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2章
29.魔法競技会②
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闘技場にて行われた開会式が終了すると、すぐに第一競技の剣技が始まる。
ガーネット寮からは、ルーカスをはじめとした剣術に長けている生徒が出場を予定していた。
第一試合は、エメラルド寮とトパーズ寮の対決だ。開始早々、白熱した試合が繰り広げられる。激しく剣がぶつかり合うたびに、見物人は湧きたつような歓声をあげた。
拮抗した試合のすえ、トパーズ寮が勝利を収めた。
そして第二試合は、ガーネット寮とサファイア寮の対決だ。ガーネット寮からは、ルーカスが出場する。
観衆が大いに盛り上がる中、選手たちが入場する。最前列で見ていた僕らも、声を張り上げて応援していた。
「ルーカス、頑張れ! 負けんなよ!」
「期待してるぞ」
「負けたら魔法薬の実験台にしてやるからなー」
そんな僕らの声援に応えるように、ルーカスはにっと歯を見せて拳を突き上げた。
向き合って互いに礼をすると、試合開始を知らせる鐘の音が響く。
最初は間合いを取って様子を窺っていた二人だったが、ルーカスが先に斬り込みにいった。
正面からの攻撃は、あっさりと打ち返される。それはルーカスも計算済みだったようで、すぐさま次の攻撃を仕掛けた。
ルーカスが横から剣を打ち付けようとした時、ふわりと彼の前髪が煽られて額が露わになる。同時に剣の動きが若干鈍くなった。
ルーカスはさっと後ろに飛び跳ねて、間合いを取る。先ほどまでの勢いが失われて、僕は首を傾げてしまった。
一体何があったんだ? 状況が掴めずにいると、隣で見物していたクライドが眉を顰める。
「……あれは風魔法だな。四方を高い壁で覆われた闘技場では、外から風が入ってくることはない」
先ほどルーカスの前髪が揺れていたが、観客席からは風なんて感じなかった。ということは、サファイア寮の選手が風魔法を使ったのか。
フレッドも「うわー……」と引き気味で相手選手を見つめる。
「剣技では魔法を使わないのが暗黙の掟なのに、あの選手は風魔法を使っているね。ルーカスの反応から察するに、不意打ちのようだし。注意深く見ていなければ分からないように仕掛けているのが、余計にいやらしい」
咄嗟に周囲を見渡す。フレッドの言うように、他の見物人は特に不審がることなく、試合の展開に注目していた。魔法を使ったことには気づいていないようだ。
これは不正を訴えるべきか? その場で立ち上がろうとした時、闘技場に立つルーカスがにやりと笑みを浮かべた。
「なるほど。実践形式ってことか。ならこっちも容赦しない!」
大声で宣言すると、ルーカスは勢いよく対戦相手に飛び掛かる。キンッと剣がぶつかり合うと同時に、火花が散った。
サファイア寮の選手は「熱っ」と叫んで後退する。間合いを取ったところで、まじまじと剣のグリップを見つめていた。その隙を逃さず、ルーカスが地面を蹴って詰め寄る。
降りかかってきた剣を、相手選手は瞬時に打ち返す。剣がぶつかり合う度に火花が散り、相手選手は顔をしかめていた。まるで何かに耐えているようだ。
ルーカスの打ちこみが強くて手が痺れているのかと思ったが、フレッドは真相に気付いていた。
「目には目を、歯には歯をってわけか。騎士道はどこにいった?」
その一言で、ルーカスも魔法を使っていることを察した。
確かルーカスの魔力属性は火だ。斬撃と同時に火魔法を流しているから、相手選手が熱に耐えているのだろう。
実践形式って、そういうことか……。
相手選手も風魔法で攻撃を妨害しつつ、激しく剣を振るう。ルーカスからの怒涛の攻撃を打ち返していたが、ついに相手選手が剣を放り投げた。そこで試合が終了する。
「あ、えっと……勝者、ガーネット寮のルーカス・マーティン」
立会人を担っていたトパーズ寮の生徒が戸惑いがちに宣言すると、わっと闘技場に歓声がわく。
互いに礼をしてから、二人は闘技場から退場した。
第二試合は、ガーネット寮の勝利だ。盛り上がる観衆を見る限り、二人がこっそり魔法を使っていたことはバレていないようだ。
だけど、日頃から剣の鍛錬をしている騎士団の目は誤魔化せなかった。
斜め後ろの席で見物していた騎士団の面々は、さまざまな反応を見せている。「剣技で魔法を使うなんて言語道断だ」と眉を顰めているものもいれば、「あいつ、良い根性してるじゃねーか」とゲラゲラ笑っているものもいる。
そういえばルーカスは、ゆくゆくは騎士団に入団することを望んでいるんだっけ。この試合がどう評価されるのかとヒヤヒヤしていると、騎士団の中でも際立って恰幅のいい男が口を開いた。
「実践ではルールなんて存在しない。第一部隊では、どんな手を使っても勝とうとするやつが残る。競技会が終わったら、あの男に第一部隊の稽古を観に来るように伝えておけ」
彼がそう命令すると、周囲にいた騎士たちが「はっ!」と威勢のいい返事をした。
第一部隊は、ルーカスが入隊を希望していた部隊だ。王の護衛をする第二部隊とは異なり、敵軍や魔獣と第一線で闘う部隊として知られている。先ほどの試合を通して、第一部隊への適性を見出されたようだ。
