!」

 再びカラドボルグを構え、フェルグスは全身に力を込める。

 神剣カラドボルグが放つ光は太陽の如く輝き、大気を焼き焦がす勢いで煌めく。

 フェルグスは迷いを捨て、純粋な殺意を刃に宿す。
 鎧が軋み、筋肉が悲鳴を上げる。

 その様子を見ながらフードの男は静かに微笑み、まるで嵐を前にした木の葉のように揺らぐ。

 フードの端が風に煽られ、男の顎のラインが一瞬露わになる。
 その瞳は、静かなる嵐のように深い光を湛えていた。

「貴公は……何者なんだ?」

 フェルグスの叫びが、広場に響く。
 声は風を切り、広場の空気を震わせた。

 次の瞬間、風が咆哮する。
 フードの男が一歩踏み出し、両者の間を切り裂く風の刃が唸りを上げた。

 エアの剣が淡く輝き、まるで大気を切り裂く龍のようにうねる。
 剣の刃は見えず、ただ風の軌跡だけが瞳に映った。

 フェルグスはカラドボルグを振り下ろし、風と神剣が激突。

 衝撃波が大地を割り、木々を薙ぎ倒していく。

 村の広場に、轟音が響き渡った。
 地面が裂け、土塊が宙を舞う。
 眠る村人たちの丘すら揺れ、眠りの魔法が一瞬揺らぐほどの爆音だった。

「威力が、以前戦った時と桁違いだ! 風のMyth Knight……ありえないが、別人としか思えん! それとも、エアの剣が覚醒でもしたのか?」

 フェルグスは、攻撃に転じる。

 カラドボルグの直線的で鋭い攻撃は、しかし……エアの剣の風そのもののように流動する動きで、フェルグスの攻撃を次々と受け流していく。

 カラドボルグの一撃が空を切り地面を砕くたび、フードの男はまるで風に舞う幻のようにフェルグスの間合いを掻い潜った。

 フェルグスはカラドボルグを振り乱し、連続で斬撃を放つ。
 刃の軌跡は光の奔流となり、大気を裂き地面を爆砕する。
 一撃ごとに土煙が上がり、広場は戦場の様相を呈していく。

 それでもフードの男は水面を滑る影のように動き、全ての攻撃を紙一重で回避する。

 隙を突いて放たれる風の刃がフェルグスの鎧を掠め、金属音と共に火花が散った。

「くそっ、なぜ当たらない! 迷いは、捨てた筈だ! いくらエアの剣の能力が上がったとしても、流石に短期間でここまでは……」

 フェルグスは声を発しながら、カラドボルグを振り乱す。
 鎧が軋み、汗と血が混じる。
 額から流れる汗が目を焼き、視界を歪ませた。

 フードの男の動きは、予測不能。
 風の流れのように滑らかで、まるでフェルグスの攻撃を予見しているかのようだった。

 男のフードが風に煽られ、顔が一瞬だけ露わになる。
 その瞳は全てを見透かすように静かで、深い光を湛えていた。

「フェルグスさん……流石に、強いですね。でも、風を貫く事は出来ますか?」

 フードの男の声が、風に乗って届く。
 声は静かだが、まるで風そのものが語っているかのようだった。

 その言葉に、フェルグスの心臓が凍りつく。

 攻撃が……くる!

 フェルグスは、カラドボルグで身を守る動きを見せる。

「いきますよ……」

 フードの男の手の中で、エアの剣が淡く輝いていく。

 次の瞬間……風が咆哮し、嵐となってフェルグスを飲み込んだ。

 無数の風の刃が四方八方から襲いかかり、まるで生き物のごとくフェルグスの鎧を切り裂く。
 黄金の鎧に無数の風の刻印が刻まれ、金属が悲鳴を上げる。

 風の刃は鋭く、しかし優雅に……フェルグスを翻弄し、まるで舞踏のようにその身を切り刻む。
 肩の鎧が裂け鮮血が噴き出し、地面に赤い花を咲かせる。

 フェルグスは、痛みに顔を歪めた。

「ぐっ! 防ぎきれる手数じゃない……だが、軽い攻撃は1つもない。このままでは……」

 負ける?

 膝をついていたフェルグスは、神剣カラドボルグを支えに立ち上がる。
 鎧の隙間から流れ出る血が、土を黒く染めた。

「母は……必ず救う! 騎士としての誇り、それを失う訳にはいかんのだ!」

 カラドボルグが再び閃き、天地を裂く一撃が放たれる。
 光の奔流が、フードの男を飲み込もうと襲いかかった。

 カラドボルグの軌跡は、まるで彗星の尾の様に……大気を焼き尽くし、地面を抉つ。

 その攻撃すらも、当たらない。
 フードの男は風そのものとなり、閃光と化した攻撃をすり抜けフェルグスの懐に滑り込む。

 エアの剣が囁くようにフェルグスの脇を掠め、深い傷を刻んだ。
 鮮血が噴き出し、フェルグスはよろめく。
 鎧の隙間から血が流れ、地面に赤い弧を描いた……
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