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1章
3.目指すは主人公の悪友ポジ
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時は流れ、僕ら双子は十八歳になった。
人形のような愛らしい少年だったリオンも、今では身長が百七十センチを超えて、麗しい美男子に成長した。
ゲーム内のリオンも美しかったけど、リアルで見た時の破壊力はすさまじい。ほどよくカールした銀色の髪に、中性的な整った顔立ち、体つきは細身だが適度に鍛えられていて、男らしさを感じさせた。それでいて儚さと色気を醸し出しているのだから、イケメン魔導士たちが言い寄ってくるのも納得だ。
双子の僕も、この十二年間でかなり成長した。身長はリオンと大差ないし、昔に比べたら筋肉も付いた。童顔なのはコンプレックスだけど、こればっかりは仕方がない。そういうキャラデザなんだと諦めることにした。
十八歳になると、ゲーム本編に突入する時期だ。転生したと気付いたばかりの頃は、どうなることかとハラハラしていたが、現時点では断罪ルートは回避できたように思える。そうなったのは、日々の心がけのおかげだろう。
この十二年間、僕が心掛けていたことは二つ。一つは、闇魔法を悪用しないことだ。
闇魔法は、人や動物を洗脳し、意のままに操る力がある。しかし意図的に発動しなければ害はないことがわかった。断罪エンドを恐れた僕は、自主的に闇魔法の使用を禁じていた。
調べてみたところ、闇属性の魔導士でも、闇魔法しか使えないわけではない。一般的な生活魔法であれば、訓練をすれば使えることが判明した。
現時点では、手を使わずに荷物を運んだり、使用済みの食器を自動洗浄したりといった地味な魔法しか使えないけど、訓練すればもっと色々な魔法を使えるようになるだろう。
ちなみに光属性のリオンは、幼少期から専属の家庭教師をつけて英才教育を受けていた。そのおかげで、生活魔法に加え、擦り傷を治したり、壊れた食器を治したりといった光属性ならではの魔法を使えるようになっていた。我が弟ながら優秀だと思う。
光属性の魔導士は、国内でも貴重な存在だ。鍛えれば、暴走化した魔獣を鎮めたり、病気や大怪我を治癒できたりするそうだ。
魔力研鑽のためにも、リオンを魔法学校に通わせて、高等教育を受けさせることになった。リオンが優秀な魔導士になれば、じり貧だったマクミラン家も発展するだろうというのが親族の考えだ。
リオンが魔法学校に通うなら、双子の兄も通わせるのが道理だが、闇属性の僕を魔法学校に通わせることの是非は親族間でも意見が割れた。むやみに知識をつけて、悪用されたら困るというのが反対派の言い分だ。
激しい議論のすえ、この十二年間魔法を悪用しなかったことが決定打となり、僕の魔法学校入学が認められた。
そこから入学試験をパスするため必死に受験勉強し、どうにか合格を掴み取ったというわけだ。
僕らが入学するのは、フォートリオ王国屈指の魔法学校、グランドワーズ魔法学校。『魔導士の愛欲に溺れて』の舞台だ。十八歳~二十二歳の貴族の男児だけが通える一流の魔法学校で、生徒たちは寮に入ることを義務付けられている。
魔法学校、しかも大好きだったゲームの舞台に入学できるんだ。考えただけでも、ワクワクする。
そして今日は、待ちに待った入学式だ。僕ら双子は三日間馬車に揺られ、グランドワーズ魔法学校に向かっていた。
ソワソワしながら窓の外を眺めていると、正面に座っていたリオンから呆れ顔を向けられる。
「兄さん、少しは落ち着いたらどうなの?」
入学を心待ちにしている僕とは違って、リオンはいたって冷静だ。もともとリオンは落ち着きのある聡明なキャラだったから不自然ではないのだけれど、あまりにドライだから驚いてしまう。
「これから魔法学校に通うんだぞ? リオンは楽しみじゃないの?」
「別に。僕はそうでも……」
「えー、僕なんて領地ではほとんど人と関わらなかったから、同年代の魔導士がいるって考えるだけでワクワクするけどなぁ」
闇属性と鑑定されてから、僕は屋敷の外に出ることを制限されていた。関わりを持てるのは、親族と限られた使用人だけ。そんな生い立ちだったから、魔法学校に行って同年代の男子と関われることも楽しみだった。
「僕としては、兄さんに変な虫が付かないか心配だよ……」
リオンは窓の外を眺めながら、ボソッと呟く。そのブラコンっぷりに、辟易してしまった。
BLゲームの世界に転生したと気付いてから心掛けてきたことの二つ目は、リオンと良好な関係を築くことだ。リオンを憎まなければ、断罪エンドは回避できる。だからこの十二年間、良き兄として弟と接してきた。
そのおかげで弟からは懐かれているんだけど……最近はブラコンっぷりに拍車がかかっているような気がする。
