おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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40.紫々井明の心労

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また熱を出して寝込む楓の氷嚢ひょうのうを取り替えた紫々井は、楓の汗ばんだ顔をタオルで拭いた。

紫々井の隣に立つ雅楽代うたしろ薫が、楓に触れる許可を求めた。

紫々井が許可を出すと、雅楽代は楓にも許可を取り、布団を少し捲って胸元を指二本で押さえた。

結果を目で要求する紫々井に、雅楽代は小さくかぶりを振った。

紫々井の日々の診察と研究のおかげで、楓の体調不良は魔力の不調が原因のものもあることがわかった。

そのため、最近は熱が出ると、こうして雅楽代に魂の状態の確認をさせていた。

「明さん・・・?私また何か悪いの・・・?」

「少し調子が悪いだけやで。大丈夫。二三日で治るよ。」

「また休んじゃう・・・」

「体調悪かったら休むのは当然。それが頻繁でも仕方がない。せやから、今はゆっくり寝て。」

「うん・・・」

楓を寝かせて部屋を出た二人は、リビングに行き、紫々井は診察のために持ってきた物を鞄に片付けた。

「先生も寝不足なんじゃないですか?」

「ええ、少し。」

「先生まで倒れたら楓様を診る医者が居なくなります。先生もゆっくりお休みになられる時間を作られたらどうですか?」

「お気遣いありがとうございます。検討します。そんなことより、お聞きになりたい事があるから、どうでもいい会話をなさったんでしょう?」

白衣を畳みながら紫々井が言うと、雅楽代はふっと笑った。

「酷いなぁ。まるで俺が人に興味が無いみたいじゃないですか。」

「実際そうでしょう。あの雅楽代薫が巫女様以外に興味を持つなんて思えへん。何が聞きたいんですか?」

「巫女があのまま力を解放できずに死ぬ可能性は何パーセントありますか?」

紫々井は動じず、白衣を鞄に仕舞った。

「無視できる確率ではない、としか言えません。」

「50パーセント以下か。」

雅楽代の呟きに、紫々井は怒りが沸いた。雅楽代の思考が考えずとも分かったからだ。

「その博打は、両腕を賭けることになりますよ。」

「怖いなぁ。ちょっと考えただけですよ。」

「守り手が考えるな、そんなこと。」

紫々井は語気を強めた。雅楽代の言動の全てが紫々井の神経を逆撫でした。

「巫女が衰弱してからでは遅いですよ。」

「せやから元気な内に危険な賭けをすべきやと?」

「そういう選択肢もあると思いまして。」

「無い。」

「もし巫女がそのせいで死んだら?」

「危険性の低い方法を考えます。」

紫々井は誰もが楓の力ばかり気に掛けることに辟易へきえきしていた。

雅楽代の様に、楓の負担を考えない提案を何度も受けてはその度に拒否してきたからだ。

「なんでみんな、巫女の事考える前に楓さんの事を考えなあかんなんて当然の事が分からへんのや。」

「当然でしょう。巫女を人と思っていないんですから。そういう人間の過剰の行動に先手を打つ為にも、そういう選択肢があることは頭の片隅に置いていてください。それでは、お先に失礼します。」

雅楽代が去ってから、紫々井は深いため息を吐いた。

楓の専属になってから、心労が絶えなかった。

政府は勿論、ここに居ない守り手達すら、楓自身をかえりみない言動が目立つ。

最初は仕方ないと思っていたが、楓と接する程に苛立つ様になった。顧みない言動を聞く度、楓の笑顔が浮かんだからだ。

その感情と仕事の切り離し方を考えながら、紫々井は楓の家を出た。
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