焔星高校の密室 鏡影の殺人 ～天才少年・神藤葉羽と幼馴染の事件簿～【本格推理×ホラー×どんでん返し】

２２章

核心

銃声は、地下室の重苦しい空気を切り裂き、耳をつんざく轟音となって響き渡った。葉羽は、白鳥にタックルした勢いのまま、床に倒れ込んだ。心臓が激しく鼓動し、全身の血が沸騰するような感覚に襲われる。

何が起きたのか、すぐには理解できなかった。耳鳴りがひどく、視界もぼやけている。ゆっくりと起き上がり、周囲を見渡すと、白鳥優希が壁にもたれかかり、肩を押さえているのが見えた。彼の白いシャツは、鮮血で染まっている。

「白鳥先生！」

葉羽は、駆け寄ろうとしたが、体が思うように動かない。全身の力が抜けていくような感覚に襲われる。

視線を移すと、佐伯久美子が驚愕の表情で白鳥を見つめていた。彼女の手に握られていた銃は、床に落ちていた。

「なぜ…なぜ、あなたは…」

久美子の声が、震えていた。

葉羽は、白鳥に近づき、彼の傷口を確認した。弾は、肩をかすめただけで、命に別状はなさそうだった。

「大丈夫ですか、白鳥先生？」

葉羽は、安堵の息を吐いた。

白鳥は、苦痛に顔を歪めながら、葉羽を見上げた。

「なぜ…君は…私を…助けた…？」

白鳥の声は、弱々しかった。

「あなたは、間違っている. しかし、あなたは、鹿島さんを助けてくれた。だから、私も、あなたを助けた」

葉羽は、静かに答えた。鹿島翔の死は、彼にとって大きな悲しみだったが、彼は、白鳥を憎むことはできなかった。

「鹿島…彼は…私の…友達だった…」

白鳥は、涙を流しながら言った. 彼の言葉は、真実だった. 白鳥は、鹿島を友人として、深く信頼していたのだ。

「私は…復讐に…囚われていた…私は…間違っていた…」

白鳥は、後悔の念に苛まれていた. 彼は、復讐という名の闇に囚われ、大切な友人を失ってしまったのだ.

葉羽は、白鳥の肩を抱き、彼を支えた.

「もう、終わりにしましょう。復讐劇は」

葉羽は、静かに言った。

白鳥は、頷いた. 彼は、復讐という呪縛から、ようやく解放されたのだ.

その時、佐伯久美子が叫んだ.

「まだ終わっていない！私の復讐は、まだ終わっていない！」

久美子は、床に落ちていた銃を拾い上げ、葉羽に向けた.

「久美子、やめろ！」

白鳥は、叫んだ.

しかし、久美子は、聞く耳を持たなかった.

「私は、佐伯家を恨んでいる. そして、私は、佐伯家の血を引く者として、佐伯家に復讐する義務がある！」

久美子の言葉は、狂気に満ちていた.

「それは、違う！復讐は、何も生まない！」

葉羽は、叫んだ。

しかし、久美子は、引き金を引いた.

銃声が響き渡った.

葉羽は、弾丸を避け、久美子にタックルした。

二人は、もつれ合い、床に倒れ込んだ。

葉羽は、久美子から銃を取り上げ、彼女を押さえつけた。

「もう、終わりだ、久美子」

葉羽は、静かに言った.

「なぜ…なぜ、あなたは…私の復讐を…邪魔する…？」

久美子は、涙を流しながら言った.

「復讐は、何も生まない。それは、あなた自身を不幸にするだけだ」

葉羽は、優しく言った。

「私は…私は…どうすれば…」

久美子は、途方に暮れていた.

「過去を忘れて、未来を生きろ. それは、難しいことかもしれない. しかし、君は、必ずできる」

葉羽は、力強く言った.

久美子は、葉羽の言葉に、希望の光を見出した.

彼女は、涙を拭い、葉羽に微笑んだ.

「ありがとう…葉羽くん…」

久美子は、静かに言った.

葉羽は、久美子を解放し、立ち上がった.

彼は、白鳥に近づき、彼の手を握った.

「白鳥先生、これからどうするのですか？」

葉羽は、尋ねた.

「私は、自首する. そして、罪を償う」

白鳥は、静かに答えた. 彼は、自分の犯した罪を、真摯に反省していた。

葉羽は、頷いた. 彼は、白鳥の決断を尊重した.

事件は、解決した。

真犯人は、佐伯久美子だった.

そして、白鳥優希は、共犯者として、逮捕された.

葉羽は、彩由美と共に、洋館を後にした。

空は、明るくなり始めていた.

まるで、彼らの未来を祝福するかのように。

しかし、葉羽の心には、まだ暗い影が残っていた。

鹿島翔の死。それは、決して消えることのない傷跡となっていた。

そして、彼は、ある真実に気づいていた。

この事件の核心は、復讐という名の闇ではなかった.

それは、人間の心の弱さだった.