もともとリオンには、僕が悪さをしないように見張る役割があるから行動を共にする機会は多いのだけれど、最近は異常なまでに執着している。
屋敷内を移動する時はひな鳥のようにあとをついてくるし、朝晩は僕の部屋にやってきて髪をブラッシングしてくるし……。新しい使用人がきて、僕に挨拶をしようとした時は、鬼のような形相で威嚇していたっけ。
普通の兄弟は、こんなに距離が近くないと思う。このままブラコンでいるのは、兄として心配だ。そろそろ兄離れをしてもらわないと困る。
そのためのきっかけとなるのが、魔法学校への入学だと思っている。
リオンは、BLゲームの主人公だ。入学した後は、イケメン魔導士たちから言い寄られる。攻略対象と恋に落ちれば、兄の優先順位は必然的に下がるだろう。
入学してからは、弟の恋をサポートするつもりだ。目指すは、主人公の悪友ポジ。前世で得たゲームの知識をフル活用して、攻略対象のハートを射止める有益な情報を提供しよう。BL展開を間近で見られるし、腐男子としてもおいしいポジションだ。
そうと決まれば、まずは情報収集だ。リオンがどんなタイプが好きなのかリサーチしておかなければ。
「リオンはさ、どんな人がタイプなの?」
窓の外を眺めていたリオンは、怪訝そうに眉を顰める。
「……タイプって?」
「どんな人に惹かれるかってこと」
ここでの回答次第で、誰を攻略すべきか見えてくる。
BLゲームを攻略する基本は、ひとりのキャラクターに狙いを定めることだ。全員の好感度を一律に上げても、待っているのはノーマルエンドだ。
残念なことに『魔導士の愛欲に溺れて』には、ハーレムエンドは用意されていない。ハッピーエンドを目指すには、ひとりに狙いを定めて攻略するのが望ましいだろう。
ちなみに僕のイチオシは、騎士見習いのルーカスだ。爽やかで明朗な彼とは、学生らしいピュアな恋愛ができる。友情から恋愛に変化する過程も見どころだ。
クールな男が好みなら、竜使いのクライドがオススメだ。出会ってすぐは素っ気ないけど、恋心を自覚してからはどろ甘に溺愛される。そのギャップが堪らない。
他にも飛び級で入学した天才薬師のフレッドや、気の良い兄貴分の占星術師のロランがいるんだけど……リオンは一体、誰と結ばれんだろう?
「僕が惹かれるのは、艶やかな黒髪に、愛らしい童顔で、腰が細い人かな。あと、世間知らずで危なっかしいけど、明るくて、優しくて、家族思いな人」
やけに具体的だなぁ……。そんなキャラいたっけ?
「まあ、相手が誰であれ、僕はリオンの恋を応援するよ」
にっと笑いながら宣言をする。リオンは小さくため息をついた後に、再び窓の外へ視線を投げた。
「……その言葉、忘れないでね」
人形のような愛らしい少年だったリオンも、今では身長が百七十センチを超えて、麗しい美男子に成長した。
ゲーム内のリオンも美しかったけど、リアルで見た時の破壊力はすさまじい。ほどよくカールした銀色の髪に、中性的な整った顔立ち、体つきは細身だが適度に鍛えられていて、男らしさを感じさせた。それでいて儚さと色気を醸し出しているのだから、イケメン魔導士たちが言い寄ってくるのも納得だ。
双子の僕も、この十二年間でかなり成長した。身長はリオンと大差ないし、昔に比べたら筋肉も付いた。童顔なのはコンプレックスだけど、こればっかりは仕方がない。そういうキャラデザなんだと諦めることにした。
十八歳になると、ゲーム本編に突入する時期だ。転生したと気付いたばかりの頃は、どうなることかとハラハラしていたが、現時点では断罪ルートは回避できたように思える。そうなったのは、日々の心がけのおかげだろう。
この十二年間、僕が心掛けていたことは二つ。一つは、闇魔法を悪用しないことだ。
闇魔法は、人や動物を洗脳し、意のままに操る力がある。しかし意図的に発動しなければ害はないことがわかった。断罪エンドを恐れた僕は、自主的に闇魔法の使用を禁じていた。
調べてみたところ、闇属性の魔導士でも、闇魔法しか使えないわけではない。一般的な生活魔法であれば、訓練をすれば使えることが判明した。
現時点では、手を使わずに荷物を運んだり、使用済みの食器を自動洗浄したりといった地味な魔法しか使えないけど、訓練すればもっと色々な魔法を使えるようになるだろう。
ちなみに光属性のリオンは、幼少期から専属の家庭教師をつけて英才教育を受けていた。そのおかげで、生活魔法に加え、擦り傷を治したり、壊れた食器を治したりといった光属性ならではの魔法を使えるようになっていた。我が弟ながら優秀だと思う。
光属性の魔導士は、国内でも貴重な存在だ。鍛えれば、暴走化した魔獣を鎮めたり、病気や大怪我を治癒できたりするそうだ。
魔力研鑽のためにも、リオンを魔法学校に通わせて、高等教育を受けさせることになった。リオンが優秀な魔導士になれば、じり貧だったマクミラン家も発展するだろうというのが親族の考えだ。
