歪んだ愛はお断りします ~断罪ルートを回避した悪役令息は、鬼畜寮長に囚われる~

南 コウ

文字の大きさ
30 / 58
2章

29.魔法競技会②

しおりを挟む
 闘技場にて行われた開会式が終了すると、すぐに第一競技の剣技が始まる。
 ガーネット寮からは、ルーカスをはじめとした剣術に長けている生徒が出場を予定していた。

 第一試合は、エメラルド寮とトパーズ寮の対決だ。開始早々、白熱した試合が繰り広げられる。激しく剣がぶつかり合うたびに、見物人は湧きたつような歓声をあげた。

 拮抗した試合のすえ、トパーズ寮が勝利を収めた。
 そして第二試合は、ガーネット寮とサファイア寮の対決だ。ガーネット寮からは、ルーカスが出場する。

 観衆が大いに盛り上がる中、選手たちが入場する。最前列で見ていた僕らも、声を張り上げて応援していた。

「ルーカス、頑張れ! 負けんなよ!」
「期待してるぞ」
「負けたら魔法薬の実験台にしてやるからなー」

 そんな僕らの声援に応えるように、ルーカスはにっと歯を見せて拳を突き上げた。

 向き合って互いに礼をすると、試合開始を知らせる鐘の音が響く。
 最初は間合いを取って様子を窺っていた二人だったが、ルーカスが先に斬り込みにいった。

 正面からの攻撃は、あっさりと打ち返される。それはルーカスも計算済みだったようで、すぐさま次の攻撃を仕掛けた。
 ルーカスが横から剣を打ち付けようとした時、ふわりと彼の前髪が煽られて額が露わになる。同時に剣の動きが若干鈍くなった。

 ルーカスはさっと後ろに飛び跳ねて、間合いを取る。先ほどまでの勢いが失われて、僕は首を傾げてしまった。
 一体何があったんだ? 状況が掴めずにいると、隣で見物していたクライドが眉を顰める。

「……あれは風魔法だな。四方を高い壁で覆われた闘技場では、外から風が入ってくることはない」

 先ほどルーカスの前髪が揺れていたが、観客席からは風なんて感じなかった。ということは、サファイア寮の選手が風魔法を使ったのか。
 フレッドも「うわー……」と引き気味で相手選手を見つめる。

「剣技では魔法を使わないのが暗黙の掟なのに、あの選手は風魔法を使っているね。ルーカスの反応から察するに、不意打ちのようだし。注意深く見ていなければ分からないように仕掛けているのが、余計にいやらしい」

 咄嗟に周囲を見渡す。フレッドの言うように、他の見物人は特に不審がることなく、試合の展開に注目していた。魔法を使ったことには気づいていないようだ。

 これは不正を訴えるべきか? その場で立ち上がろうとした時、闘技場に立つルーカスがにやりと笑みを浮かべた。

「なるほど。実践形式ってことか。ならこっちも容赦しない!」

 大声で宣言すると、ルーカスは勢いよく対戦相手に飛び掛かる。キンッと剣がぶつかり合うと同時に、火花が散った。

 サファイア寮の選手は「熱っ」と叫んで後退する。間合いを取ったところで、まじまじと剣のグリップを見つめていた。その隙を逃さず、ルーカスが地面を蹴って詰め寄る。

 降りかかってきた剣を、相手選手は瞬時に打ち返す。剣がぶつかり合う度に火花が散り、相手選手は顔をしかめていた。まるで何かに耐えているようだ。

 ルーカスの打ちこみが強くて手が痺れているのかと思ったが、フレッドは真相に気付いていた。

「目には目を、歯には歯をってわけか。騎士道はどこにいった?」

 その一言で、ルーカスも魔法を使っていることを察した。
 確かルーカスの魔力属性は火だ。斬撃と同時に火魔法を流しているから、相手選手が熱に耐えているのだろう。

 実践形式って、そういうことか……。

 相手選手も風魔法で攻撃を妨害しつつ、激しく剣を振るう。ルーカスからの怒涛の攻撃を打ち返していたが、ついに相手選手が剣を放り投げた。そこで試合が終了する。

「あ、えっと……勝者、ガーネット寮のルーカス・マーティン」

 立会人を担っていたトパーズ寮の生徒が戸惑いがちに宣言すると、わっと闘技場に歓声がわく。
 互いに礼をしてから、二人は闘技場から退場した。

 第二試合は、ガーネット寮の勝利だ。盛り上がる観衆を見る限り、二人がこっそり魔法を使っていたことはバレていないようだ。

 だけど、日頃から剣の鍛錬をしている騎士団の目は誤魔化せなかった。
 斜め後ろの席で見物していた騎士団の面々は、さまざまな反応を見せている。「剣技で魔法を使うなんて言語道断だ」と眉を顰めているものもいれば、「あいつ、良い根性してるじゃねーか」とゲラゲラ笑っているものもいる。

 そういえばルーカスは、ゆくゆくは騎士団に入団することを望んでいるんだっけ。この試合がどう評価されるのかとヒヤヒヤしていると、騎士団の中でも際立って恰幅のいい男が口を開いた。

「実践ではルールなんて存在しない。第一部隊では、どんな手を使っても勝とうとするやつが残る。競技会が終わったら、あの男に第一部隊の稽古を観に来るように伝えておけ」

 彼がそう命令すると、周囲にいた騎士たちが「はっ!」と威勢のいい返事をした。

 第一部隊は、ルーカスが入隊を希望していた部隊だ。王の護衛をする第二部隊とは異なり、敵軍や魔獣と第一線で闘う部隊として知られている。先ほどの試合を通して、第一部隊への適性を見出されたようだ。

 これは後でルーカスに報告しておこう。無意識で緩んでいた頬を慌てて引き締めてから、続く第三試合に注目した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません

カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」 ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。 (これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!) 妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。 スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。 スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。 もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます? 十万文字程度。 3/7 完結しました! ※主人公:マイペース美人受け ※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。 たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

だから、悪役令息の腰巾着! 忌み嫌われた悪役は不器用に僕を囲い込み溺愛する

モト
BL
2024.12.11~2巻がアンダルシュノベルズ様より書籍化されます。皆様のおかげです。誠にありがとうございます。 番外編などは書籍に含まれませんので是非、楽しんで頂けますと嬉しいです。 他の番外編も少しずつアップしたいと思っております。 ◇ストーリー◇ 孤高の悪役令息×BL漫画の総受け主人公に転生した美人 姉が書いたBL漫画の総モテ主人公に転生したフランは、総モテフラグを折る為に、悪役令息サモンに取り入ろうとする。しかしサモンは誰にも心を許さない一匹狼。周囲の人から怖がられ悪鬼と呼ばれる存在。 そんなサモンに寄り添い、フランはサモンの悪役フラグも折ろうと決意する──。 互いに信頼関係を築いて、サモンの腰巾着となったフランだが、ある変化が……。どんどんサモンが過保護になって──!? ・書籍化部分では、web未公開その後の番外編*がございます。 総受け設定のキャラだというだけで、総受けではありません。CPは固定。 自分好みに育っちゃった悪役とのラブコメになります。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

処理中です...