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1章
12.兄さん、なんだか悪い匂いがするね
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部屋に戻ると、リオンが血相を変えて扉の前まで飛んできた。
「兄さん! こんな時間まで何してたの?」
案の定、リオンにも心配をかけてしまったようだ。森で突然消えて、一晩部屋に戻らなかったのだから当然か。捜索願を出されていてもおかしくはない。
リオンの心配を和らげるように明るく微笑む。
「森で変な植物にあたったみたい。そのことに気付いた寮長が、綺石の館まで転移させてくれてたんだ」
嘘は言っていない。後ろめたいことは伏せているけど。
「寮長に介抱されていることは、ロラン先輩から報告を受けたけど、まさか一晩も帰ってこないなんて……」
そうか。寮長のもとにいることは、リオンも知っていたのか。あの時は、意識が朦朧としていたから、寮長が誰かと連絡を取っていたことには気づかなかった。
口元を引きつらせながらも笑顔を保っていると、リオンが顔を近づけてスンスンと匂いをかぐ。
「兄さん、なんだか悪い匂いがするね」
「わ、悪い匂い⁉」
リオンから指摘されて、びくっと肩が跳ね上がる。
まさか、匂いでバレたか? 昨日のあれこれが。いやでも、寮長は僕の身体を清めてくれたようだし、怪しまれるような匂いは発していないはず……。
動揺していると、リオンは僕の頬に手を添えた。
「駄目だよ、兄さん。僕の知らない場所で悪い事をしたら」
「悪い事なんて、何も……」
視線を逸らしながら否定したものの、リオンに壁際へ追い詰められる。
「約束したでしょう? 兄さんが悪い事をしないように僕が見張っているって」
リオンの様子がおかしい。単に兄の朝帰りを咎めているようには思えない。もっとドロドロした感情が入り交じっているような……。
「闇魔法の悪用はしていない。それだけは神に誓える!」
壁に押し付けられながらもどうにか口にすると、リオンはすっと目を細めながら僕から離れた。
「そうだよね。兄さんは、首輪で繋がれているもんね。あの忌々しい寮長に」
忌々しい。たしかにその通りなんだけど、リオンがそれを言うか?
リオンとは、生まれてからずっと一緒にいたはずなのに、最近は何を考えてるのか分からない。困惑していると、リオンは諦めたように僕を解放した。
「それより早く着替えな。遅刻するよ」
「ああっ、そうだった!」
僕は、寮長に借りたパジャマを着たままだ。制服に着替えようとパジャマのズボンに手をかけたところで、とんでもない事実に気付いた。
「ぱっ……ぱぱぱぱぱっ……!?」
下ろしかけたズボンを慌てて引き上げる。
なんということだ……。パジャマの肌触りが良すぎて全然気付かなかったけど、僕は下着を履いていない!
「どうしたの? 兄さん」
「なななな、なんでも!」
平静を装いながら、苦笑いを浮かべた。
僕の下着はどこに消えた? 行方を捜していると、昨日のあれこれを思い出した。
そういえば、催淫作用のせいで僕の下着は大変なことになったんだ。とてもじゃないけど、そのまま履き直せる状態ではなかった。
だから、履かせなかったのだろう。ダミアンも、パジャマは貸せても下着までは貸せなかったようだ。当然か。
そして僕の下着は、ダミアンが持っている。折を見て、取り返しに行こう。誰にも知られないように、こっそりと。
* * *
リオンと共に教室に入ると、窓辺の席に座るクライドを見つける。その肩には、目をくりくりさせた幼竜がいた。
「クライド、おはよう! 昨日はルゥを救出できて、良かったな!」
上機嫌で駆け寄ると、クライドはガタンと椅子を引き、警戒したような表情を向けられた。
なんだ? 昨日はちょっと打ち解けたと思ったのに、今日は距離を感じるような……。
疑問に思っていると、クライドは小さくため息をついてから会話に応じた。
「昨日は捜索を手伝ってくれて助かった。見つけた時には足に怪我を負っていたが、リオン・マクミランが光魔法で治療してくれた」
「そっかぁ! それなら良かった」
リオンが幼竜の怪我を治すというイベントも、無事に発動したようだ。これで二人の親密度もアップしたはず。
二人ともちょっとぎこちないようにも見えるけど、きっと照れているだけだろう。
ふふっとほくそ笑みながら、リオンとクライドを交互に眺めていた。
昼休みになると、ロランが僕らの教室にやって来た。
「アレン・マクミランはいるか?」
入口で呼びかけられて、僕は急いで椅子から立ち上がる。
「どうしたんですか? ロラン先輩」
「寮長から預かりものをしてな。これをお前にって」
ロランから紙袋を手渡される。預かりものってなんだろう? 昼休みに持ってきてくれたということは食料か? 気になって開けてみると、とんでもないものが出てきた。
「こ、これは……!」
紙袋から出てきたのは、僕の下着だ。ご丁寧に洗濯されている。
僕が大声で反応してしまったせいで、リオンたちも何事かと近寄ってきた。僕の手に持っているのが下着だと気付くと、みんなの表情が凍り付く。
「寮長が、なぜアレン・マクミランの下着を……」
ロランの一言で、それが寮長からの預かりものだとみんなにもバレてしまった。僕への疑いは、より一層強まる。
「兄さん、まさか……」
「え? お前ら、そういう関係なわけ?」
「お前には、驚かされてばかりだな……」
「わー、ひくわー」
リオン、ルーカス、クライド、フレッドが順々に口を開く。そこで僕の羞恥心が爆発した。
