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深夜の出来事と元カノの存在

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「お疲れさま」

その日の午後、外出先から戻ってきた副社長は有名和菓子店『霜月堂』の袋を手に持っていた。

「お疲れさまです」

「緑ちゃん、これお土産。みんなで食べて」

「いいんですか?ありがとうございます」

「美桜ちゃんも遠慮せずに食べてね。ここのいちご大福絶品だから」

副社長は私にも声をかけてくれた。
この和菓子店は数量限定の栗まんじゅうやいちご大福が有名だ。
なかなか食べる機会がなくて、いつか食べたいなと思っていたんだ。

「ありがとうございます。いただきます」

「美桜ちゃん、ちょっと休憩しておやつタイムにしよう。副社長、飲み物は何がいいですか?」

「濃い抹茶でと言いたいところだけど、ブラックコーヒーでお願い」

「分かりました。美桜ちゃん、給湯室に行こう」

「はい」

緑さんに促され、私は給湯室に向かった。

「この黒のマグカップが副社長のね。で、この白と黄色のストライプが社長のやつ」

緑さんが棚に置いていたマグカップの説明をしてくれるので、脳内メモにしっかりと記憶していく。
他にも社員さんのものであろうコップがいくらか棚にあった。

「まぁ、この二個だけ覚えておけば完璧よ。それ以外のお揃いのコーヒーカップは来客用ね。男性陣は基本、紙コップでオーケー。女子は飲みたくなったら自分でするし、美桜ちゃんも自分用のマグカップを用意しておけばいいよ」

「分かりました」

緑さんは副社長のコーヒーを淹れると、いちご大福の入っている箱を開けた。

「うわ、美味しそう」

思わず声に出してしまった。
箱の中には黒あん、白あん、カスタードクリームあん、チョコあんの四種類のいちご大福が入っていた。

「俺はチョコをもらうね」

給湯室にやってきた副社長はチョコのいちご大福を取り、それを一口で食べた。

「やっぱり美味いな」

「はい、コーヒーです」

「サンキュ」

緑さんからマグカップを受け取ると、それに口をつける。

「美桜ちゃんはどれにする?」

「私は白あんにします」

「じゃあ、私はカスタードにしようっと」

私と緑さんはいちご大福とコーヒーの入ったマグカップを手に自分の席に戻る。
私のマグカップはまだないので、来客用のコーヒーカップを貸してもらった。

「美味しい」

緑さんはいちご大福を頬張り幸せそうな表情になる。
さすがにこれは一口では食べれない。
私もいちご大福にかぶりつくと、白あんの甘さといちごの果汁が口の中に広がった。

おやつにいちご大福を食べ、定時まであと二時間頑張れそうな気がした。
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