おじ専が異世界転生したらイケおじ達に囲まれて心臓が持ちません

一条弥生

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86.至高の天才

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「あの、雅楽代さん、理由はわかりますけど、手が痛そうですし、あれはやりすぎだと・・・」
「いいえ。相応の対応です。」

雅楽代さんは無傷の手を見せた。
直径2メートルのクレーターを素手で作って無傷って、相当強い魔法を掛けてるのかな。

誰かが走って来る音が聞こえたかと思ったら、何かを察したのか、雅楽代さんは素早く私を抱き抱えた。

「ひゃあ!!」

一瞬で創成樹から離されて、抱き抱えられたまま見たのは、真剣な表情で創成樹の前に着地した詠川先生だった。
先生は左手に本を持っていて、右手で地面に触れた。

「楓様、申し訳ございません。詠川先生が、私が楓様を退避させる前提で向かって来たものですから、こうするしかありませんでした。」

ゆっくりと下ろしてもらった私は、激しい動悸に襲われて、必死に何も感じていない素振りをした。
こんな美形のおじ様にいきなりお姫様抱っこをされて、トキメキ以外の感情が芽生えようか。

「こんなおじさんにこの様な事をされて不快に思われたでしょう。」
「そんなことないです!」

思わず全力で否定してしまって、しまった、と口を閉じた。

「優しいお言葉をありがとうございます。」

心の底からの本音です、とは言えない。

「あの、詠川先生は何を?」
「隠蔽の魔法と結界を何重にも掛けています。流石世界一の朗読師と名高い方です。たった二冊でここまで厳重で強固な結界を重ねがけするとは。」

朗読師とは、魔法の本を用いて魔法を使う人達の事だ。
その本は普通の本ではなく、本自体が杖のような一種の魔道具になっている特殊な本だ。
読む部分や朗読の仕方、抑揚の付け方までもが魔法の効果を左右する。
だからとても難しくて、朗読師になれるだけでもとても優秀な人らしい。

「詠川先生って、そんなに凄い人だったんですか!?」
「ええ。至高の天才が巫女様の加護を受けているのだから誰も適うけがないと、高名な朗読師も言っていました。」
「見事ですね。この短時間でここまでのことができるなんて。誰も適わないのは当然ですね。」
「ああ。味方で良かったよ。」
「あの、これって一大事ですよね。何でですか?」
「創成樹のことはお聞きになっていないんですね。」
「はい。」
「創成樹は巫女様だけが作ることができる樹です。今使用している自在じざいの種の最上位種、神幻の種からしか生み出せない筈なのですが・・・」
「楓さんは果実を育てようとしただけです。鳥の声に驚いてコントロールが外れてこうなりました。」
「そんな些細な事で自在の種から創成樹が生まれる訳が無いだろ。」
「本当です。」
「あの・・・これってどれぐらい大変な事なんですか?」
「詠川先生が全力を出す程度には。」

詠川先生は次々と術を掛けていた。
しばらくしてそれを終えた詠川先生は、普段のように歩いて来たと思ったら、近くなった途端私に詰め寄った。
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