これは後でルーカスに報告しておこう。無意識で緩んでいた頬を慌てて引き締めてから、続く第三試合に注目した。
ガーネット寮からは、ルーカスをはじめとした剣術に長けている生徒が出場を予定していた。
第一試合は、エメラルド寮とトパーズ寮の対決だ。開始早々、白熱した試合が繰り広げられる。激しく剣がぶつかり合うたびに、見物人は湧きたつような歓声をあげた。
拮抗した試合のすえ、トパーズ寮が勝利を収めた。
そして第二試合は、ガーネット寮とサファイア寮の対決だ。ガーネット寮からは、ルーカスが出場する。
観衆が大いに盛り上がる中、選手たちが入場する。最前列で見ていた僕らも、声を張り上げて応援していた。
「ルーカス、頑張れ! 負けんなよ!」
「期待してるぞ」
「負けたら魔法薬の実験台にしてやるからなー」
そんな僕らの声援に応えるように、ルーカスはにっと歯を見せて拳を突き上げた。
向き合って互いに礼をすると、試合開始を知らせる鐘の音が響く。
最初は間合いを取って様子を窺っていた二人だったが、ルーカスが先に斬り込みにいった。
正面からの攻撃は、あっさりと打ち返される。それはルーカスも計算済みだったようで、すぐさま次の攻撃を仕掛けた。
ルーカスが横から剣を打ち付けようとした時、ふわりと彼の前髪が煽られて額が露わになる。同時に剣の動きが若干鈍くなった。
ルーカスはさっと後ろに飛び跳ねて、間合いを取る。先ほどまでの勢いが失われて、僕は首を傾げてしまった。
一体何があったんだ? 状況が掴めずにいると、隣で見物していたクライドが眉を顰める。
「……あれは風魔法だな。四方を高い壁で覆われた闘技場では、外から風が入ってくることはない」
先ほどルーカスの前髪が揺れていたが、観客席からは風なんて感じなかった。ということは、サファイア寮の選手が風魔法を使ったのか。
フレッドも「うわー……」と引き気味で相手選手を見つめる。
「剣技では魔法を使わないのが暗黙の掟なのに、あの選手は風魔法を使っているね。ルーカスの反応から察するに、不意打ちのようだし。注意深く見ていなければ分からないように仕掛けているのが、余計にいやらしい」
咄嗟に周囲を見渡す。フレッドの言うように、他の見物人は特に不審がることなく、試合の展開に注目していた。魔法を使ったことには気づいていないようだ。
これは不正を訴えるべきか? その場で立ち上がろうとした時、闘技場に立つルーカスがにやりと笑みを浮かべた。
「なるほど。実践形式ってことか。ならこっちも容赦しない!」
大声で宣言すると、ルーカスは勢いよく対戦相手に飛び掛かる。キンッと剣がぶつかり合うと同時に、火花が散った。
サファイア寮の選手は「熱っ」と叫んで後退する。間合いを取ったところで、まじまじと剣のグリップを見つめていた。その隙を逃さず、ルーカスが地面を蹴って詰め寄る。
降りかかってきた剣を、相手選手は瞬時に打ち返す。剣がぶつかり合う度に火花が散り、相手選手は顔をしかめていた。まるで何かに耐えているようだ。
ルーカスの打ちこみが強くて手が痺れているのかと思ったが、フレッドは真相に気付いていた。
「目には目を、歯には歯をってわけか。騎士道はどこにいった?」
その一言で、ルーカスも魔法を使っていることを察した。
確かルーカスの魔力属性は火だ。斬撃と同時に火魔法を流しているから、相手選手が熱に耐えているのだろう。
実践形式って、そういうことか……。
相手選手も風魔法で攻撃を妨害しつつ、激しく剣を振るう。ルーカスからの怒涛の攻撃を打ち返していたが、ついに相手選手が剣を放り投げた。そこで試合が終了する。
「あ、えっと……勝者、ガーネット寮のルーカス・マーティン」
立会人を担っていたトパーズ寮の生徒が戸惑いがちに宣言すると、わっと闘技場に歓声がわく。
互いに礼をしてから、二人は闘技場から退場した。
第二試合は、ガーネット寮の勝利だ。盛り上がる観衆を見る限り、二人がこっそり魔法を使っていたことはバレていないようだ。
だけど、日頃から剣の鍛錬をしている騎士団の目は誤魔化せなかった。
斜め後ろの席で見物していた騎士団の面々は、さまざまな反応を見せている。「剣技で魔法を使うなんて言語道断だ」と眉を顰めているものもいれば、「あいつ、良い根性してるじゃねーか」とゲラゲラ笑っているものもいる。
そういえばルーカスは、ゆくゆくは騎士団に入団することを望んでいるんだっけ。この試合がどう評価されるのかとヒヤヒヤしていると、騎士団の中でも際立って恰幅のいい男が口を開いた。
「実践ではルールなんて存在しない。第一部隊では、どんな手を使っても勝とうとするやつが残る。競技会が終わったら、あの男に第一部隊の稽古を観に来るように伝えておけ」
彼がそう命令すると、周囲にいた騎士たちが「はっ!」と威勢のいい返事をした。
第一部隊は、ルーカスが入隊を希望していた部隊だ。王の護衛をする第二部隊とは異なり、敵軍や魔獣と第一線で闘う部隊として知られている。先ほどの試合を通して、第一部隊への適性を見出されたようだ。
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