歪んだ愛はお断りします ~断罪ルートを回避した悪役令息は、鬼畜寮長に囚われる~

南 コウ

文字の大きさ
38 / 58
2章

閑話.彼の心の内を読み取れない(ダミアンside)

しおりを挟む
 入浴を済ませて自室に入ると、先に戻っていたアレン・マクミランが俺のベッドですやすやと眠っていた。

 呑気なものだ。つい先ほど、俺に襲われたのを忘れたのか?
 あまりの警戒心のなさに呆れながらも、彼を起こさないようにそっとベッドに腰掛けた。
 無防備な寝顔を眺めながら、先ほどのやりとりを思い出す。

『もしかして寮長は、僕のことが好きなんですか?』

 ――好き。彼に向けている感情が、そんな浮ついたものだとは思わなかった。

 確かに俺は、この男に興味を持っている。離れていても何をしているのか気になってしまうし、危険な目に遭いそうなら他の仕事を放り出してでも助けに行きたくなる。

 彼が他の人間に微笑みかけると無性に腹が立つし、誰かと触れ合っている姿を目の当たりにすると胸が張り裂けそうになる。

 俺は、首輪を付けて彼を支配しているつもりでいたが、実際には俺のほうが彼に支配されていた。

 好きという感情は、これほどまでに儘らないものなのか……。自分の感情はたいていコントロールできると思っていたが、彼に対する感情だけは抑えられない。頭で考えるよりも先に、身体が動いてしまうのだ。

 今日だってそうだ。彼の心を自分だけに向けさせたいと思うあまり、強引に身体の関係に持ち込もうとしていた。今考えれば、最低な行為だ。

 軽蔑されてもおかしくない状況だというのに、この男は俺を憎むことはなかった。それどころか『僕のことが好きなら、普通の恋をしましょう』なんて提案してきた。

 意味が分からない。そもそも彼は、俺に恋心を抱いているわけではない。彼の心の内を読んでも、恋心は微塵も感じ取れなかった。
 まあ、年相応の性的欲求は持ち合わせていて、それを身近にいる俺で発散しようとする兆候は見られたが……。

 アレン・マクミランは、なぜ普通の恋をしようなどと提案したのか? 確かめようにも魔石が割れてしまった今では、彼の心の内は読み取れない。真意が分からないからこそ、余計に気になってしまった。

 そっと手を伸ばし、柔らかな彼の唇に触れる。ふにふにと指先で弄んでいると、庭園で口づけをしたことを思い出した。
 あの時の感触が蘇って、じくりと胸が疼く。

 好きでもない男から一方的に唇を奪われて、彼は嫌悪感を抱かなかったのだろうか? 尻に指を突っ込んだ時は本気で拒絶されたが、口づけをした時はあまり嫌がる素振りは見せなかった。その違いは何なんだ?

 アレン・マクミランの気持ちがまるで分からない。分からないことが、もどかしくて、苦しかった。

 息遣いを感じるほどそばにいると、また唇を奪って身体をまさぐりたい衝動に駆られる。だけど実行に移すわけにはいかない。恐らくそれは、彼のいう〝普通〟には該当しないだろう。

 邪念を振り払うように、俺はアレン・マクミランから離れて、ソファに寝そべる。

 普通の恋とやらができるようになれば、彼の気持ちが少しは分かるようになるのだろうか? もしも彼の心の中に、ほんの一欠けらでも俺に対する恋心が存在するならば……。

 それだけで、救われるような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません

カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」 ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。 (これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!) 妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。 スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。 スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。 もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます? 十万文字程度。 3/7 完結しました! ※主人公:マイペース美人受け ※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。 たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)

氷の婚約者様に破談を申し出たら号泣された

楽矢
BL
目が覚めると、レースの牢獄のような天蓋付きベッドの上だった。 何も覚えていない出来損ない下級貴族ミラ。無能だクズだと冷酷な罵詈雑言を浴びせてくる氷の騎士セティアス。 記憶喪失から始まる、2人のファンタジー貴族ラブコメディ。 ---------- ※注) かっこいい攻はいません。 タイトル通りそのうち号泣しますのでご注意! 貴族描写は緩い目で雰囲気だけお読みいただけると幸いです。 ハッピーエンドです。 激重感情をこじらせた攻→受な関係がお好きな同志の方、どうぞよろしくお願いします! 全16話 完結済み/現在毎日更新予定 他サイトにも同作品を投稿しています。 様子を見ながらそのうち統合するかもしれません。 初めての一次創作でまだよく分かっておらず、何かおかしなことをしでかしていたら申し訳ないです!