「誤解だってば~!」
そう叫んだ直後、紙袋からひらりとメモ書きが落ちた。
【貴様の魔力のことで話がある。放課後に綺石の館まで来い】
「兄さん! こんな時間まで何してたの?」
案の定、リオンにも心配をかけてしまったようだ。森で突然消えて、一晩部屋に戻らなかったのだから当然か。捜索願を出されていてもおかしくはない。
リオンの心配を和らげるように明るく微笑む。
「森で変な植物にあたったみたい。そのことに気付いた寮長が、綺石の館まで転移させてくれてたんだ」
嘘は言っていない。後ろめたいことは伏せているけど。
「寮長に介抱されていることは、ロラン先輩から報告を受けたけど、まさか一晩も帰ってこないなんて……」
そうか。寮長のもとにいることは、リオンも知っていたのか。あの時は、意識が朦朧としていたから、寮長が誰かと連絡を取っていたことには気づかなかった。
口元を引きつらせながらも笑顔を保っていると、リオンが顔を近づけてスンスンと匂いをかぐ。
「兄さん、なんだか悪い匂いがするね」
「わ、悪い匂い⁉」
リオンから指摘されて、びくっと肩が跳ね上がる。
まさか、匂いでバレたか? 昨日のあれこれが。いやでも、寮長は僕の身体を清めてくれたようだし、怪しまれるような匂いは発していないはず……。
動揺していると、リオンは僕の頬に手を添えた。
「駄目だよ、兄さん。僕の知らない場所で悪い事をしたら」
「悪い事なんて、何も……」
視線を逸らしながら否定したものの、リオンに壁際へ追い詰められる。
「約束したでしょう? 兄さんが悪い事をしないように僕が見張っているって」
リオンの様子がおかしい。単に兄の朝帰りを咎めているようには思えない。もっとドロドロした感情が入り交じっているような……。
「闇魔法の悪用はしていない。それだけは神に誓える!」
壁に押し付けられながらもどうにか口にすると、リオンはすっと目を細めながら僕から離れた。
「そうだよね。兄さんは、首輪で繋がれているもんね。あの忌々しい寮長に」
忌々しい。たしかにその通りなんだけど、リオンがそれを言うか?
リオンとは、生まれてからずっと一緒にいたはずなのに、最近は何を考えてるのか分からない。困惑していると、リオンは諦めたように僕を解放した。
「それより早く着替えな。遅刻するよ」
「ああっ、そうだった!」
僕は、寮長に借りたパジャマを着たままだ。制服に着替えようとパジャマのズボンに手をかけたところで、とんでもない事実に気付いた。
「ぱっ……ぱぱぱぱぱっ……!?」
下ろしかけたズボンを慌てて引き上げる。
なんということだ……。パジャマの肌触りが良すぎて全然気付かなかったけど、僕は下着を履いていない!
「どうしたの? 兄さん」
「なななな、なんでも!」
平静を装いながら、苦笑いを浮かべた。
僕の下着はどこに消えた? 行方を捜していると、昨日のあれこれを思い出した。
そういえば、催淫作用のせいで僕の下着は大変なことになったんだ。とてもじゃないけど、そのまま履き直せる状態ではなかった。
だから、履かせなかったのだろう。ダミアンも、パジャマは貸せても下着までは貸せなかったようだ。当然か。
そして僕の下着は、ダミアンが持っている。折を見て、取り返しに行こう。誰にも知られないように、こっそりと。
* * *
リオンと共に教室に入ると、窓辺の席に座るクライドを見つける。その肩には、目をくりくりさせた幼竜がいた。
「クライド、おはよう! 昨日はルゥを救出できて、良かったな!」
上機嫌で駆け寄ると、クライドはガタンと椅子を引き、警戒したような表情を向けられた。
なんだ? 昨日はちょっと打ち解けたと思ったのに、今日は距離を感じるような……。
疑問に思っていると、クライドは小さくため息をついてから会話に応じた。
「昨日は捜索を手伝ってくれて助かった。見つけた時には足に怪我を負っていたが、リオン・マクミランが光魔法で治療してくれた」
「そっかぁ! それなら良かった」
リオンが幼竜の怪我を治すというイベントも、無事に発動したようだ。これで二人の親密度もアップしたはず。
二人ともちょっとぎこちないようにも見えるけど、きっと照れているだけだろう。
ふふっとほくそ笑みながら、リオンとクライドを交互に眺めていた。
昼休みになると、ロランが僕らの教室にやって来た。
「アレン・マクミランはいるか?」
入口で呼びかけられて、僕は急いで椅子から立ち上がる。
「どうしたんですか? ロラン先輩」
「寮長から預かりものをしてな。これをお前にって」
ロランから紙袋を手渡される。預かりものってなんだろう? 昼休みに持ってきてくれたということは食料か? 気になって開けてみると、とんでもないものが出てきた。
「こ、これは……!」
紙袋から出てきたのは、僕の下着だ。ご丁寧に洗濯されている。
僕が大声で反応してしまったせいで、リオンたちも何事かと近寄ってきた。僕の手に持っているのが下着だと気付くと、みんなの表情が凍り付く。
「寮長が、なぜアレン・マクミランの下着を……」
ロランの一言で、それが寮長からの預かりものだとみんなにもバレてしまった。僕への疑いは、より一層強まる。
「兄さん、まさか……」
「え? お前ら、そういう関係なわけ?」
「お前には、驚かされてばかりだな……」
「わー、ひくわー」
リオン、ルーカス、クライド、フレッドが順々に口を開く。そこで僕の羞恥心が爆発した。
「誤解だってば~!」
そう叫んだ直後、紙袋からひらりとメモ書きが落ちた。
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