歪んだ愛はお断りします ~断罪ルートを回避した悪役令息は、鬼畜寮長に囚われる~

南 コウ

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3章

37.ようやく自由を手に入れたぞ

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 カーテンの隙間から差しこんだ朝日の眩しさで、目を覚ます。ゆっくりと瞼を開けると、広々としたベッドで寝ていることに気付いた。

 そう言えば、昨日はダミアンの部屋に連れてこられたんだっけ。この場で起こった出来事を思い出すと、眠気が一気に吹き飛ぶ。

 あれは、夢じゃないんだよな? ダミアンは僕のことが好きで、だからあんなことを……。
 思い出すだけで、ジワジワと顔が熱くなる。かろうじて一線は超えなかったものの、とんでもないことをしてしまった。イチルの実を誤飲した時の比ではない。

 駄目だ。恥ずかしくて死にそうだ……。

 枕に顔を埋めてジタバタと悶えていると、少し離れた場所から布が擦れる音が聞こえる。上半身を起こして確認すると、ソファの上にこんもりと毛布の山ができていた。

 毛布の山は、規則正しく上下している。もしかしてダミアンは、あの中にいるのか?

 そっとベッドから起き上がり、足音を立てないようにそろりそろりと近寄る。案の定、ダミアンはソファで毛布を掛けて眠っていた。
 寝ているにも関わらず、ダミアンは眉間にしわを寄せている。

「ふふっ……夢の中でも怒っているのかな?」

 寝顔を観察しながら笑っていると、ぱちっとダミアンが目を開ける。

「何を笑っている?」
「うわあっ! すいません!」

 急に目を覚ましたものだから、びっくりして尻もちをついてしまう。些細な物音でも目を覚ますなんて、どれだけ警戒心が強いんだよ。

 ダミアンは首元を押さえながら、気だるげに上体を起こす。ソファで朝まで寝たせいで、身体を痛めてしまったのか? ただでさえ、競技会で疲れていたのに……。

「あの、すいません。僕がベッドを占領してしまって」
「まったくだ。人のベッドでぐうすか寝て。大体、貴様が言い出したんだろう? 互いのことを知るために、じっくり会話をしようと」

 ……そうだった。ダミアンと普通の恋をするための第一歩として、対話しようと試みたんだ。
 僕らは一緒にいる時間は多かったけど、お互いのことを話す機会はあまりなかった。だから手始めに夜通しお喋りしようと思っていたんだ。

 これぞ健全なお付き合い……だと思う。結局、ダミアンが部屋に戻ってくる前に寝てしまったから、実行はできなかったんだけど。

「その件に関しては、大変申し訳ございませんでした。起こしてくれても良かったんですよ?」
「疲れていたようだったからな。無理に起こす必要はないと判断したんだ」

 疲れている僕を気遣ってくれたのか。案外優しいじゃないか。
 無意識で頬を緩めていると、ダミアンが訝し気に眉を顰める。

「何を考えているんだ?」
「別に大したことではありません」

 にまにましながら答えると、ダミアンは舌打ちをする。

「……貴様の考えが読めないと不便だな」

 その一言で、重大な事実に気付く。

 昨晩、僕が首輪に付いている魔石を割ってしまったから、魔法の首輪は効力を失ったんだ。もうダミアンに行動を監視されることも、心を読まれることもない。

「ようやく自由を手に入れたぞ……!」

 拳を握りしめながら喜びを噛みしめていると、ダミアンは深々とため息をつく。

「できることなら、もう一度同じ首輪を付けてやりたいところだが」
「え? 嫌ですよ、そんなの!」
「最後まで話を聞け。貴様に付けていた首輪は、俺が開発したものだ。あの首輪に付けていたようなハイグレードの魔石は早々手に入らない」

 ダミアンが開発したものであることは薄々気付いていたけど、同じものが再現できないというのは初耳だ。

「そんなに貴重なものだったんですか?」
「ああ。魔力制限と行動の監視のみであれば、魔石のグレードにこだわる必要はないが、心を読むとなるとそうはいかない。封じ込める魔力が強大になるからハイグレードの魔石でなければ耐久できないんだ」

 そうだったのか。そんな貴重なものを壊してしまって、弁償とかさせられないと良いけど……。

「たまたま知人から譲り受けた魔石を実験的に加工していたのだが……壊れてしまったとなれば仕方がないな」

 思いのほか、あっさりと諦めてくれた。ひとまず、弁償しろと言われずにホッとした。

「ただ、貴様を野放しにするのは、少し不安がある」
「野放しって……。まだ僕を罪人扱いしているんですか? 胸像を破壊したのは僕じゃないって、寮長だって知っているじゃないですか!」
「罪人扱いしているわけではない。首輪を付けていなければ、貴様の魔力も周囲に悟られることになるからだ」

 その言葉で、あの首輪が僕の魔力属性を隠す役割を果たしていたことを思い出す。

 世間では闇属性の魔導士に対する風当たりは強い。それは学園内でも同じことだ。
 僕が闇属性だと知られることで、周囲からの扱いも変わってしまうかもしれない。ダミアンは、そのことを懸念しているのだろう。

「幸い、この三日間は競技会の休息日で授業はない。その間は、誰とも会わないように俺の部屋にいろ。三日で対応策を考える」
「そこまでしてもらうわけには……。それに食事や入浴はどうするんですか? トイレだって」
「食事は俺が用意して部屋に運ぶ。入浴やトイレは転移魔法で連れて行く。それでいいだろう?」

 確かにそれなら生活はできるけど……納得はできない。

「そんなの、監禁みたいじゃないですか……」

 視線を落としながら、小声で抗議する。監禁は駄目だって、昨日伝えたのに……。
 沈黙が続いた後、ダミアンはため息をつく。

「心配なんだ。それくらい察しろ」

 ゆっくりと顔を上げると、ダミアンは憂いを帯びた表情でこちらを見つめていた。そんな顔をされると、強くは拒めなくなってしまった。
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