再会ロマンス～幼なじみの甘い溺愛～

自分に出来ることと、不穏な影

１

「美桜ちゃん、これお願いできる？」

「はい、いいですよ」

「じゃあ、よろしくね」

営業の水田さんに二枚のメモ用紙を渡された。

水田さんというのは以前、私がお弁当を配達しに来た時にテツと話をしていた男性だ。
彼から渡されたメモ用紙には日付と時間、得意先の名前など他社へ訪問の予定やら来客予定などが無造作に書かれている。
せめて日付順に書いてほしいけど、水田さんにそれが出来ていたら私には頼まないか。

前に、炭酸が飲みたくなって休憩スペースに買いに行ったときに水田さんがテツとスケジュール管理の話をしていたのが聞こえてきた。
なんとなくの流れで、私もその会話に混じっていた。
その時、水田さんはテツに営業でスケジュール管理が苦手とか致命的すぎるでしょ、と言われていた。
水田さんは、手帳に書き込むとごちゃごちゃして見にくいしアプリもうまく使いこなせないみたいだった。

その話を聞いて、軽い気持ちでスケジュール管理表を作ってみようと思った。
私は惣菜店でシフト表を作っていたので、それをアレンジしてエクセルでタイムスケジュール管理表を作成した。
お節介かなと思ったけど、出来たものをプリントアウトして水田さんに渡してみたら、分かりやすいとすごく喜んでくれた。

しかも、水田さんから、『もしよかったら、自分のスケジュールを教えるのでそれを入力したものをプリントアウトして欲しい』と言われた。

この前は何も書いていない管理表のみを渡しただけだった。
私がそこまで介入していいのか分からなかったので返答に困っていたら、水田さんが社長に相談したらしい。
社長は二つ返事でオッケーしてくれて、なんなら『私の分も管理して欲しいぐらいだわ』と言われたと。

そのあと、社長から直々に私にスケジュール管理表のことを依頼された。
『スケジュール管理が苦手な人の為に管理表を作ってもらえたら助かる』と言われ、私でも役に立てることがあるんだと思ったら嬉しかった。

その話は社員全員に伝わり、管理表を欲しい人が私に依頼するという形になった。
一度、管理表を作ればそれに入力するだけなので負担は少ない。
急遽入った予定については、その都度、書き込めるように工夫している。
自分でタイムスケジュールを入力する人にはデータを保存したUSBを渡した。

ちなみに、テツは自分できっちり管理するタイプだった。
しかも、アナログで手帳に書き込んでいた。
手帳を見せてもらったけど、字は綺麗で見やすいし分かりやすかった。

水田さんのスケジュール表を作成に取り掛かった。