雫物語 Rewrite 〜神剣に導かれて神話の世界に行ったら『先祖の恩人の恩人』の姫を救う戦いに巻き込まれただけじゃないらしい〜

くろぷり

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レンヴァル村の戦い

疾風と閃光5

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 激しい稲妻が、フードの男を包み込んだ様に見えた。

 しかし稲妻の嵐を切り裂くように、黒い影が飛び出す。

 激しい風が、吹き付ける……雷の発生よりも一瞬早く、カラドボルグの間合いを抜けフェルグスに斬りかかる。

 後退すれば雷の嵐に焼かれ、進むしかなかったフードの男の判断に迷いはない。

「馬鹿な! なんて奴だ!」

 反撃など、予想もしていなかった。
 フェルグスは、電撃の収まらないカラドボルグで辛うじて剣撃を受け止める。

 フードの男は風に乗り、フェルグスに一撃を与えて離脱した。
 電撃の嵐が追いつかない、正に神速の一撃である。

 そしてフェルグスは、カラドボルグの電撃で自らの身体を焼いていた。

「ぐっ……相打ちすら、許してもらえんのか! だが、まだだ!」

 フェルグスの闘志は、途切れない。

 だが、フードの男は間髪入れずに攻撃を仕掛けてくる。

 エアの剣とカラドボルグが激突し、その瞬間フェルグスの身体が暴風に晒された。

 エアの剣から放たれた風の衝撃が、フェルグスの身体を吹き飛ばす。

 地面を転がりながらも、風を纏い加速するフードの男を狙いカラドボルグを突き出した。

 閃光の如きスピードで伸びるカラドボルグの、不意打ちの攻撃……母を救うため、フェルグスは己の誇りを捨てた。

 しかし、その一撃すらフードの男には通じない。
 カラドボルグはエアの剣に軽々と受け止められ、風の力で流される。

「地の理は頂くぞ! これが、カラドボルグの力だ!」

 伸びたカラドボルグの剣先に向かって、今度は光速で縮んでいく。

 流されたカラドボルグの剣先は、フードの男の僅か頭上。
 まるで瞬間移動したかの様に、フェルグスは空間を支配した。

「今度は逃がさん! 肉を切らせて、骨を断つ……喰らえ!」

 カラドボルグから……フードの男の僅か頭上から、放射状に稲妻が広がる。
 2人の周囲に、電撃を纏った嵐が発生した。

 ガガガガガガッ!

 雷鳴が、戦場を劈く。
 地面が砕け、爆音が耳を聾する。

 フェルグスは、雷に貫かれる覚悟を決めていた。
 だが衝撃は、いつまで経っても訪れない。
 それどころか、爆音すら消えている。

 フェルグスは、周囲を確認する。
 驚く事に風の壁が2人を包み込み、雷の侵入を防いでいた。
 フードの男が作り出した、真空の領域。
 雷鳴すら遮断する、静寂の空間だった。

「なんてことだ! 神剣の力を使った攻撃すら、こうも簡単に……」

 フェルグスは、愕然と呟く。

 カラドボルグを落としそうになった手を、フードの男がそっと支えた。

「雷は、そのままにして下さい。この状態なら、外のヨトゥンに気付かれず話せます」

「どういう……事だ?」

 戦意のない言葉と風の中で響く静かな声に、フェルグスは怪訝な表情を浮かべる、

 雷の壁が、2人の姿と声を隠しているのは確かだ。

 フードの男の声は、不思議と明瞭に届く。

「この風の中は、真空……雷の音も、入ってこない。けど、俺たちの身体は風が守ってくれてます。それよりヨトゥンの気味の悪い男が、一騎打ちの勝者を助けるはずがないと思いませんか? 2人で状況を打開するのは、どうでしょう?」

 突然の提案に、フェルグスは目を瞠る。
 提案そのものか、自らの攻撃を軽々と防ぎこの状況を作り出したフードの男の実力か……どちらに驚いたのか、もはや分からない。

 以前ゼークと共に戦っていた「風のMyth Knight」とは、別人なのは間違いないだろう。
 エアの剣を操れる理由も、不明だ。

 それでも、スリヴァルディよりは信頼できる。
 その静かな声に、フェルグスはそう感じた。

「だが……どうする? スリヴァルディは、不死身だ。悔しいが、奴を倒そうとしても人質が先に殺される……犠牲者を出すならば、その提案は受けられない」

「不死身でも、首を斬れば動くまでに一瞬の硬直があります。それは、先程確認しました。至近距離で斬り続ければ、人質を殺す動きは封じられるはず。あとは、周りのヨトゥン兵をどうにかできれば……どうですか?」

 静かな声に宿る、確かな確信。
 フェルグスは、フードの男となら母の救出も可能だと感じた。

「このまま奴の言いなりでも、人質も我々も殺される可能性が高い……という訳か。貴殿の言う通りだ。母の救出に、力を貸してほしい」

「俺も、この村の人々を……誰1人犠牲にしたくない。戦いながら怪しまれず近づいて、俺があの気味の悪いヨトゥンを……」

「私が、ヨトゥン兵を蹴散らす。信用して……いいんだな?」

 フードの男が、力強く頷く。
 フェルグスは雷を止め、その瞬間カラドボルグを伸ばす。

 ガキィン!

 金属音が、戦場に響き渡る。

(流石だ……不意打ちすら、軽々と防いでしまう。私の自信が、粉々に打ち砕かれるな……)

 瞬間、鎌鼬がフェルグスに迫る。

(油断すれば、スリヴァルディを倒す前に私が倒される。手を抜く訳にはいかん!)

 辛うじて鎌鼬を弾き、フェルグスは距離を取る。
 2人とも希望を見出し、瞳に迷いは消えていた。

 母と村人を救うための戦いは、新たな共闘によって始まる。

 レンヴァル村で、奇跡が起きようとしていた……
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