愛してやまなかった婚約者は俺に興味がない

了承
BL
卒業パーティー。 皇子は婚約者に破棄を告げ、左腕には新しい恋人を抱いていた。 青年はただ微笑み、一枚の紙を手渡す。 皇子が目を向けた、その瞬間——。 「この瞬間だと思った。」 すべてを愛で終わらせた、沈黙の恋の物語。   IFストーリーあり 誤字あれば報告お願いします!

転生悪役弟、元恋人の冷然騎士に激重執着されています

柚吉猫
BL
生前の記憶は彼にとって悪夢のようだった。 酷い別れ方を引きずったまま転生した先は悪役令嬢がヒロインの乙女ゲームの世界だった。 性悪聖ヒロインの弟に生まれ変わって、過去の呪縛から逃れようと必死に生きてきた。 そんな彼の前に現れた竜王の化身である騎士団長。 離れたいのに、皆に愛されている騎士様は離してくれない。 姿形が違っても、魂でお互いは繋がっている。 冷然竜王騎士団長×過去の呪縛を背負う悪役弟 今度こそ、本当の恋をしよう。

だから、悪役令息の腰巾着! 忌み嫌われた悪役は不器用に僕を囲い込み溺愛する

モト
BL
2024.12.11~2巻がアンダルシュノベルズ様より書籍化されます。皆様のおかげです。誠にありがとうございます。 番外編などは書籍に含まれませんので是非、楽しんで頂けますと嬉しいです。 他の番外編も少しずつアップしたいと思っております。 ◇ストーリー◇ 孤高の悪役令息×BL漫画の総受け主人公に転生した美人 姉が書いたBL漫画の総モテ主人公に転生したフランは、総モテフラグを折る為に、悪役令息サモンに取り入ろうとする。しかしサモンは誰にも心を許さない一匹狼。周囲の人から怖がられ悪鬼と呼ばれる存在。 そんなサモンに寄り添い、フランはサモンの悪役フラグも折ろうと決意する──。 互いに信頼関係を築いて、サモンの腰巾着となったフランだが、ある変化が……。どんどんサモンが過保護になって──!? ・書籍化部分では、web未公開その後の番外編*がございます。 総受け設定のキャラだというだけで、総受けではありません。CPは固定。 自分好みに育っちゃった悪役とのラブコメになります。

【完結】流行りの悪役転生したけど、推しを甘やかして育てすぎた。

時々雨
BL
前世好きだったBL小説に流行りの悪役令息に転生した腐男子。今世、ルアネが周りの人間から好意を向けられて、僕は生で殿下とヒロインちゃん(男)のイチャイチャを見たいだけなのにどうしてこうなった!? ※表紙のイラストはたかだ。様 ※エブリスタ、pixivにも掲載してます ◆この話のスピンオフ、兄達の話「偏屈な幼馴染み第二王子の愛が重すぎる!」もあります。そちらも気になったら覗いてみてください。 ◆2部は色々落ち着いたら…書くと思います

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけです! 名前が  *   ゆるゆ  になりました。 これからもどうぞよろしくお願い致します! 表紙や動画はAIを使用していますが、文章にはAIを一切使用しておりません。

転生先のぽっちゃり王子はただいま謹慎中につき各位ご配慮ねがいます!

梅村香子
BL
バカ王子の名をほしいままにしていたロベルティア王国のぽっちゃり王子テオドール。 あまりのわがままぶりに父王にとうとう激怒され、城の裏手にある館で謹慎していたある日。 突然、全く違う世界の日本人の記憶が自身の中に現れてしまった。 何が何だか分からないけど、どうやらそれは前世の自分の記憶のようで……? 人格も二人分が混ざり合い、不思議な現象に戸惑うも、一つだけ確かなことがある。 僕って最低最悪な王子じゃん!? このままだと、破滅的未来しか残ってないし! 心を入れ替えてダイエットに勉強にと忙しい王子に、何やらきな臭い陰謀の影が見えはじめ――!? これはもう、謹慎前にののしりまくって拒絶した専属護衛騎士に守ってもらうしかないじゃない!? 前世の記憶がよみがえった横暴王子の危機一髪な人生やりなおしストーリー! 騎士×王子の王道カップリングでお送りします。 第9回BL小説大賞の奨励賞をいただきました。 本当にありがとうございます!! ※本作に20歳未満の飲酒シーンが含まれます。作中の世界では飲酒可能年齢であるという設定で描写しております。実際の20歳未満による飲酒を推奨・容認する意図は全くありません。

処理中です...