リオンが魔法学校に通うなら、双子の兄も通わせるのが道理だが、闇属性の僕を魔法学校に通わせることの是非は親族間でも意見が割れた。むやみに知識をつけて、悪用されたら困るというのが反対派の言い分だ。
激しい議論のすえ、この十二年間魔法を悪用しなかったことが決定打となり、僕の魔法学校入学が認められた。
そこから入学試験をパスするため必死に受験勉強し、どうにか合格を掴み取ったというわけだ。
僕らが入学するのは、フォートリオ王国屈指の魔法学校、グランドワーズ魔法学校。『魔導士の愛欲に溺れて』の舞台だ。十八歳~二十二歳の貴族の男児だけが通える一流の魔法学校で、生徒たちは寮に入ることを義務付けられている。
魔法学校、しかも大好きだったゲームの舞台に入学できるんだ。考えただけでも、ワクワクする。
そして今日は、待ちに待った入学式だ。僕ら双子は三日間馬車に揺られ、グランドワーズ魔法学校に向かっていた。
ソワソワしながら窓の外を眺めていると、正面に座っていたリオンから呆れ顔を向けられる。
「兄さん、少しは落ち着いたらどうなの?」
入学を心待ちにしている僕とは違って、リオンはいたって冷静だ。もともとリオンは落ち着きのある聡明なキャラだったから不自然ではないのだけれど、あまりにドライだから驚いてしまう。
「これから魔法学校に通うんだぞ? リオンは楽しみじゃないの?」
「別に。僕はそうでも……」
「えー、僕なんて領地ではほとんど人と関わらなかったから、同年代の魔導士がいるって考えるだけでワクワクするけどなぁ」
闇属性と鑑定されてから、僕は屋敷の外に出ることを制限されていた。関わりを持てるのは、親族と限られた使用人だけ。そんな生い立ちだったから、魔法学校に行って同年代の男子と関われることも楽しみだった。
「僕としては、兄さんに変な虫が付かないか心配だよ……」
リオンは窓の外を眺めながら、ボソッと呟く。そのブラコンっぷりに、辟易してしまった。
BLゲームの世界に転生したと気付いてから心掛けてきたことの二つ目は、リオンと良好な関係を築くことだ。リオンを憎まなければ、断罪エンドは回避できる。だからこの十二年間、良き兄として弟と接してきた。
そのおかげで弟からは懐かれているんだけど……最近はブラコンっぷりに拍車がかかっているような気がする。
もともとリオンには、僕が悪さをしないように見張る役割があるから行動を共にする機会は多いのだけれど、最近は異常なまでに執着している。
屋敷内を移動する時はひな鳥のようにあとをついてくるし、朝晩は僕の部屋にやってきて髪をブラッシングしてくるし……。新しい使用人がきて、僕に挨拶をしようとした時は、鬼のような形相で威嚇していたっけ。
普通の兄弟は、こんなに距離が近くないと思う。このままブラコンでいるのは、兄として心配だ。そろそろ兄離れをしてもらわないと困る。
そのためのきっかけとなるのが、魔法学校への入学だと思っている。
リオンは、BLゲームの主人公だ。入学した後は、イケメン魔導士たちから言い寄られる。攻略対象と恋に落ちれば、兄の優先順位は必然的に下がるだろう。
入学してからは、弟の恋をサポートするつもりだ。目指すは、主人公の悪友ポジ。前世で得たゲームの知識をフル活用して、攻略対象のハートを射止める有益な情報を提供しよう。BL展開を間近で見られるし、腐男子としてもおいしいポジションだ。
そうと決まれば、まずは情報収集だ。リオンがどんなタイプが好きなのかリサーチしておかなければ。
「リオンはさ、どんな人がタイプなの?」
窓の外を眺めていたリオンは、怪訝そうに眉を顰める。
「……タイプって?」
「どんな人に惹かれるかってこと」
ここでの回答次第で、誰を攻略すべきか見えてくる。
BLゲームを攻略する基本は、ひとりのキャラクターに狙いを定めることだ。全員の好感度を一律に上げても、待っているのはノーマルエンドだ。
残念なことに『魔導士の愛欲に溺れて』には、ハーレムエンドは用意されていない。ハッピーエンドを目指すには、ひとりに狙いを定めて攻略するのが望ましいだろう。
ちなみに僕のイチオシは、騎士見習いのルーカスだ。爽やかで明朗な彼とは、学生らしいピュアな恋愛ができる。友情から恋愛に変化する過程も見どころだ。
クールな男が好みなら、竜使いのクライドがオススメだ。出会ってすぐは素っ気ないけど、恋心を自覚してからはどろ甘に溺愛される。そのギャップが堪らない。
他にも飛び級で入学した天才薬師のフレッドや、気の良い兄貴分の占星術師のロランがいるんだけど……リオンは一体、誰と結ばれんだろう?
「僕が惹かれるのは、艶やかな黒髪に、愛らしい童顔で、腰が細い人かな。あと、世間知らずで危なっかしいけど、明るくて、優しくて、家族思いな人」
やけに具体的だなぁ……。そんなキャラいたっけ?
「まあ、相手が誰であれ、僕はリオンの恋を応援するよ」
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